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COCET通信        第2号 (00.6.26)
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目次
 巻頭言「21世紀に向けてのCOCETの存在意義」(東京高専 村井三千男)
 小特集「高専の英語教育の現状(1)」
  「高専の英語教育の現状」ー学校英語の中でできることー
                       (鶴岡高専 伊関敏之)
  「高専の英語教育」--高等学校と比較して  (木更津高専 中村俊昭)


  「高専の英語教育の現状(その一例)」   (大阪府立高専 増木啓二)
  「高専の英語教育の現状」― 随想形式    (大分高専 穴井孝義)

 私の仕事場
  その1/その2/その3

 高専英語教官紹介
  和歌山高専

 平成12年度 COCET 研究大会のお知らせ


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21世紀に向けてのCOCETの存在意義
        
         東京工業高等専門学校  村井 三千男(COCET会長)


 20世紀から21世紀に移り変わりつつある現在、様々な面で大きな変化が
起きつつある。教育面でもそうである。良い面としては、コンピュータ等教育
機器の充実、教育理論教育方法の発達等が挙げられよう。一方で、少子化問題、
それにも拘らず実施の程遠い小人数教育、それと連動する(特に若い)教師の
採用の減少等不安材料も少なくない。中高一貫教育の拡大化、国立大学の独立
法人化が国立高専にも波及する可能性等、様々な面で高専教育も変化を余儀な
くされつつある。勿論英語教育面も大きな変化がある。新学習指導要領に基づ
き中学校における学習内容が大幅に減り、高専での英語教育にも大きく影響し
そうである。教育機関内での英語のみならず、社会の中での英語の占める位置
も変化してきている。日本に滞在する外国人、海外に滞在する日本人の人数が
急激に増え、英語等の外国語がますます直接的なものになってきた。ニカ国語
放送やインターネット等で英語がさらに身近な実用的道具として使用されるよ
うになってきた。英語が以前にも増して直接生活に入り込んできているわけで
ある。しかし、洋書が入ってきてもすぐに翻訳本がでるという伝統的なことと
同様に、パソコン関係の英語に対しても『こりゃ英和!一発翻訳』『インター
ネットも訳せ!ゴマバイリンガルVer.5 』『ロボワードVer.4.0 研究社新英和
/和英中辞典』なども出ているし、インターネットで多くの英語学習教材も無
料で提供するほどサービスが行き届いてきている。また、実際に外国人に会っ
た場合にも、お互いに携帯電話を用いて「英語→日本語」「日本語→英語」の
音声サービスが受けられ、英語を話せなくても意思疎通が計れるようになって
きている。(英語のことについて述べたが、いずれ他の多くの外国語のサービ
スもされ受けられるようになることであろう。)
英語に対しての我々の学習目標も変わってきている。以前は「英米のスタン
ダードな発音に近くなれるように」というような目標を持ちながら多くの人々
が英語を学習してきた。しかし、現在では「例えばアジアの人々にとって英米
の発音が必ずしも最も聞き取りやすい英語の発音ではない。」「ある国の母語
をnear-native に発音できるようになることは、その国の人々に感心はされる
が必ずしもプラスのイメージを持たれるとは限らない。(多少辿々しい方が好
感が持たれる)」「その国独自の特徴を持つ英語でよい。」などという、それ
こそInternational Language的な地位を得た英語が学習の対象となってきたの
である。(多くの英語弁論大会の評価基準が発言内容中心に変わってきている
ことなどもその一例であろう。)
「英米発音より、その国らしさを」「発音より内容を」「教養英語よりも実
用英語を」「oral一辺倒から(インターネット普及等による)written の重要
性再確認を」「(自動翻訳機普及の可能性によって)英語発話より日本語での
思考充実を」「中学校からの英語教育では遅すぎるので(と思ってか?)早期
英語教育を」「中高大(高専)での英語教育だけでは不十分なので学校外英語
教育を」「中高大(高専)での英語教育+文部省認定の英語検定の単位化を」
などと種々の英語に関する意見が出てきている。このように英語の需要は増大
したが、中高大(高専)における英語教育の重要性が増したとは必ずしも言え
ないような状態になりつつある。私は英語教育の将来についてPESSIMISTIC
に考えているとわけではない。冷静に事実を把握した上で、善処していかなけ
ればならないと考えているのである。
今こそ、高専での英語教育の意義や目標等について、全国レベルで話し合っ
ていかなければならないであろう。それを可能にする手段としてCOCETの
存在価値があると言えよう。高等専門学校の英語教師の学会であるCOCET
は、20数年に亘ってその任務を果たしてきていると言えよう。全国高専の先
生方が毎年学会に参加され、高専の英語教育の諸問題について話合い、英語教
育の改善やさらなる発展を遂げることができる。また英語教育学のみならず英
語学、英米文学の研究を発展させることもできる。それが年1回でなく、昨年
末からの「COCET 通信」、「メーリングリストによる意見交換」で何度でも
全国の高専の先生方と意見交換をすることができるようになった。それらを通
じて、「高専の英語教育の目標」「高専での英語教育関連の試み(成功例や失
敗例)」などの情報交換をしたり「高専教師間の研究協力」などを実施してい
ければよいと思っている。21世紀の高専の英語教育を明るく充実したものに
するために、今後とも全員で協力していきたいと願う次第である。
(COCETに対するご意見ご要望等をメーリングリストでお寄せください。
その他、様々なご意見ご感想等をメーリングリストでお出しください。できる
かぎ多くの先生方にメーリングリストを利用していただきたく思っています。)



