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COCET通信                 第18号 ('09.12.8)

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COCET通信                 第18号 ('09.12.8) ===============================================================
目次

(1)第33回COCET研究大会報告
          都城工業高等専門学校 崎山強(COCET副会長)

(2)21年目のリスタート -熊本高等専門学校発足とCOCET京都大会-
          熊本高等専門学校八代キャンパス 宇ノ木 寛文

(3)COCET研究大会に参加して
                長岡工業高等専門学校 土田 泰子

(4)英語教育研究の再考 -コーパスを活用した学習内容の見直し-
                岐阜工業高等専門学校 土屋 知洋

編集後記
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(1)第33回COCET研究大会報告
          都城工業高等専門学校 崎山 強(COCET副会長)

 第33回研究大会は9月12(土)、13日(日)の両日、京都府中小企業会館で開催されました。今年初めての試み、受付開始前10:30より行われた情報交換会は、私達が高専の教育現場で即実行出来る有意義なものでありました。今後、このような機会が設けられましたら、ちょっと早起きして参加してみて下さい。
 午後の総会で、亀山会長より「来年度の第34回大会は北海道で開催されます」とアナウンスされると、「おおっ!」というどよめきが。研究大会が、いよいよ海を渡ります。初秋近づく、美しい北海道です。今年以上に多くの方に御参加戴きたいですね。午後の研究発表、そして翌日の発表も、どの高専でも活用できる文法教育からWEB教材を活用した教育まで。実に興味をかきたてられる素晴らしい発表ばかりでした。どの発表に於いても、「現代の高専生が何を求めているか」をつねに観察・研究しておられる先生方の情熱を感じます。
 話は前後しますが、恒例の懇親会のことです。コセットならではのアットホームな雰囲気に加えて、豊富な美味に驚かれませんでしたでしょうか。筆者のすぐ傍にいらっしゃいます某女性教員は、「あれも美味しかったけど、こちらもプリプリして美味しかったわよ」とおっしゃいますので、恐る恐る(?過去の参宮橋物語*のせいなのです)箸をつけますと、どれをとっても実に美味しい。これ程テーブルに盛ってあると食べれません。「残すのは勿体ない」ということで、近くのコンビニにタッパーを買いに行って戴きました。こんな懇親会は何回やってもいいですね!
 この懇親会で御紹介しましたように、このコセットの先生方が精力的に取組まれている事業があります。茨城高専の三好先生による、高専機構による英語関連事業の取組や、北九州高専の大谷先生による国際ロボカップの学生引率などがあります。
 その他、先生方が多くのプロジェクトを抱えていらっしゃることに驚くばかりです。亀山会長が申しましたように、コセットの仲間同士、お互い連携を取り、素晴らしい高専生を世界に紹介したいものですね。
 12日の田尻先生の特別講演は素晴らしかったですね。「学生の意欲を引き出す授業作りの視点」という演題で色々御教授下さいました。学生の目を輝やかす授業をする為に、教師は努力せねばならないと教えて戴きました。午後の質疑応答までして戴き、とても有意義な時間をすごせたと思います。
 平成20年度全国高等専門学校英語教育学会『研究論集』第28号から石川高専の太田伸子先生による「多様なソーシャルインターラクションによる英語表現力育成の試み」に対して平成20年度学会賞が贈られました。おめでとうございます。
 さて先述しましたように、第34回研究大会は9月18(土)、20日(日)の両日、札幌市教育文化会館で開催されます。また、初秋の北海道でお目にかかりましょう。

*註
 「参宮橋物語」:夜8時をとっくに過ぎていたであろう。参宮橋近くのとある店に気のあう仲間が三々五々集まった。鍋を囲み、団欒にふける。筆者の隣にかけていた某姫は「これ美味しいわよ!」といって皿に盛ってくださる。この優しさに心温まる。ところが薄暗い店内は老人の目には品物が見えにくい。しかも、この店の魚は美味しいが異常に堅い。筆者は姫が盛ってくれた皿の方ではなく、傍にあった粗(魚の骨)ばかりに、黙々と箸をつけていたのである。今はむかし、筆者が「前期高齢期」にさしかかった頃の物語である。
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(2)21年目のリスタート -熊本高等専門学校発足とCOCET京都大会-
          熊本高等専門学校八代キャンパス 宇ノ木 寛文

