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COCET通信                 第19号 ('10.03.11)
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目 次

(1)第2回COCET学会賞に思うこと
                   石川工業高等専門学校 太田伸子

(2)第3回プレゼンテーションコンテスト総括
             香川高等専門学校・詫間キャンパス 森 和憲
                     (第3回プレコン実行委員長)

(3)コミュニケーションの実現
         石川工業高等専門学校 電子情報工学科5年 加藤聡一郎
        (第3回プレゼンテーションコンテストスピーチ部門優勝者)

(4)プレコンに参加して
             松江工業高等専門学校 情報学科5年  濱田一喜
                     環境・建設工学科5年 坂本 諭
                     情報工学科4年    寺田早織
 (第3回プレゼンテーションコンテストプレゼンテーション部門優勝チーム)

(5)オンラインコーパスCOCAの紹介:実例を交えて
                    岐阜工業高等専門学校 菅原 崇

 編集後記
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(1)第2回COCET学会賞に思うこと
                    石川工業高等専門学校 太田伸子

1.はじめに
 初秋9月の京都で開催されました第33回COCET研究大会で「第2回COCET学会賞」受賞という栄誉を賜わり,大変光栄に思います。拙稿「多様なソーシャルインターラクションによる英語表現力育成の試み」(研究論集第28号2009年3月)に賞をいただきましたことは,文字通り,思いがけない驚きでした。COCETの皆様から大きな「励まし」をいただきまして,大変有難く存じます。心から感謝致します。

2.赴任の頃
 さて,私が高専に赴任した1993年当時はインターネットもウェブもe-mailも現在ほど普及しておらず,聞きなれない新しい言葉でした。高専学内LANも整備途上の時期で,教員室にパソコンを置いていない教員も珍しくありませんでした。高専は最近,物理的な環境だけでなく,仕組みや体制が大きく変化しましたが,1993年ごろは状況が現在と大分異なっていました。
 英語教育に関しては,当時の高専は時の流れ方が特に違うという感じで,平成の世でありながら全体的に昭和50年代の世界に戻った様な印象でした。高校の英語教育では「ALTとのティームティーチング(TA)導入」開始からすでに10数年経ち,また学習指導要領の改訂により,「オーラルコミュニケーションA,B,C」という科目も始まって,英語教育における変革が浸透していました。しかし高専に赴任してみると,TAやオーラルコミュニケーションという用語の説明から始めることとなり,さらに中には「大学入試センター試験」のことをまだ「共通一次試験」と言う方もおられました。教育に関する日常的な用語,概念,社会変化への対応などはどの教育現場でも同じだと思っていましたので,それらを共有してもらえないということに焦燥感を持ちました。そこで当時の私は「高専の英語教育を,高専の特性を尊重しつつ,高専以外の英語教育環境の流れに遅れないものにすること」を決意したのでした。もとより私どもは微力な存在であり,今思うとやや大げさな使命感でした。幸い,高専の英語教育環境は非常に改善されましたが,この気持ちはこれからも持ち続けたいと思います。

3.COCETへの思い
 ところで,高専について,「大学入試もないのんびりした学校」という固定観念がまだ社会にある様です。高専の実情を伝えるために,高専の英語教員がいかに熱心に教育に取り組み,かつ同時に研究業績の期待にも応え,様々な事柄にも対応していて,いかに多忙であるかを事あるごとに説明することにしています。COCETの発展はその意味で象徴的です。研究大会やコンテスト運営への関係各位の献身的な活動と成果は本当にすばらしく,その熱意に心から敬意を表する次第です。
 2010年1月に第3回全国高専英語プレゼンテーションコンテストが開催され,石川高専の加藤聡一郎君が,2008年のプレゼン部門に続き,スピーチ部門で優勝することができました。加藤君の向上心とたゆまぬ努力を大いに誇りに思います。2009年度は私たちにとって,大変思い出に残る年となりました。学生,教員ともどもこの様な幸せを味わうことができるのも,多忙な平常業務に加えて,大会運営にご尽力下さる熱意溢れるCOCETの皆様のお蔭です。