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「高専の英語教育の現状」ー学校英語の中でできることー


                鶴岡工業高等専門学校 伊関 敏之


1.はじめに
 筆者は現在の高専に赴任して以来7年目をむかえているが、未だに英語教育
に関しては日々試行錯誤をくり返している。以前の経歴を少し紹介すると、北
海道の高等学校で9年間教えていた。最初の4年が札幌の高校で、次の5年が
帯広の近くにある田舎の高校である。前者は中の上くらいのレベルの学校で、
生徒は比較的よく勉強に取り組んでいたが、後者はかなりの教育困難校で、生
徒を机に座らせるのにも苦労するような状況だった。その後鶴岡高専に来てま
ず最初に感じたことは、全般的に見て学生はおとなしくて、素直だということ
である。札幌の高校をもう少しよくしたような感じである。それでも問題がな
いわけではない。ここでは学校英語の中でできることとして、音声指導と文法
指導(特に文型指導)を中心に話をしていく。


2.高専における音声指導
 高専における音声指導と言っても、別に特別なことをするわけではない。高
専に限らず、英語教育の中で音声指導は中心的な役割を果たしているとは言い
難い。筆者の専門が英語音声学・音韻論ということも、音声指導への思い入れ
として働いていることの一因となっている気がしないでもないが、それ以上に
特に英語の基礎を身に付けるべき段階ではその重要性をもっと強調してもいい
のではないかと思う。つまり、学生に英文を音読させてみればわかるように、
英語の発音の良し悪しがそのままその学生の英語力を測る重要な尺度になるか
らである。(世界的にも超一流の英語学者であっても、英語の発音が悪いとい
う例もないわけではないが。)
 このことは特に英語の基礎段階においては、かなりの程度当てはまることで
あろうと思われる。一口に音声指導と言っても、分節音(Segment)の発音、
音連続(Sound Sequence)、強勢(Stress)、音調(Intonation)などと種
類が豊富なので、これらをバランスよく指導することが望ましい。筆者は学生
に英検の二次試験対策のための指導をしている時に、特にこの音声指導の重要
性を認識させられる。具体的な指導における諸問題については、伊関(2000)
を参照されたい。最近では、英語の音声表記にカタカナを取り入れるという考
え方もあって、一度是非その効果を試してみたいと思っている。今までの常識
で言えば、英語の発音は発音記号を使って教えるべきであって、カタカナを使っ
ては正確な発音が身につかず、かえって害になることが多いというものであろ
う。その考え方を根底から改めた新しい発想の指導法として、注目に値する。
詳しくは、島岡(1994)を参照のこと。