 去る9月12、13日の両日に行われた第33回全国高等専門学校英語教育学会京都大会において、本キャンパスにおける取り組み(専攻科生に対するTOEIC夏季集中講座)について発表する機会を与えて頂きました。様々な便宜を図って頂いた亀山会長を始めとするスタッフの先生方には心から感謝申し上げる次第です。改めて御礼申し上げます。
 実は数年前の九州地区高専英語弁論大会前日の情報交換会(夜の懇親会だったでしょうか?そう言えば焼酎が目の前にあったような!?)で本校の取り組みが話題に上った際に、都城高専の崎山先生に「そのようなことをやっていたのなら、なぜCOCETで発表しなかったんですか!」と、あの力強くも温かい口調で「ご指導」を頂いたことがありました。20年近く高専に奉職しておりながらそのようなことに思いの至らない不明を恥じながら「そうか。では次の機会には是非」と密かに?心に誓ったものでしたが、その時のことが頭にあり、今回参加させていただくこととなりました。高専英語教員という背景を共有する者が集まった会だけあり、「何とも言えない」共通理解に基づいた穏やかな空気の中に進められる会の雰囲気に心地よい安心感のようなものを覚えながら2日間を過させて頂きました。きっかけを与えて頂いた崎山先生には本当に感謝しています。
 ところで、「本キャンパス」と慣れない書き方をしておりますが、10月1日の熊本高等専門学校発足以降、八代キャンパスとしての活動が公式に始まっています。某広告代理店と組んでのTVCMを含めた広報戦略により県内ではその認知度が飛躍的に上がっています。年度途中ですので、現場レベルでの実質的な変化はまだそれほど大きく生じておりませんが、新年度になりますと再編された新しい3学科の第一期生120余名が入学してまいります。学科が一つ減ったものの幸い英語科のスタッフ数に変更がないことで、よりきめ細かい指導ができるようになるのでは、と期待しておりますが、如何様になりますでしょうか。また、今後は熊本キャンパス(旧熊本電波高専)との交流もより密になっていきます。英語教育の分野でどのような連携ができるか、期待と不安が入り混じっておりますが、例えば2つのキャンパスをまたいだ共同研究のような形でCOCETに報告を行うことができれば、などとも思っております。新たな校名、新たな学科、新たな学生の新たな気持ちに応えることのできるよう全力で臨みたい、と古参兵も新たな気持ちでおります。その意味で21年目の初参加はやはりとてもいい契機だったなと改めて感じております。
 今後ともご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
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(3)COCET研究大会に参加して
                長岡工業高等専門学校 土田 泰子

 高専に赴任して3年目になりますが、今回が初めての参加でした。せっかく研究大会に参加するのであれば何か発表をしたいと考え、これまでどこで発表すべきか悩んでいた1つのテーマを紹介することにしました。
 私が第33回研究大会で発表した英単語学習ソフトウェア開発に関する研究は、授業中の学生との雑談から始まったものでした。長岡高専にはCALL環境が整っており、PCを活用した英語教育が実践されています。その日は2年生の授業でしたが、授業の開始前のかなり早い時間から学生がPCに向かっていました。聞けば英語ではなくプログラミングの科目での課題をやっているとのこと。どんなことを学んでいるのかを聞きながら試作したゲームのプログラムを見せてもらい、「いろいろ出来そうだね」といった会話をしたような気がします。それから数週間後、学生からメールが来ました。そこに添付されていたのは、C言語でプログラミングされた英単語学習ソフトウェアでした。授業時に行う単語テストに対応すべく、単語帳をデータ化し、出題範囲に合わせて選択式と文字入力式によるクイズができるように工夫されたものでした。私に送る一方でクラスの学生にも使ってみてもらったようです。その後、より使いやすいように改善するためのやり取りが行われ、少しずつソフトウェアはバージョンアップしていきました。
 学年が進む中で、同じ単語のデータベースを転用した、別の形の学習ソフトウェアも作成しました。こちらはPCのデスクトップ上に単語と日本語訳をランダムで表示するというものです。PCに向かう時間が比較的長いという自分たちの生活スタイルを考慮し、効率よく学習するための工夫として生み出されたソフトウェアは、これまでの取り組みと無関係にできたものではないでしょう。
 私がこれまで研究の中心としてきたのはグラフィックメディア、特にポスターによるコミュニケーションですが、こちらはポスターが人を行動に導くメカニズムに注目するもので、英語教育とは結びつかないように思えるものです。しかし表面的なグラフィックデザインという部分の下には、認知から記憶、行動へと繋がるシステムが存在します。このシステムは学習者が情報を認知し習得する過程に重なるものであり、その過程の中でも特に語彙の記憶という部分に焦点をあてて工夫を重ねる学生の取り組みに、私は大きな刺激を受けました。ポスターの宣伝メッセージは、記憶されなければ受容者を行動へと導くことができません。ここに、それまでの研究と教育の接点が見出されたのです。
 プログラミングを扱った内容の発表は、英語教育と専門教育が同時に行われる高専ならではのものであると思い、プログラムを作成した学生から開発の経緯などをインタビューし、発表に至りました。初参加にもかかわらず貴重な機会を与えてくださった本学会に、そして発表に協力してくださった皆さんに厚く御礼申し上げます。
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(4)英語教育研究の再考 ― コーパスを活用した学習内容の見直し ―
                 岐阜工業高等専門学校  土屋知洋