4.おわりに
 今や社会状況が刻々と変化していることを実感します。かつては高専の強みとされていたことが変化してきました。県内のどの地区からでも入学できたのが高専の特徴でしたが,石川県では数年前から県立高校も全県1区となりました。また,高校授業料無償化も始まりそうです。さらに,例えば20名の生徒に教員2人で行う授業と比べると,高専40名の学生に教員1名の英語授業のクラスサイズは,必ずしも少人数教育とはいえません。また,英語は,EGP(English for General Purposes)やESP(English for Specific Purposes)からESC(English for Specific Cultures),さらに EIL(English as an International Language)(矢野安剛 2009)へと展開する時代であるとのことです。如何にして高専の持ち味を活かしつつ,社会の変化に対応していくべきかを考えて,よりよい実践を行うことが求められていると思います。弛まぬ努力が高専の名声を維持していくのでしょう。
 今回の受賞を励みに今後とも鋭意努力する所存です。どうもありがとうございました。御礼申し上げます。
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(2)第3回全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテスト総括
  第3回プレコン実行委員長 香川高等専門学校・詫間キャンパス 森 和憲

 第3回全国高等専門学校英語プレゼンテーションコンテストを、会員の皆様方のおかげで無事大会を終了させることが出来ました。この場を借りてあらためて御礼申し上げます。すでにご存知だとは思いますが、ここに大会結果を発表します。

(敬称略)
スピーチの部
1位 石川高専 加藤聡一郎
2位 福井高専 浦田ゆきお
3位 佐世保高専 山口孝樹
プレゼンテーションの部
1位 松江高専 (濱田一喜、坂本 諭、寺田早織)
2位 豊田高専(稲葉美名緒、石田明久、近藤 潤)
3位 津山高専(先原直樹、飯田有佳子、大谷 舞)
特別賞 香川高等(詫間)(岡崎洋平、清水竜樹、堀瀬友貴)

 3回目ということで大会の運営も軌道に乗り、またベテランぞろいの実行委員の方々のご協力も得られまして、スムーズに大会運営を行うことが出来ました。審査員の一人が当日に大怪我を負って来ることができないというハプニングがありましたが、それもなんとか乗り越えることが出来ました。実行委員長として至らぬ点は多々あったかと思いますが、みなさんの寛大な心でお許しいただけたと思います。ありがとうございました。
 内容に関しましては、年々レベルアップし、本選出場者の発表はどれも甲乙つけがたいものがありました。その一方で予選を含めて全体的にはレベルに二極分化が出始めていると思いました。学生を低学年からスピーチ部門で鍛えて、高学年でプレゼンテーションに転向させている学校や、毎年応募をしてスキルの蓄積している学校は強かったように思えます。プレゼンの部への出場は25校と半分以下なので、まだ応募したことのない学校はぜひ第4回大会にチャレンジをしてみてください。最初の一歩を踏み出すのは大変ですが、たとえ本選に出場できなくとも、そこから得られるものは学生にとっても、また教員にとっても大きいと思います。
 さて、今年度は、機構の関心も高く、初めて林理事長がご出席くださいました。また小田理事、木谷理事、大槻事務局長そして6名の校長先生もお見えになりました。『国立高専だより』の「四大コンテスト実施結果」の中にも当コンテストの結果が取り上げられ、プレコン、プロコン、デザコンと同レベルの大会としてプレコンが認知されるようになったと思います。
 次回は長野高専が主管となり、1月29日、30日に今年度と同様の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されます。ふるってご応募ください。また大会運営にあたりまして、会員の皆様のご協力のほどよろしくお願い申し上げます。 *コンテストの結果は、プレコンサイト(http://cocet.org/precon/)でご覧いただくことができます。また、すべてのスピーチ、プレゼンのスクリプトとビデオもネット上(http://cocet.org/precon/2009/videotitle.htm)で見ることができます。
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(3)コミュニケーションの実現
        石川工業高等専門学校 電子情報工学科5年 加藤聡一郎
        (第3回プレゼンテーションコンテストスピーチ部門優勝者)

