ホーム 規則等 役員名簿 会員名簿 大会情報 COCET3300 Kosen English Town

===============================================================
COCET通信                第17号 (09.10.14)
===============================================================

目次

(1)第32回研究大会報告     仙台高等専門学校   武田 淳

(2)第1回COCET学会賞を受賞して
                 豊田工業高等専門学校 深田桃代

(3)国際共同教育CEの推進
           苫小牧工業高等専門学校 松田奏保・石川希美

(4)第2回全国プレコンを終えて ~宝箱のような3人1チームプレゼン~
    松江工業高等専門学校 服部真弓(第2回プレコン実行委員長)

(5)編集後記

---------------------------------------------------------------
※以下は、昨年度(平成20年度)の大会に関する報告です。COCET通信の発行が1年間途絶えていたため、1年遡って、副会長の武田先生に昨年度大会の報告を書いていただきました。今年度(平成21年度)の大会報告については、12月に発行される次号のCOCET通信に掲載する予定です。


(1)第32回研究大会報告
---------------------------------------------------------------
                 仙台高等専門学校   武田 淳
---------------------------------------------------------------

 第32回コセット研究大会は、平成20年9月20日(土)・21日(日)の2日間、東京で開催されました。会場は、勝手知ったる代々木オリンピックセンター。我々にとっては高専プレコン会場としてもすっかり馴染みの施設となりました。大会前日の理事による会場設営も手慣れたもので、各自がテキパキと連携して動く様はまさに亀山体制の成せる業、スタッフとして参加することに喜びを感じます。
 2日間の研究発表総数28本は過去最多、そのテーマも文法教授法や語彙指導に始まりCOCET3300の評価や英語教育体系に至るまで、いかにもコセット大会らしく理論と実践の両面において実にバラエティに富んだものでした。中でも今大会では、COCET3300の有効性についての検証と評価、そしてeラーニングの活用を対象とした発表が多いことが印象的でした。また、ここ数年の間に若手の先生方によるご発表が次第に増えつつあることを、心強く感じました。
 初日の総会に続く特別講演では、鳥飼玖美子先生(立教大学大学院教授)をお招きして「TOEFL・TOEICと日本人の英語力:コミュニケーションに使える英語とは何か」という、まさに時宜にかなったテーマでお話しいただきました。ユーモアあふれる軽妙な口調で、時に舞台裏の話題も交えながらの刺激的なお話に、満員の会場は時を忘れて聞き入りましたが、鳥飼先生も我々の熱気を感じ取ってくださり、お帰りの際には今後も高専での英語教育にご協力いただける旨のお言葉をいただきました。講演後に撮影した集合写真の、鳥飼先生(と亀山会長)の笑顔が印象的です。
 初日夕方の懇親会といえば、ご存知、崎山副会長の名司会による新人紹介タイム。私はいくつかの英語関連学会に所属していますが、コセットほどアットホームな学会を他に知りません。それが最も如実に現れるのが、この懇親会、そして新人紹介。ここで紹介される先生方も、年々確実に増えていますね。高専着任後しばらく経ってからコセット大会初参加、というベテランの先生方が今回もいらっしゃったこ
とで、会場は沸き返りました。
 2日目午後のフォーラム・意見交換会では、従来にない工夫を凝らし、予めテーマを固定せずに会場の先生方から自由に発言していただきました。TOEICの指導やプレコンへの参加状況、国際交流活動への英語教員の関わり方など、興味深い話題が相次いで終了予定時刻をオーバーしてしまうほど、活発で貴重な意見交換の場となりました。
 今大会で特筆すべきは、全国高等専門学校英語教育学会賞の第1号として、深田桃代先生(代表・豊田高専)の「高専生英語力向上への道:英文多読指導の効果」が選出され、総会終了後に表彰式が行われたことです。この学会賞は、先生方の優れた研究発表に寄与することを期して新たに制定されたもので、今後も継続が予定されています。