3.高専における文法指導
 ここでは文型指導について焦点を絞って述べていく。中学校で英語を習い始
めて以来、特に文型についての指導が不徹底であると、いつまで経っても英語
が理解できるようにならないのではないかと思う。先生方の中には、この辺の
事柄が出てくると、さっと触れるだけで、あまり深入りはしない方が得策であ
ると考えている人が多いと聞く。しかし、私見では、このようなやり方はまず
いのではないかと思う。本校の英検の2級ー3級の合格者を調べてみると、た
だ学校の成績がいいということではなく、英語の文の構造をよく理解している
学生の合格率が高いと言えそうである。筆者は現在1年、3年、4年、5年と
4つの学年にまたがって授業に出ているが、中には5年生よりも1年生の方が
英語がよくわかっているのではないかと思えるような場面に時々出くわすこと
があり、なんとも複雑な心境になることがある。逆に言えば、1年生のうちか
らしっかりと文型の指導を行っていれば、5年のうちにはすごく英語力が備わ
ることになるだろうという期待も持てるということになる。ここで述べた文法
(特に文型)の知識の定着度と英語の理解度についての相関関係を、今後調査
していきたいと考えている。確かに基本5文型については問題点もないわけで
はないが、ある一定の基準に従って運用していけば、かなり有効な武器になる
と確信している。ここではその点について言及する余裕がないので、今後何か
の機会に是非述べてみたい。尚、新たな視点から主に高専での英文法指導を実
践した有益な本としては早坂・戸田(1999)があるので、参照されたい。


4.おわりに
 高専での英語教育における成否は、学生に主体的に英語に向かわせることが
できるかどうかにかかっていると言えよう。一般的に言って、高専の学生は素
直に知識を受け入れることができるが、自分から主体的に知識を獲得していこ
うという姿勢に欠けている傾向にあると筆者には思われる。例えば、マンガを
読む時のように、はじめから何の努力もせずに面白おかしく身につく勉強など
ないということを学生に十分に理解させた上で、音声なり文法の指導を徹底し
ていくのが肝要である。そのような努力を積み重ねることによって英語が理解
できるようになった時の快感こそ何物にもかえがたいものである。このような
気持は学生も部活動(特にスポーツ系)などを通じてわかっているものと思わ
れる。


 参 考 文 献
Hayasaka,T.(早坂高則)and Y.Toda(戸田征男)1999.リストラ・学習英文
法 東京:松柏社.
Imai,K.(今井邦彦)1989.新しい発想による英語発音指導[英語指導法叢書]
東京:大修館書店.
Iseki,T.(伊関敏之)2000.「英語教育の中の英語音声学ー英語発音指導にお
ける諸問題」ー全国高等専門学校英語教育学会研究論集第19号
Shimaoka,T.(島岡丘)1994.中間言語の音声学ー英語の「近似カナ表記シス
テム」の確立と活用ー 東京:小学館プロダクション.
Tanabe,Y.(田辺洋二)1990.学校英語 東京:筑摩書房.



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        「高専の英語教育」--高等学校と比較して 
                    
                 木更津工業高等専門学校 中村 俊昭



 高専は高校の学生と同年代の学生を擁しているが、学習指導要領の枠外に置
かれているので、比較的自由に教育を進めることができる。
 その意味において自主とか自由という用語を教育の前に冠することができよ
う。しかし、高専の教育課程の編成にあたっても、当然、学習指導要領の総則
第1款にうたわれている「各学校において」以下の部分が考慮されなければな
らない。教材の取り扱いにおいても、外国語による実践的コミュニケーション
能力の養成を各科目のねらいに応じ配慮している高等学校の範疇を眼中に入れ
て高専においても設定するべきである。しかし、高専における実践的コミュニ
ケーションとは何かをはっきりさせねば設定も配列も現実性を持たない。私は
次のように提案したい。


