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COCET通信           第14号 (07.1.23)
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目次

(1)第30回大会開催される
            福井工業高等専門学校 小寺光雄(COCET会長)


(2)ほろ苦いデビュー戦     明石工業高等専門学校  大和知史

(3)高専卒業、そして英語の道へ!
                 沼津工業高等専門学校  藤井数馬

(4)学会費は個人研究費で! そして外部資金獲得へ!
                 豊田工業高等専門学校  神谷昌明

(5)よもやま話:スピーチコンテストと学生の指導
                 石川工業高等専門学校  太田伸子

 編集後記

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第30回研究大会開催される

             福井工業高等専門学校 小寺光雄(COCET会長)

 記念すべき第30回研究大会は、千葉県の海外職業訓練協会(OVTA)を会場に、
8月19日(土)~20日(日)に開催されました。当初は記念大会としての企画を
目論んでいましたが、特にユニークなアイデアもなく例年どおりの内容で開催
させて頂きました。参加者は約60名で、関東大会としてはやや少なめでしたが、
若い先生方の参加も多く、活気に満ちた研究大会となりました。以下、概要を
お知らせします。

<理事会を経て総会で決定した事項> 詳細は2月に発行予定の『研究論集』
26号をご覧下さい。

1.平成17年度会計報告
2.会員の異動
3.来年度の新役員
  会長:亀山太一 先生(岐阜)
  副会長:崎山 強 先生(都城)、武田 淳 先生(宮城)
4.来年度の日程 全国高専体育大会の日程を勘案して、9月2日(土)~
2(日)と決定しました。会場は、例年どおり京大会館。なお、特別講演の
講師には、千田潤一先生にお願いすることが既に決まっています。

<特別講演>
 明海大学教授の和田稔先生によるご講演「英語教育の現状と課題」を拝聴し
ました。小学校、中学校、高等学校の順に、それぞれの段階における英語教育
の問題点について、和田先生の問いかけに、私達が自分達自身の考えを考えて
いく、という形式で進められました。実践的コミュニケーション能力の評価の
ための国際的な指標となる、ACTFL-OPI(Oral Proficiency Interview)や、
Council of EuropeのCEF(Common European Framework of Reference for
Language Learning, Teaching and Assessment)などの紹介もあり、授業をす
る上で大変示唆に富んだご講演でした。

<研究発表>
 本大会では、17件の発表がありました。発表件数は年々増える傾向にあり、
今年度は会場を3室設けて対処しました。例年同様、幅広く、多様なテーマで
の発表でした。

<フォーラム>
“授業以外で学習動機を高める方策を求めて”という統一テーマのもと、「英
語スピーチコンテストと海外研修(その2)」と題し、後者に関しては昨年度
のテーマを継続しました。
 スピーチコンテストについては、「全国高専弁論大会」準備世話人会から、
鹿児島高専の嵯峨原昭次先生と、富山商船高専の長山昌子先生が、各地区の進
捗状況を報告なさいました。
 海外研修については、東京高専の竹田恒美先生が、TAFE(Technical And
Further Education・オーストラリア)、釜山情報大学、ヘルシンキ・ポリテ
クニックとの交流プログラムについて、また、福井高専の瀬川直美先生と小寺
光雄先生が、同校とバララット大学との姉妹校提携と交換留学研修について報
告されました。また、サウスウエールズ州のTAFEの代表であるScott Russell
氏が特別参加され、TAFEの概要について説明されました。
 尚、その後の経緯で、「スピーチコンテスト」については、各地区世話人か
ら、当該地区の国立高等専門学校会議に、『「全国高専英語弁論大会」設立に
ついて』の提案が提出されて、協議事項となっているとのことです。世話人の
皆様のご尽力により、全国高専英語弁論大会開催に向けては、着実に前進して
います。

<全体として>
 例年会場となっていた代々木のオリンピックセンターは、年々使用団体が増
え、特に夏休みの週末には一般団体はほとんど使用できない状態で、あわてて
おりましたところ、木更津高専の荒木英彦先生のご尽力により、OVTAで開
催することができました。初めて東京以外での開催となりましたが、若い会員
の参加者が多く、活気あふれる大会となりました。
 最後に、今後、未加盟校からも是非加入していただけますよう希望していま
す。来年度の京都大会にも、皆様お誘いあわせの上ご参加下さいますよう、お
願い申し上げます。