1.はじめに
 “英語教育研究”という言葉から、多くは「効率良く英語学習できる授業研究」「リーディング・ライティングなど各英語能力を伸ばす研究」「教員・学生(生徒)の英語学習上の不安因子軽減の研究」など“方法”に焦点を当てた実践的なものを思い浮かべると思う。事実、私が初めて参加した第33回全国高専英語教育学会の研究発表も実践的な“方法”に関するものが多かった。確かに、学生と直接接する授業が大切であり、その授業を改善していくことは我々教員にとって至上命令ともいえるものであることは理解できる。しかし、“英語教育研究”といった場合、私には根本的な教える、「“内容”自体の研究」がもっとなされてもよいのではないかと強く感じるのです。

2.具体的な問題
 恩師、関西学院大学大学院 八木克正教授の著書『世界に通用しない英語-あなたの教室英語、大丈夫?』(開拓社, 2007)で、「ジェーンとメアリーとではどちらが背が高いですか」を英作文させる調査を高校2・3年生・大学院生・現職に対して行った結果1)、Which is taller, Jane or Mary?とする数が圧倒的に多く(正しい英語はWho is taller, Jane or Mary?)、英語母語話者が運用するものとは異なった内容が教育現場で教えられていることが浮き彫りになった。このような現代英語を正確に反映していない“内容”は、市販の問題集、特に教員自らが作成したプリントに散見される。誤った認識・知識を学生に教えていたのでは、いくら授業改善をめざし素晴らしい授業を作り上げても、その努力・成果は半減、時に無になってしまうのではないかと危惧する。

3.内容研究の方法
 では、どのように“内容”の良し悪しを研究する(調べる)のか。現在、ウェッブの発達により生きた英語の資料(ニュースや映画のスクリプトなど)を容易に入手できる。中でも、小学館が提供している小学館コーパスネットワーク2) には1億語のイギリス英語のデータが納められたBNCや、アメリカ・オーストラリア英語なども含む5,600万語のWordbanksOnlineといった信頼できるデータベースがある。これらのデータを上手く活用することで、英語母語話者が運用する正確な英語表現を学生に教えることができる。また、英作文でも教員の主観ではなく、客観的に表現の是非を判断する基準として活用することもでき、更には、類義語(表現)の使い分けなど、授業をより豊かにする内容を見つけ出せるなど、活用方法は無限に広がっていると思う。このように、コーパスを活用することでより充実した“内容”の授業が展開できると考える。

4.おわりに
 紙面の関係上、具体的な研究方法は提示できなかったが、授業改善のために“内容”自体の見直しの重要性、そしてその手段としてコーパスの活用を提案した。“内容”と“方法”という両輪がそろって、初めて我々英語教員の理想とする授業が生まれるのではないかと思う。そして、その両輪を大切にして研究を推進していく組織が、この全国高専英語教育学会であればと思う。

注1) 高校2・3年生の調査は執筆者が前任校で個人的に調査。200名弱の生徒に同様の質問を行ったが8割弱がwhichを選択し、「そのように中学・塾で習った」と回答。帰国子女は全員がwhoで回答。
2) 小学館コーパスネットワークはライセンス料のみで自由に利用できる。
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編集後記
 インフルエンザが猛威を振るい続ける中、気がつけば、はや師走です。皆様にはご多忙の毎日をお過ごしのことと思います。今年度2号目となるCOCET通信第18号をお届けいたします。
 今号は、京都大会を中心に編集いたしました。崎山先生の楽しい大会報告と、COCETデビューということで、初めて大会に参加された宇ノ木先生と土田先生のお2人の先生方にご執筆いただきました。また、大会初日の午前中に設けられた「情報交換会」を受け、COCET通信でも授業や研究に役立つ情報を共有するためのお手伝いができればと、今回は土屋先生にご執筆いただきました。「ハッとCOCET、ホッとCOCET」と感じて頂ければ幸いです。
 次号は、1月の第3回プレゼンテーションコンテストを中心にお届けする予定です。
 皆様、どうぞよいお年を。
              (編集 青山晶子)
山晶子)