(1)コミュニケーションのための情報の選択力(Reading ability)
(2)コミュニケーションの正確性・内容の高度保持(Writing ability)
(3)コミュニケーションとしての確実な発信(Speaking & Writing ability)


(1)についてーーーコミュニケーションのためには、より早い情報の収集が
大切である。現代社会はインターネット等を用い、全世界から瞬時に大量の情
報を入手可能な環境が整っている。ここで大切なのは、その情報が自分にとっ
て有用なものか無用なものかの取捨選択能力である。現在のインターネット情
報の約80%は英語であると言われている(STEP調査)。この英語の情報の
選択には速読力が必要である。それもSCANINGやSKIMMINGをする力である。
速読力養成と言っても大量に英文を与えるだけでは身につかない。この点に関
する筆者の研究もあるが次の機会に譲る。
 (2)についてーーーコミュニケーションの情報を収集し、それをまとめる
ためにはWRITING力との結合が大切である。これにはPRECIS WRITINGが有
効である。概要をまとめるこの方法は、内容を元の情報の2分の1、3分の1、
4分の1、5分の1、10分の1と暫時段階的に高めていく方法が有効である。
これも機会があれば筆者の実践を示したい。
 (3)についてーーー発信型にはWRITING BEFORE SPEAKINGの原則を
踏ませるのが高専レベルに求められる英語力であると筆者は考えている。英問
英答などの方法では、QUICK RESPONSEでの日常会話などは伸ばすことがで
きるが、「説得」「提案」「提示」「反論」などの内容を伴った発信をするた
めには、CREATIVE WRITING力が要求される。この能力を養成するために筆
者が行っているのは20SENTECES ESSAY WRITINGである。筆者は発信型
の基本能力について、2分間あるテーマで話しつづける能力があれば、そのONE 
SPANの繰り返しで、いわゆる、「話せる」能力があると言ってよいと思う。
その2分間のスピーチに耐えられる内容が20英文であると筆者は考えるので
ある。STEPの準1級の2次試験の問題の形式である。これも筆者の実践があ
るので興味のある方との資料の交換などしたいと思っている。
 


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        高専の英語教育の現状(その一例)
                         
             大阪府立工業高等専門学校  増木 啓二


 COCET通信に投稿を,ということで大きなテーマを与えていただいたが,
筆者は,筆者の勤務校の英語教育に限定したお話しをしたいと思う.雑感的な
内容でまとまらない点はご容赦願いたい.


 筆者は,府立高校で5年間勤務した後,府立高専に移り18年余りになる.
赴任当時,本校英語科では,高校とさほど変わらないカリキュラム・教材で授
業が行われていた.現在も当時とあまり変わらない面が多々あるが,特にここ
10年ほどは変化も目立っている.例えば,主に文法・作文を扱っていた科目
「英語・」で,文法の独立した授業がなくなり,リスニングやスピーキングを
扱う授業が増えた.LL教室が更新される(平成2年)など,施設面の変化も
あった.大阪府のNETが配属されティームティーチングが行われるようになっ
た(平成4年).そして,カリキュラムの大きな改訂があり(平成9年),
「英語・」が「英会話」と「英作文」に名称変更された,等々.


1)「英会話」について
 本校のこれらの変化は,「聞く・話す」「コミュニケーション」力の養成に
強調がおかれた英語教育界の「変革」の流れにある程度のったものだったと言
えると思う.そして,一定の成果をあげたとも思う.LL教室の使用やNET
の参加によって学生の会話学習の環境は格段によくなった.しかし一方で学生
の状況を見ると,技能として身につけるというレベルにおいては,めざましい
成果があがっているとは言えない現状もある.やはり「クラスサイズ」の問題
や絶対的な練習時間の不足の問題が大きな壁として残っているように思われる.
また,教える側にも,適切な教材・教授法が見つかりにくい,自前の工夫は非
常な労力を要する,などの問題がでている.学生及び教員の指導体制の現状を
ふまえ,「どんなことを,どんな方法で,どの程度まで教えるのが適切か」,
見直す時期に来ているように感じている.