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ほろ苦いデビュー戦

                    明石工業高等専門学校 大和知史

 この度、コセット通信への寄稿を打診された。このこともデビューのひとつ
であるが、ここでは、私自身が経験した、昨夏のコセットでの学会発表デ
ビュー戦を、さまざまな「初めて」の経験とともに振り返りたい。
 コセットのデビュー戦に入る前に、まず、自分の学会発表デビュー戦を振り
返ってみたい。最初に学会発表をしたのは、修士2年の時であった。初めての
学会発表ということで、ガチガチになって発表をしたのを覚えている。配布資
料には文字がびっしりで、時折下線が引いてあり、それを「読む」という、今
思えば発表者にも聞き手にもしんどいスタイルだったのを思い出す。いまやそ
の方式は、パワーポイントの隆盛とともに影が薄くなっているようである。
 そして、コセットで「初めての口頭発表」である。恥ずかしい話ではあるが、
大学院を修了し、明石高専に勤務を始め、社会人となっての「初めての単独で
の」発表であった。幾度かの共同発表を行ってはいたが、先の学会発表デ
ビューのことが脳裏に浮かんだ。
 更に、これまた恥ずかしい話なのだが、パワーポイントを用いた発表も「初
めて」であった。これまで、パワーポイントの発表を聞く度に、「ほほぅ」と
うならされているのだが、手元に残る資料をなんとかしたいとの考えが常に
残っていた。そんな時、コセット直前に参加した高知の学会で聞いた先輩の発
表(と発表資料)に驚かされた。手元の資料には文章化されたものがあり、
それをパワーポイントで要約するというスタイルの発表であった。「これなら
後々読み込むこともできるし、パワーポイントで要点だけを追わせることも可
能だ」と考え、とりあえず、自分のパワポデビューにはこの方式を取ってみる
ことにした。その時は、この方式は「資料の作成がつらく、自分の首を絞めて
いる」という事実は忘れていた…。初めての割には無茶をしたものである。
 当日を迎え、自分の発表を控え、ドキドキしながら直前の発表を聞いている
と、パワーポイントの背景テンプレートがかぶっていることが発覚した。「初
めての発表」で「初かぶり」。これはデビュー戦にありがちなミスであったと
反省しきりであった。
 発表に際し、亀山先生からパソコンをお借りすることをお願いしたところ、
快諾して頂いた。音声ファイルが入っているため、事前に認させて頂くという
ことで、休憩時間にセッティングを確認すると、何回やっても音声ファイルが
開かず音声が出ない。亀山先生、武田先生にお手数を取らせてしまう。亀山先
生曰く、「音声ファイルは曲者だからねぇ~。」と、さらり。「初めてのパソ
コントラブル」に、こちらは脂汗が出てきた。このことは肝に銘じておくこと
とした。
 慌てふためいた私は、井上先生にお願いし、先生のパソコンをお借りするこ
とができた。会場を一時出て、音声が出ることを確認した。自分の発表時間は
次だというのに、と焦りつつセッティングを済ませ、何とか発表には間に合っ
た。
 実際の発表が始まった。ここでも、一箇所音が出ず、やはり「初めてのパ
ワーポイント」にトラブルはつきもののようであった。脂汗が出まくったのだ
が、何とか発表を終えることができた。発表自体は、内容が現状把握中心であ
まり実践寄りではなかったこともあり、うまく共感を得ることができず、こち
らもほろ苦となった。それでも、ダイアログをセンテンス、ディスコースレベ
ルにする点に関しての指摘、実際の教授でどのようにしているか、あるいはす
るべきか、についての有益なコメントを得ることができた点は非常に大きかっ
た。
 今回のデビュー戦をまとめると、なにかとほろ苦いものであった。それでも、
亀山先生、武田先生、井上先生の助けをお借りすることができたのは大きかっ
た。また、明石からの先生が会場におられたのも心強かった。ほろ苦いデ
ビューでも、こうした多くの先生の力をお借りできたというのが、今回のコ
セットでの発表の一番の「初収穫」だったのかもしれない。とは言え、あまり
借り続けてはいけない。今後はこちらが何らかの力を貸して、どなたかのデ
ビュー戦を演出できれば幸いである(苦くするつもりはないが…)。


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高専卒業、そして英語の道へ!