---------------------------------------------------------------
(2)第1回COCET学会賞を受賞して
---------------------------------------------------------------
                豊田工業高等専門学校 深田桃代
---------------------------------------------------------------

 研究論集第27号(2008.2)に執筆させて頂いた拙稿「高専生英語力向上への道:英文多読指導の効果」(深田桃代、西澤一、長岡美晴、吉岡貴芳著)が、思いがけなく第1回COCET学会賞受賞の栄誉を賜りました。知らせを頂いた時の驚きと戸惑いの後、高専に赴任して以来20数年間、英語教育という面では決して恵まれた環境とは言えない現場で同じような悩みと志を共有できる場であるCOCETの一員でいたことで励まされ、支えられ、微力ながら教育と研究を続けてこられた年月を振り返って、この受賞を素直に喜びたいという気持ちがこみ上げて来
ました。本当にありがとうございました。
 私が高専に赴任した年の夏、英語科の先輩の先生からCOCETという全国高専の英語教員の集まりがあるので、研究発表をしてみないかとお誘いがあり、何も知らないままおそるおそる出かけて行きました。東京の九段会館の一室に20名くらいの先生がおられ、発表者は私を含めてたった3名でした。それまで英語教育分野での学会発表を一度も経験したことのなかった私は、この予想以上にこじんまりした、家庭的で暖かな雰囲気の中でCOCETデビューをさせて頂いたことをとても幸運に思いました。その時の発表論文が掲載されたのが、COCET Journal No.5(1984.5)ですが、この時の論集は、何と私の投稿論文1本だけだったのです!
 そのCOCETが、先人が点された小さな灯を消すことなく、多数の投稿論文の中から学会賞を出せるまでに成長したことは、受賞以上に嬉しく、心から祝いたい気持ちでいっぱいです。1999年秋に始まったCOCET通信の発行と情報・意見交換のためのメーリングリストによって、会員をつなぐ絆はさらに強まり広がって、科研プロジェクト、COCET3300等、高専の利点を生かした建設的で実り多い共同研究、開発が進められるまでになりました。設立当初の「家庭的な雰囲気」を維持しなが
ら、「教育も研究もハイレベルを目指す」というモットーが実現できていることが、他の学会では得がたいCOCETの魅力だと思います。
 1人では困難なことも、つながることで何倍も大きく質の高い仕事ができます。この受賞論文も、豊田高専の英語教育改善の取り組みの中で、タイトルにもありますように、高専生の英語力向上という目標に向かって専門学科と英語科の教員が協力し合い、暗中模索の中で出会った多読という新しい英語学習の形の実践的研究から生まれました。そして、中高や大学と比較して、多読は高専の教育環境により適しており、今後複数の高専での実践を共有することで、多読を高専の特長を生かした英語教育の1つの形に育て、日本のみならず、世界に発信することも夢ではないと思うようになりました。
 一昔以上前のことですが、研究大会の特別講演をお願いした早稲田大学の東後勝明先生が、この会の印象を、「研究業績中心の学会とも、中高の教師の研究会とも違う、さわやかな空気が流れていて、日本で唯一言語教育の専門家が育つ場としての可能性を感じる」と言って下さいました。この素敵な言葉を後輩の皆様にお伝えして、COCETの益々の発展を祈念いたします。

---------------------------------------------------------------
(2)国際共同教育CEの推進
---------------------------------------------------------------
         苫小牧工業高等専門学校  松田奏保、石川希美
---------------------------------------------------------------

I.海外での共同教育
 苫小牧高専は、平成19年度、文部科学省による「大学教育の国際化推進プログラム」に採択された。これに伴い、「国際産学連携教育」の推進を目指す取り組みとして「共同教育CE(Collaborative Education)プログラム」を、海外提携校であるニュージーランドのEIT (Eastern Institute of Technology) にて実施した。このCEプログラムは、将来学生が技術者として海外で働くことを想定し、他者との協力や仕事に関わる実務などを、日本ではなく海外の英語環境の中で体験させることで国際通用性の育成を図るものである。