2)「文法」「英作文」について
 「コミュニケーション」を強調する流れの一方で,もっと基本的な部分で筆
者が懸念を抱いていることがある.それは,基本的な文法力の不足である.筆
者が最近「英作文」(3年)を担当して感じたことだが,英語の語順・構造と
いったものが身についていない,さらには理解さえできない学生が増えてきた
ように思われる.中学校段階からの文法力の弱さを十分にケアできないまま
「英会話」や「英作文」へと進んでいった結果,ごく基本的な英文が出てこな
い,書けないという状況に陥っているのではないか,と筆者は推測する.現在
本校では,文法の授業を1・2年の「英語」(リーディングを主とする科目)
の中で,文法問題集・参考書を使って行っているが,効率の悪い面もあるよう
である.なんらかの改善が必要だと感じている.筆者の考える改善の方向は,
「文法授業をどの学年でどの科目の中で行うかの見直す」,「英文を作ること,
英文が自然に出てくることにつながる文法教材,指導法を見つける(あるいは
作る)」といったところである.こうした考えと直接つながっているわけでは
ないが,筆者はこの2,3年,パソコン教コを使って文法の問題演習を自習形
式で行わせる試みや作文の演習・添削をする試みを行ってみている.まだ試行
錯誤の段階であるが,英文を「書く」ことに(それから「話す」ことにも)つ
ながるような基本的文法の練習に役立つ方策にできたらよいと思っている.



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     「高専の英語教育の現状」― 随想形式
 
                       大分高専 穴井 孝義


 今日は5月4日。ゴールデンウィークの真っ只中、休みのない野球部の顧問
活動を今日だけは外してもらい、自分の教官室で今ゆっくりと煙草を吹かしな
がら「さて、高専の英語教育の現状とは」と考えを巡らしてはみるものの、中
学や高校、そして大学での英語教育と特に違っている面が思いつかないのであ
る。そもそも「高専の英語教育」とは何なのだろう。中学や高校、そして大学
とは違った高専独自の英語教育なるものがあるのだろうか。あるのなら、それ
は一体どんなモノをいっているのだろうか。企業が求めている「英語」のこと
なのかなぁ。でも、企業が求めている「英語」とは何なのだろう。英語で書か
れた専門書が読めたり、製品の英文の説明書が読めり、書けたり、或いは外
国からの技術者が来日した時に英語を使って製品の説明が出来たりする、とい
うようなことをいっているのだろうか。でも、そういうのは世間では「工業英
語」といっていると思うのだが…、じゃぁ高専における「工業英語教育」と
「英語教育」とはどう違うのだろう…。考エ出シタラ夜モ眠レナイ!――ナー
ンテことはないのだが、私にはやっぱり分からない。


 私は「一般英語」教師であって「工業英語」教師ではない。胸を張って威張
るようなことではサラサラないが、これは事実である。そして(何を以て一般
英語というのかは今回は外させてもらうが)「一般英語」に関しては、中学、
高校、大学で教える英語と高専で教える英語に何ら差異はないと信じている。
トコロガ、である。企業の中には「高専の英語教育は一体何をやっているのか。
ウチに入ってきても英語力が全然ないじゃないか!」と、いや高専の専門科目
の中にも「上級学年に上がってきても全然英語の専門書が読めないじゃない
か!」等とノタマワレル方がいらっしゃる。要するに高専の英語教育は批判を
そして非難もされているのだ。でも、デモ私は私で思う――ウーン、おかしい
…低学年の時から、それこそ英語の基礎から文法も単語もあれほど一所懸命に
定着を図ってきたのに、なんでそうなるんダヨー?!