                    沼津工業高等専門学校 藤井数馬

 静岡県立高校の教諭から沼津高専に奉職して、今年度で2年目になる。本校
は、工業高専であり、卒業生の進路は大学編入と就職がおよそ半々の割合であ
り、就職する学生のほとんどはエンジニアとなっていく。
 そんな環境の中ではあるが、本校の制御情報工学科5年生のある男子学生
(以後、Mくんとしておきます)が6月のある日、私の研究室に相談にやって
きた。「先生、僕は将来英語の道に進みたい。文学部へ編入して英語を勉強し
たい。」ということだ。
 ここで簡単にMくんのことを紹介させていただきたい。Mくんは静岡県伊東
市の出身で、今は自宅から通学している。数年前から英語の道を真剣に意識し
始めたようで、将来は英語教師や通訳など英語に携わった仕事をしたいという
目標を持っている。英語に対する意識は相当高く、資格にも貪欲に挑戦し、
TOEICでは4年生の時に800点以上をマークし、前回行われた英検でも、準1級
の1次試験に合格した。本校のカリキュラムは、高学年になるほど英語の授業
時間数は減っていく。自ら勉強しないと英語力が伸びないどころか、落ちる可
能性さえあるし、専門科目の負担も多大であったことを考慮すると、英語学習
に対し相当な努力をしたことと思う。専門科目は苦手と言いつつも、手を抜か
ず取り組み、部活動では3年まで野球をやり抜いた頑張り屋さんである。
 英語の道へ進みたいという気持ちにこちらも嬉しくなり、相談に来た6月か
ら編入試験のある11月まで一緒に勉強した。第一志望は静岡大学人文学部で、
他にも東京外国語大学英語学科も受験予定とのことだった。まずは過去問題を
取り寄せて、一緒に対策を練ることから始めた。静大の英語の試験は、英語の
一般の試験に加え、英米文学と英語学の分野もそれぞれ3分の1ずつ出題され
ている形式だった。たまたま私の専門も英語学であるため、過去5年分の英語
学の過去問題のコピーをもらい解いてみた。その問題を解いている間、Mくん
には英語学の簡単な概説書を2冊渡し、読んでおくよう指示した。静大の過去
問題の英語学の問題は、音声学から音韻論、形態論、意味論、統語論、語用論、
歴史言語学、認知言語学にまで及んでおり、高専で一般的な英語を学んできた
だけのMくんにとっては、莫大な範囲だった。一方、文学については、文学作
品とそれを書いた作家を結びつける問題が大半であったため、基本的な文学作
品を覚えれば何とかなりそうだった。英語の一般的な力をはかる試験も、基本
を問う問題であり、Mくんの力を考えれば充分にできるレベルであった。つま
り、合否を左右するのは英語学の問題が大きいと判断したため、問題の解説を
しながらそれに関連したことも付け加えて伝えた。一方、東京外国語大学の問
題は英語学や英米文学の問題は一切なかったが、英語の試験問題の難易度が非
常に高く、私が模範解答を作り、Mくんが自分の出してきた答えと合わせ、そ
れに質問があれば受け付けるかたちとした。
 編入試験の結果であるが、両大学とも11月に試験が行われ、東京外国語大
学には不合格だったものの、第1志望の静岡大学に見事合格し、来る4月から
は専門を制御情報から英語に方向転換し、目標に向かって新たな学生生活をス
タートさせることになった。
 高専入学時はみな若干15歳。当時は好きだったことが、卒業する20歳になっ
ても好きか、それは分からない。耳をすませれば、本校の4年生でも、3年生
でも英語の道を真剣に考えている学生がいることを聞きつけた。そのような学
生の相談にのってあげることも、我々高専教員の大きな仕事の一つであること
を、今回のことは新米教師である私に教えてくれた。また同時に、英語が好き
な学生に英語を磨く多くの機会を与えてあげることも大切であることを感じた。
本校では、昨年度より校内英語スピーチコンテストを実施し、毎年20名程度の
自主的な参加者を得ている。上位3名までを表彰しているが、上位に入る学生
のスピーチは英語のレベルも内容も立派なものである。Mくんは昨年度のス
ピーチコンテストに出場した。このような英語を磨く機会が多くあることは高
専の学生にとっても好ましいことである。
合格発表が終わりしばらくして、Mくんが御礼にということでネクタイを買っ
てきてくれた。将来は同じ舞台に立つかもしれない。そのネクタイを締めた時
は、今回のことに対する喜びと期待と自分への戒めを同時に持って、自分も
キャリアを充実させ成長していきたい。


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学会費は個人研究費で! そして外部資金獲得へ!