II.平成19年度の実践内容
 平成19年度の実践内容は、以下の通りである。
1.英語クラスにおける「環境問題」をテーマにしたグループ共同学習
ビデオやテキストの内容把握や状況説明、ディスカッションなどを通して、ニュージーランドや留学生の出身各国における環境問題について理解を深めた。
2.EITが立地する地域のゴミ集積・リサイクルセンターを訪問見学
センターの従業員から、ゴミ分別、処理の仕方、不用品のリサイクルなどに関する説明を受け、質問をしたりメモをとりながら学習した。
3.英語プレゼンテーション
英語クラスおよび企業見学で学んだことをグループでパワーポイントにまとめ、成果発表として英語プレゼンテーションを実施した。

III.CEプログラムの意義
 CEプログラムでの実践を通して学生は、「英語を介したコミュニケーション」はもちろん、「他者との協力」により、情報収集、まとめ、発表といった「英語による実務」を体験した。これらは、海外で仕事をする際に必要となるスキルであり、CEプログラムは実際に海外の企業に入る以前の疑似体験または訓練の役割を果たす。

IV.実践の効果
また、派遣学生への事後アンケートから、以下のような効果が得られた。
1.日常的な英語力に対して肯定的な自己評価を持つようになり、
高専での英語授業の理解度が上がった。
2.他人と協力しながら作業をし、自分の意見を述べることができた。
3.英語学習への意欲が増え、自主的な英語学習を促進するきっかけになった。
4.英語を使う仕事に取り組もうとする学生の意欲が、若干ではあるが増えた。

V.平成20年度および平成21度の取り組み
 平成20年度には文部科学省「国際化加速プログラム」に採択され、20年度、21年度とEITとのCEプログラムを継続している。その中で、内容に工学の専門性を生かした取り組みを入れるなど、改善をしながらプログラムの充実を図っている。21年度に実施した、小学生向け「科学実験出前授業」は大変好評であり、「科学の面白さを伝える地域貢献」を海外で英語を使ってできたことは、学生にとっても有意義な体験となった。このことから来年度も同様のプログラムを計画する予定である。今後もEITとの連携を深めながら、学生の国際通用性の向上を目指すプログラムとして、高専の特色を生かした取り組みを実践していきたい。

VI.最後に
 本校の取り組みは、学生が海外に目を向ける機会を作りたいという思いから、手探り状態の中でここまで進めてきました。今後も諸先生方と情報交換・意見交換ができれば幸いです。

---------------
※松田先生と石川先生は、独立行政法人国立高等専門学校機構主催平成20年度教育教員研究集会(教育分野)での研究発表『実践的テーマによる国際産学連携共同教育の推進』で、理事長賞を受賞されました。

---------------------------------------------------------------
(4)第2回全国プレコンを終えて
                ~ 宝箱のような3人1チームプレゼン ~
---------------------------------------------------------------
                松江工業高等専門学校 服部真弓
---------------------------------------------------------------