 言ワレッパナシじゃぁ腹が立つ。だったら、こちとらも二つばかり愚痴りた
い!一つはそもそも学内で「英語」という科目を他の科目と同等に事務処理を
済まそうとするところに大きな間違いがあるんですヨ! 日本語ではない外国語
の「英語」が、しかも言葉である以上、最終的には実際に使えないとハナシに
ならない「英語」が、更には外国語を通じてその言語を話す人々の文化を理解
するという教養的性格をもった「英語」が、ナンデ他ノ科目ト同等ニ考エラレ
ナケレバナラナイノ!
 
 単位数削減の際も然りである。「ウチの科目も減らした(減らされた)のだ
から、英語も減らせ!」「英語だけが突出するのは不公平だ!ヌケヌケガマシ
イ!」とくる。時間割作成の際も然りである。まず、最初に実験・実習が埋め
込まれ、次に非常勤、そして専門科目。一般科目は最後に埋め込まれていく。
だから、あるクラスは週2時間の英語が月曜日の1限目と金曜日の7限目とか
になったり、また別のクラスでは1日のうちに連続して「英語」「英語LL」
「英会話」が続いたりするということが起こってしまう。要するに、言語であ
る「英語」に、外国語である「英語」に対し、何ら配慮がなされていないので
ある。そういう劣悪な環境に置かれている「英語教育」に対し、ヨクモソコマ
デ言ッテクレルヨ!


 もう一つは、企業が求めている「英語教育」とは何か、私達英語教師が考え
ている「英語教育」とは何か、そして学生達が望んでいる「英語教育」とは何
か、の分析・検討、そしてそれに基づいた共通理解の持てる「英語教育」の開
拓・開発がきちんと為されていないところに問題があるのダー。それぞれのニー
ズがズレていれば、当然満足感も生まれてはこない。だが、ニーズが合致した
「英語教育」が生まれれば、高専における「英語教育」も「工業英語教育」も
中身がよく見えてきて、例えば専門科目の教員と英語科の教員との連繋プレー
も可能になっていくと思うのだが…。


 何はともあれ、一般科目が専門科目と対等に扱われていないという現状がこ
ういった劣悪な「英語教育」の環境を作っているのだと思うと、悔しくて、ク
ヤシクテ、タマラナイ…。



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私の仕事場(爆笑もの、冷や汗ものなど職場での様々なエピソードの紹介)


○その1
 授業中、ずっとこちらの顔を見つめている女子学生がいました。極端な近視
なのでそうせざるをえなかったことを知ったのは、ずっと後のことです。当時
まだ独身だった僕は、どちらかといえば美人の彼女にみつめられてドキドキし
てしまい、ついには皆の前でその子に、そんなに見つめられたらドキドキして
しまうと、やんわり注意を促そうとしました。
 けれど悲しいかな私は緊張していました。今ではそんなことは絶対ありませ
んが、その時出た言葉は、「○○さん(女子学生の名)、そんなに見つめられ
たらこちらはムラムラッとしてしまうじゃないですか!」──2、3秒の沈黙
があった後、クラス中が大騒ぎになったことはいうまでもありません。
 さすがにその日はなかなか授業が再開できませんでした。今ならセクハラ教
師として糾弾されてもおかしくないところです。けれどその時はもう恥ずかし
くて、どこか遠くまで飛んでいきたい気分でした。高専の教員になってそれほ
ど間もなかった僕の、忘れたくても忘れられない思い出です。
            (ハンドルネーム:語学の鬼を目指していた男)