                    豊田工業高等専門学校 神谷昌明

 皆さん、いくつの学会に所属されていますか。4つ5つは当たり前でしょう
か。今までは私費(ポケットマネー)で学会費を支払っていたと思います。平
成17年度から、学会登録費等は各個人に割り当てられている教育研究費(教
育研究実施経費)で支払うことが可能になりました。ご存知でしたか?私も平
成17年度、平成18年度は教育研究費で支払いました。平成19年度も教育
研究費で支払う予定です。
 支払い方法は立替払いになります。先ず学会費を郵便局などで、私費で支払
い、領収書をもらいます。会計課へ提出する書類は次の3点です。
(1)立替払い請求書(手数料を含めた金額・銀行口座番号などを記入)
(2)領収書
(3)学会費が確認できる書類(学会の規約、案内(Web版可)などのコピー)
 後日、指定した銀行口座(旅費と同じ)へ振り込まれます。是非、会計課に
問い合わせて下さい。立替払いができれば、学会に入会しやすくなりますね。
研究・教育も捗るのではないでしょうか。COCETにも是非加入して下さい。
 でも、問題が起こります。学会費を教育研究費で支払うと、ただでさえ少な
い教育研究費が減りますよね。豊田高専英語科の場合、英語科共通経費を除い
て一人当たり旅費を含めて約17万円です。かつての半額です。パソコンも買
えませんし、共同研究による遠方への出張もできません。外部競争的資金・内
部競争的資金を獲得することが必要になります。教育研究費が減らされた分、
学校中央で校長管理のもと教育研究プロジェクト経費(内部競争的資金)など
をプールしている高専も多いと思います。この経費は科学研究費を獲得できな
かった教員が優先的に申請し獲得できる経費だと思います。先ず、全員が科学
研究費を申請し、採択結果をみて、教育研究プロジェクト経費(名称は高専に
より異なると思います)に申請しましょう。文部科学省の科学研究費以外にも、
研究助成をしている団体は意外に多いですよ。常にアンテナをはって、積極的
に申請されることをお勧めします。私達は教諭ではなく教授・準教授・講師・
助教・助手ですから、研究と言う職務にも応えましょう。下記のURLを参考に
してみて下さい。
 財団法人助成財団センターのURL http://www.jfc.or.jp/search/guide.html
 助成金情報&公募型プロジェクトのURL http://www.tuat.ac.jp/~crc/f.html

 豊田高専の場合、学生に数値目標を持たせています。例えば英文多読ですと
「目指せ100万語!」です。かなりハードルの高い数値目標ですが、今までに
10名以上の学生が達成しています。中には200万語以上を読み、TOEICのスコア
を確実に伸ばしている学生もいます。学生に数値目標があるのなら、教員に
あってもいいですよね。各個人で数値目標を決めてみてはいかがでしょうか。
例えば、定年までに論文(報告書含む)50本以上とか、学生指導なら高専大会
全国大会優勝2回以上とか、いろいろ設定できますよね。
 科学研究費なら「目指せ 外部資金獲得1000万円!」はいかがでしょうか。
科学研究費基盤(A)なら1回でクリアできますが、文系の教員には難しいと思
います。基盤(C)等をこまめに獲得するしかありません。豊田高専英語科で
は高橋薫先生が外部資金約1000万円をすでに獲得されています。神谷が約700
万円で追従している状況です。同僚と切磋琢磨できる環境は素晴らしいと感じ
ています。
 では、体調を常に整え頑張りましょう。あまり悩まないで前へ!