 卒業式が近づくにつれ、1年間のアメリカ留学と5年間の高専生活について振り返ることが多くなりました。自分がどのように成長したかを考えるなかで、「コミュニケーション」は僕の大きなテーマなのだと思いました。自分の納得できるコミュニケーションを実現すること。それはこの6年間でずっと課題になってきたように思います。
 アメリカに行きたいと考えた中学時代、はっきりと覚えているのは、映画などを字幕で鑑賞するときに、俳優の英語に耳を傾けても、それが日本語のように感じることができず、とても歯がゆかったことです。映画のストーリーに共感することがとても多く、そのストーリーと自分の理解の間に、言語という壁があるのを悔しく思っていました。
 アメリカでの体験は僕のその後の人生を大きく変えました。言語を学ぶということは、かなりの努力と時間を必要とするということを知り、ずっと終わりのない努力なのだと痛感しました。しかし同時に、自分の思いを伝える努力をするということにとても魅力を感じました。ホストファミリーが他人から家族へゆっくり変わっていく過程、そして違う言語を話す人々が自分の生活の中でかけがえのない友人となっていく日々を体験して、考えや気持ちを互いに伝え合う努力というものに大きな価値を見出しました。
 帰国後、高専生活のなかで、プレゼンテーションコンテストは自分が成長する大きなチャンスとなりました。考えを人に伝えるという日々の努力を、プレゼンテーションとして具体化し、最善を尽くすことがこのコンテストの目的です。才能溢れる先輩達と毎日学校に残り、何度も原稿を作り直し、自分達の限界に挑戦しました。そんな中で自分が感じたのは、自分達3人はこのプレゼンテーションの内容について、本当に熱い思いがあるということです。自分達の努力は、観衆の理解を自分達のリアルな考えと思いにどこまで近づけられるかの挑戦であったと思います。
 高専最後の年にスピーチコンテストに出場しようという考えは、とても自然なことでした。この6年間で僕がコミュニケーションについて、先生方や先輩方、そして自分の毎日の生活から学んだことを一つの形にして、それを多くの人の前で発表することは、教わるだけに終わらない学習となり、また一つのコミュニケーションの形になると期待しました。
 スピーチは一人が自分の考えについて述べる行為です。しかし、このコンテストでは、自分の考えを、自分の言葉で、自分の口から発することで、そのスピーチが観衆との「コミュニケーション」となることを目指しました。優勝は、自分の考えが観衆に伝わった証、自分が目指したコミュニケーションの実現の証なのだと感じました。
 卒業後も、コンテストでの体験を活かし、コミュニケーションという努力と毎日向き合っていくことと思います。学習と成長の機会を与えてくださった先生方とコンテスト主催者の方々に感謝いたします。
*加藤総一郎君は、第1回全国高専英語プレゼンテーションコンテストプレゼンテーション部門(タイトル:Mass Customization and the Technical Engineer、メンバー:加藤聡一郎,南さくら,近江望美)で優勝、今回のスピーチ部門(タイトル: F.Y.I. : For Your Information)優勝で、プレゼンテーションコンテスト2冠を達成されました。
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(3)プレコンに参加して
   第3回プレゼンテーションコンテストプレゼンテーション部門優勝チーム
       松江工業高等専門学校    情報学科5年     濱田一喜
                     環境・建設工学科5年 坂本 諭
                     情報工学科4年    寺田早織

 今大会では、3年連続の濱田(5年)、2年連続の坂本(5年)、そして初出場の寺田(4年)という、バランスのとれたチームとなりました。
 我々松江高専がどの大会でも常に気をつけていることは、チームワークです。我々のチームには留学経験がある者は一人もおらず、個人で見た場合の能力では他のチームに劣る部分があったと思います。いかにそれを感じさせず、チームとしてカバーしあい、より印象的で、より個性的なチームにするか、それが私たちのチームとしての課題でした。
 また、我々は常にプレゼンテーションを楽しもうとしました。これは、英語やプレゼンに関して様々な面でご指導頂いたパトリシア・マロー先生の教えです。ふざけてやったり、いい加減にしたりするのではなく、すべてをやりきった上で達成感を味わうという意味です。何かを訴える時はおもいっきり意見を出して訴え、笑いをとる時も(実際に笑いがとれていたかはわかりませんが)必死にやりきります。この一生懸命さを出すことが、会場にいるすべての人と一体になることに繋がるのではないでしょうか。
 これらの努力が功を奏してか、松江は二年連続で優勝することができました。濱田と坂本は今大会が最後となり、来年に残るのは4年の寺田のみとなりましたが、後輩に何か残せるものがあったのならば、非常に価値のある大会になったのではないかと思います。
 最後に、高専生に足りないと言われている英語力を伸ばす場を与えて下さり、また他高専との交流ができる貴重な場を与えてくださった方々に感謝申し上げます。
P.S.
初めてのプレコン(寺田)
 プレコンの会場は英語好きばかり!留学経験をもつ人も多く、私にとっては会場の雰囲気そのものが新鮮でした。本番は緊張しましたが、それ以上に楽しく発表をすることができました。本番の発表はもちろん、準備の過程もとても勉強になりました。このプレコンで痛感したことは自分の英語力が低いことです。これからも頑張って勉強し、もっと英語力をアップさせたいと思います。最後に、濱田さん、坂本さん、ご指導を頂いたマロー先生、服部先生、本当にありがとうございました。