 第2回全国プレコンは、2009年1月24日(土)~25日(日)に、高専機構関係者を来賓として迎え、予選審査を通過した全国21高専45名の学生、及び各校引率教員の皆さまの参加の下に行われました(予選には30高専から144名の学生が参加)。
 第2回大会の準備は、2008年2月の第1回大会アンケート分析から始まりました。実行委員の先生方とのメールでの議論のやりとり、数回の打ち合せ会も経て、第1回大会の問題点はほぼ全て解消されました。第2回大会の大きな進展としては、次の3点が挙げられます。
 1つ目は、予選審査に関する内規と予選参加料を設けたことです。第1回大会予選審査は、時間的余裕も無く、実行委員の熱意のみで進められたと言えます。プレコンの灯火を消さないためには、予選審査のマニュアル化が急務であると考え、審査員選出、審査方法、審査結果公表内容などを議論し、内規としてまとめました。
 2つ目は、学生交流会です。本大会の目的の一つである「学校間の親睦・交流」を達成するために、その場はどうしても必要なものでした。予算、時間は限られていたものの、学生たちは親睦を深め、なかなか散会できないほどの盛り上がりでした。司会・進行の労を引き受けてくれた、松江高専プレゼンチームの3人の活躍も見逃せません。
 そして3つ目は、地区大会でのプレゼン部門実施地区(2008年度は近畿地区のみ)の参加資格を認めたことです。プレコン地区大会の開催を奨励するならば、地区大会と全国大会のリンクもあって然るべきです。当初は「地区大会優勝校」の出場のみを認めていましたが、全国大会への出場確率にアンバランスが生じたた、第2回プレコン予選参加校すべてから承認を得て、「近畿地区2,3位の全国プレコン予選参加」を急遽認めることにしました。
 そうして迎えた大会当日。第2回プレコンはさらなるレベルアップを遂げていました。3人1チームのプレゼンは、無限の可能性を秘めた宝箱のようです。運営に携わりながらも、その面白さ、奥深さに、私は虜になりました。
 思い起こせば2007年12月、私の勤める松江高専の荒木光彦校長から、全国大会を開催したいならば、地区校長会に嘆願書を提出するようにという指南を受け、当時COCET内の全国大会準備世話人会代表であった穴井孝義先生(大分高専)と連絡を取ったことが、私のプレコンとの出会いでした。このような素晴らしい大会の萌芽期に、実行委員として、また実行委員長として、立派な先生方と共に仕事ができたことはほんとうに幸せなことで、今では私の宝物となっています。貴重な機会を与えていただき、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。今後もプレコンが、多くの先生方の英知と努力により、さらなる発展を遂げることを願っています。

------------------------------------------------
 全国プレコンについては、独立行政法人国立高等専門学校機構主催平成20年度教育教員研究集会(学生支援分野)での研究発表『高専生の英語表現力向上を目指した全国高専英語プレゼンテーションコンテストの開催』(大分高専)で、以下の先生方が理事長賞を受賞されました。
(敬称略)
代表:穴井孝義(大分)、亀山太一(岐阜)、崎山強(都城)、武田淳(宮城)、嵯峨原昭次(鹿児島)、長山昌子(富山商船)、小澤志朗(長野)、服部真弓(松江)、森和憲(詫間電波)、奥崎真理子(函館)、南優次(宇部)、吉永進一(舞鶴)、岡崎久美子(宮城)
尚、プレコン開催の経緯については、COCET通信第16号をご覧下さい。
------------------------------------------------

編集後記
 先日の台風18号の影響で、初めて「休校」を経験いたしました。皆様のところで被害はありませんでしたでしょうか。
 さて、16号から、1年半ぶりにCOCET通信第17号をお届けいたします。今号の執筆者は、第1回学会賞を受賞された深田先生、第2回プレコンの実行委員長の服部先生、高専研究集会で理事長賞を受賞なさった松田先生・石川先生と、武田先生を除く全員が女性の先生方になりました。
 私事で恐縮ですが、初めてCOCETに参加した第15回大会では、参加者48名中女性は4名のみ、7人の発表者のうち女性は深田先生のみだったことを思い出し、時の流れと時代の変化を実感いたしました。
 次号は、12月に発行予定です。取り上げて欲しいテーマなどがありましたら、どしどしお知らせ下さい。投稿も大歓迎です。
                              (編集 青山晶子)

COCET通信バックナンバー
創刊号(1999.11)
第2号
第3号(2001.2)
第4号(2001.7)
第5号(2001.11)
号外(2002.3)
第6号(2002.5)
第7号(2003.1)
第8号(2003.8)
第9号(2004.4)
第10号(2004.8)
第11号(2004.12)
第12号(2005.7)
号外(2006.9)
第13号(2006.10)
第14号(2007.1)
第15号(2007.5)
第16号(2008.5)
第17号(2009.10)
第18号(2009.12)
第19号(2010.3)
第20号(2010.12)

COCETのあゆみ