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よもやま話:スピーチコンテストと学生の指導

                    石川工業高等専門学校 太田伸子
1 はじめに:
 北陸地区の高専英語スピーチコンテストは,富山商船高専が主催するコンテ
ストに参加可能な高専が,1998年度から数年おきに参加する形で行なわれ,
2006年度10月に,第1回北陸地区高専スピーチコンテストとなりました。この
経緯については,中心となって実現にご尽力いただいた長山先生(富山商船高
専)のCOCET通信第13号記事をご参照下さい。富山商船高専関係各位の,校内
大会を含めた10年以上にわたるすばらしい運営がそれまでになければ,今回の
第1回北陸地区大会は実現しなかったと感謝しています。石川高専は,今回を
含めて,1998年度から3大会に出場しました。たまたまそれぞれ優勝,準優勝
という結果で,代々の学生の非常に大きな励みとなりました。しかし全国の各
地域によっては,高専スピーチコンテスト開催40回以上という長い歴史を重ね
ている地域もあるとのことなので,「スピーチ指導のTips」について執筆にふ
さわしい方は,まちがいなく他に多数おられると思います。とはいえ,高専英
語スピーチコンテスト全国大会の早期実現を祈る者として,学生の指導につい
て,一教員の事例を紹介させていただくことにします。

2 教員の心情:
 学生が大会などで優れた成果をあげることは,教師冥利につきることです。
学生の成長を促すのは教員の仕事であり,また成長は学生の努力の成果に他な
りません。しかし同時に,教員も人間であるので,指導が学生の成長に少しで
も寄与したなら,それを認める労(ねぎら)いの言葉が少しあれば,励みにな
るのも事実です。米国のある教育機関(中等教育後期)で,教員用会議室の壁
に,手のひらの大きなポスターが貼ってあるのを目にしました。教員達は,自
分が指導などで良くがんばったなと思う時,自分を労うために,その大きな手
に肩を押し付けて,擬似patしてもらうのであるとのことでした。教員にも,
褒め言葉や労いの言葉が必要にもかかわらず,教える者の理想としては,それ
を他に求めることはできないという悲哀が,洋の東西を問わないものであると
実感しました。お互いに労いの言葉をかけあうことは,現実には,高専教員間
でも,必ずしも多いとは言えません。すでに非常に多忙な状況の中で,さらに
新しい試み(英語スピーチコンテストに限らず)に取り組む同僚には,成果の
如何を問わず,労いを言葉で表現することが必要ではないでしょうか。メンタ
ルヘルス維持のためにも,教員の心情への配慮は,心に留めておきたい点です。

3 大会と審査:
 大学生,高校生,中学生の大会でそれぞれ審査を担当する機会がありますが,
最も聞き応えがあるのは,高校生のスピーチコンテストです。指導者の指導効
果が,スピーカーの持ち味に活かされて,優れたスピーチとなっている例が高
校生の大会に多い様です。高校生対象の英語スピーチコンテストは,地方の大
会から全国大会まで,様々の主催団体によって数多くあります。高専低学年生
もその様な大会に参加して,優れた結果を出しています。
 また,指導する立場から見ると,審査員の審査経験が結果に影響していると
感じる場合があります。審査経験の少ない審査員の場合は,表面的でも分かり
やすいスピーチなら,独自性が不足していても,高得点をつける傾向がありま
す。経験豊かで優秀な審査員は,ステレオタイプな内容ではなく,深さや創造
性に注目して,妥当な審査結果をもたらします。審査員の人数と選定を慎重に
行なうことが,コンテストの運営に重要なのは言うまでもありません。

4 指導について:
 スピーチは,描写で終始しても良いナレーションとは異なります。スピーチ
は,「スピーカーが何を伝えたいのか」を聴衆に示す必要があるからです。
スピーチの指導には,原稿段階とperformance段階の2段階があります。原稿
指導は,writingの指導ということになります。中でもTESL における writing
の指導を利用することとdelivery指導への配慮が必要だと思います。なおス
ピーチはあくまでも学生本人の作品であることを常に留意して指導することが
大切です。