*松江高専チームは、昨年の第2回のプレゼンテーション部門優勝(タイトル:An Engineering Odyssey、メンバー:林紀子・濱田一喜・坂本 諭)に続き、今回の優勝(タイトル:Dilemma!)で、プレゼンテーション部門連覇を達成されました。
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(4)オンラインコーパスCOCAの紹介:実例を交えて
                    岐阜工業高等専門学校 菅原 崇

 「この前『プリティ・ウーマン』って映画見たんだけれど、“pretty”のあとに “boy”とか“man”が来ることってあるの?」、こんな質問を学生からされたとき、英語教員はどのように解答すべきか。本稿はコーパスを使ってこの疑問に答えていきたい。
 おそらく英語教員の中で「コーパス」という用語を知らないものはいないだろう。しかし、実際コーパスに触れたことのあるものは教員といえども多くはない。これは「コーパス=高価」や「コーパス=コンピュータを使う操作が難しいもの」といったコンピュータやコーパスに対するネガティブなイメージが原因であろう。
 そこで今回筆者は「無料」で「操作が簡単」なオンラインコーパス COCA(Corpus Of Contemporary American English) を紹介する。
 COCAはさまざまなジャンルから集めた現代英語のテキスト(40億語)からなる世界最大級の英語オンラインコーパスである。無料で公開しており、登録すれば(登録も無料)使用制限なく使うことができる。
 先ほどの答えは、実際に本コーパスを使って確かめてもらいたい。以下の手順を踏めば、形容詞“pretty”が修飾しやすい名詞がその頻度とともに現れる。

1.先のURLにジャンプ
2.「WORD(S)」とある空欄に以下のように入力し、検索スタート pretty.[j*][nn*](.[j*]は「prettyは形容詞」、[nn*]は「次に来る語は名詞に限る」の意味)(.[j*]と[nn*]の間には必ずスペースを空けること)
 上記検索の結果、我々教員は「“pretty boy”なんかは言えなくはないけれど、“pretty woman”や“pretty girl”に比べると全然使わない。さらに言うと“pretty man”はほとんど使わない。つまり形容詞“pretty”が人を修飾する場合、女性か子どもを取ることが一般的なんだ」と、学生に胸を張って答えられるはずである。
 今回の質問は「“pretty”は「かわいい」と訳すから“man”は修飾しにくいだろう」といった「勘」や「経験則」でも対応できるかもしれない。しかし、学生の質問は十人十色、難問ぞろいであることは全ての教員が経験していることである。故に、彼らの疑問に「勘」や「経験則」のみで答えるのではあまりに頼りない。ネイティブスピーカーに質問するという方法もあるが接触の機会は限られる。そんなとき「コーパス」が解答のヒントを与えてくれるかもしれないことを本稿の読者は心に留めおいてもらいたい。
------------------------------------------------------------------ 編集後記
 3月に入り、会員の皆様にはお忙しい毎日をお過ごしのことと思います。今年度最後となるCOCET通信第19号をお届けいたします。
 今号は、全国プレゼンテーションコンテストをメインに編集いたしました。各部門優勝学生の指導に当たられました、石川高専の太田先生と松江高専の服部先生にお願いし、COCET通信では初めて、学生の声を掲載することができました。年度末の大変お忙しい時期にも関わらずご協力下さいました両先生と学生の皆さんには、心より御礼申し上げます。
 すでに前号では報告済みですが、第2回COCET学会賞は、太田伸子先生(石川高専)が受賞されました。ご指導に当たってこられた学生のプレコン2冠達成もあり、二重のお喜びであったと思います。本当におめでとうございます。
 菅原先生(岐阜高専)にお願いしました授業や研究に役立つ情報コーナーでは、前号の土屋先生(岐阜高専)に引き続き、コーパスの活用について、貴重な情報をお寄せいただきました。私も早速 handsome.[j*] [nn*]で検索してみましたら、1位がhandsome man、2位がhandsome face、3位はhandsome woman(80)で、4位がhandsome boyでした!無料というのも嬉しいです。皆様も是非一度お試しになってはいかがでしょうか。
 来年度は、COCET研究大会が初めて北海道で開催されます。たくさんの会員の皆様のご参加をお待ちしております。
                         (編集 青山晶子)

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