○その2
 1年生の担任をしていた時、自分のクラスの学生が、他校の生徒に大怪我を
負わせるという大事件があり、加害者の学生は無期停学の処分を受けることに
なった。事が事だけに、申し渡しは保護者や学科主任、そして学生主事が集ま
り、厳粛に緊張した面持ちで行われた。たまたま別の重要な用件で主任と主事
が急に席を外したので、私は学生と彼の親御さんに処分は無期停学であること
を伝え、その日から自宅謹慎に入ってもらった。
 数日後、地元の警察署から私の所へ問い合わせの電話があった。その学生と
保護者から警察に電話があったらしい。いつ逮捕されるのかと。そういえば私
の所にも毎晩その学生の親から電話があった。いつも何か怯えているようだっ
た。そして彼らの家に電話して分かったことは・・・。
 私は申し渡しの際、彼らに「無期停学」の代わりに「無期懲役」と伝えてい
たのだった。相手を大怪我させたこともあり、大変真面目でこちらを信頼して
くれていた保護者はそれを信じ込み、大変ショックを受けて夜も眠れないほど
だったという。私は事情を説明し、最終的には安心してもらった。
 今にして思えば、申し渡しの直前までTVのニュース番組を見ていたのが良く
なかったのだと思う。もう随分昔の話だが、学生と保護者には本当に悪かった
と今でも思っている。(匿名希望)


○その3
 授業で用いているポケネタ:「巨人ってすごい球団ですねェ。ホントは東京
読売ジャイアンツなのに愛称を日本語訳したり、軍隊作ったり、大変なチーム
ですよねぇ。今やNHKだろうが新聞だろうが阪神対東京とか虎対巨人とか言い
ませんものね、巨人軍は聞くけど、虎軍とか聞いたこともないし」
           (巨人ファンの方々の手前、投稿者名は特に秘す)



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高専英語教官紹介(和歌山高専編)
      文責/和歌山高専 森岡 隆


 仮に和歌山県を東海岸側、西海岸側に区分するなら、和歌山高専は西海岸、
ウエスト・コーストにある学校です。といってもアメリカのウエスト・コース
トのように自由闊達でハチャメチャという訳ではなく、大平洋に面した至って
のんびりした学校だといえます。
 外国語科の常勤のスタッフは5名。そのうちのおひとりは、ドイツ語の専任
である吉田先生です。そしてそれ以外の4人が英語科の仙人、いや専任という
ことになります。主任の太古先生は工学部を出た後文学部に再入学した経歴を
持つユニークな方で、主な研究テーマは中世ヨーロッパの物語。現在教務主事
補でもあるため、学内の改革のプロジェクトのメンバーを幾つも兼任されてお
り、今年度は特に御多忙のようです。次に、一昨年度まで主任をしておられた
森川先生は、実用英検の試験官を務める本格派です。授業でも様々な工夫をさ
れており、同じ英語教師の立場からいって、本当に英語教師の鑑のような方で
す。以前いちど、コセットで研究発表されたこともあります。またこれまで何
度も教務主事補をなさっており、その教務的手腕は類い稀なものがある点にも
言及しておくべきでしょう。
 研究室が汗牛充棟、本でいっぱいで、いつ訪ねていっても本を読んでられる
のが、平山先生です。テニス部の顧問としても学内ではつとに有名で、高専大
会以外にも何度も学生を引率しておられます。(これが結構遠方だったりする)
本当に頭の下がる思いです。そして4人目が私、森岡です。communicative な
授業を行うのに、色々と苦しんでいます。一般英語の他には、5年生の外国語
の授業で通年でアメリカ音楽の歴史を教えています。
 そして助っ人で英語を担当して下さっているドイツ語の吉田先生も忘れるわ
けにはいきません。ドイツ文学研究で既に共著が何冊もあるという彼ですが、
プライベートでは日本野鳥の会の会員であり、海釣りをこよなく愛する方です。
英語の発音には自信がないと仰りつつも、常に学生にコーラスリーディングを
させておられるところなど、なかなか侮り難い方です。
 このような陣営の我が和歌山高専ですが、また高専大会や家族旅行などで近
くにお立ち寄りの節は、どうか遊びに来て下さい。学校に隣接する磯に飛び散
る白波が、きっと気分を一新させてくれることだと思います。
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