5 TESL における writingの指導理論例:
 以下はwritingの指導理論なので,スピーチの原稿指導にそのまま取り入れ
ているのではありません。しかしwritingの指導理論を知っておくことは,ス
ピーチの原稿指導をする場合に,非常に有効です。実際にどれくらいとりいれ
るべきかは,学生のレベルや事例,また学生がそれを望むかどうかにもよりま
す。
 Ferris & Hedgecock(1998)は,「書くことは,読み手と書き手のコミュニケー
ションである。」としています。これは「書き手中心のライティング」ではな
く,「読み手中心のライティング」への指導をする理論です。書き手の考えを,
読み手に対して,説得力をもって理論的な内容で書くよう訓練します。その方
法として,「発想の組み立て訓練」「情報と発想の組み立て訓練」「説得力あ
る構成の訓練」「文の改訂訓練」など具体的にそれぞれの技術を指導します。
つまり,「形,様式を中心に考えるform-based writing」に対して,「伝える
べき内容に焦点をあてたcontent-based writing」という概念に基づいていま
す。指導者は,学習者に「なぜそう思うのか,文章の整合性,一貫性に問題は
ないのか。」を問いかけ,学習者は自分で考えて,文章を改訂し提出し,また
批評を受けて,さらに自分で改訂します。例えば,free writing, brain
storming, listing, loop writing, clustering/branching, cubingなど興味
深い技術指導も示されています。(参照;Ferris,D. & Hedgecock, J.
(1998). Teaching ESL composition: purpose. process and practice.
Mahawha: Lawrence Erlbaum Association Publishers)

6 スピーチのdelivery:
 スピーチは,オープニングが非常に重要です。オープニングの内容と表現方
法は,スピーチ全体の成功に多大な影響を与えます。さらに,eye contact,
voice inflection,gestures,posturesといったphysical messageとの相乗効
果で,印象的なスピーチが生まれることを,学生に説明しておくことが必要で
す。優れた原稿でも,上記の要素に配慮がないと,原稿の長所が十分活かされ
ないスピーチとなります。

7 環境作り:
 英語でスピーチを行い,さらにコンテストで審査されるという経験を,自分
から望む学生は,それだけでも非常に学習動機が高いといえます。英語のみな
らずいろいろな外国語に関心を持つ学生を増やす環境作りのために,イング
リッシュワークショップを行なっています。「世界英語」の観点から世界各国
出身のゲストとの多様なコミュニケーションを体験する機会となっています。
様々な形態のソーシャルインターラクションが可能です。イングリッシュワー
クショップは,1993年度から10数年間,毎年2~3回実施してきましたので,
2006年12月現在で33回となりました。英語部の学生が中心となって運営し,学
年学科の枠のない全学生希望者対象で行なわれています。石川高専の留学生も
参加しています。参加学生数は回により10名から50名です。開催例:第31回
2006年7月学生50名,ゲスト14名(アメリカ,ウガンダ)。

8 結び:
 教員になった頃,教師に求められるのは,persistence,pursuit,patience,
trustであると聞かされた記憶があります。「粘り強さを持つこと,目的を果
たそうと努力し,実行(続行)すること,忍耐力を持つこと,信頼し,信頼され
ること」と解釈しています。上記を忘れずに学生の指導にあたりたいものです。
以上,具体性に欠け,英語スピーチコンテスト指導のTipsという編集長のテー
マとしては,必ずしも的を射たものではなかったかもしれません。よもやま話
としてお読みいただければ幸いです。


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編集後記

 2007年に入って最初のCOCET通信をお届けします。
 14号は、「新人特集」として、初めて発表された大和先生と藤井先生のお
二人に、私達がいつも頭を悩ませている研究資金については、神谷先生に、ま
た、スピーチコンテストの指導のノウハウについては、太田先生に、お願いし
ました。4人の先生方の文章を読ませていただき、「ハッとコセット、ホッと
コセット」という言葉を思い出しました。COCETに参加することで、啓発
されたり、また、暖かく受容されたり(したり)して、また、日々の仕事に頑
張ろうという気持ちになれます。ご多忙のところ、快く執筆をお引き受け下
さった先生方には、心より感謝申し上げます。
 13号に引き続き、皆様には悲しいお知らせをしなければなりません。すで
にメーリングリストでご存知かと思いますが、宮城高専の千葉元信先生(元
COCET理事)が、昨年12月26日にご逝去なさいました。先生の早すぎ
るご逝去を悼み、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 JABEEや認証評価、統合・再編など、高専教員には、ますます多忙な一
年になりそうですが、皆様、自分の研究室に大きな手のポスターを貼り、落ち
込んだ時には,その大きな手に肩を押し付けて,擬似patしてもらいましょう。

                          (編集 青山晶子)

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 次号は、会員の著書について取上げたいと思います。ご自身の著書、あるい
は、お知り合いの高専の先生の著書についての情報(内容、出版に至った経緯、
執筆に際しての苦労など)を募集していますので、aoyama@toyama-nct.ac.jp
までお知らせいただければ幸いです。

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