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COCET通信        第8号 (2003.8.4)

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COCET通信        第8号 (2003.8.4)
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目  次

<巻頭言>全国高等専門学校英語教育学会会員の皆様へ
福井高専 小寺光雄(COCET会長)

<特別寄稿>
ご挨拶にかえて~書店で見た英語の本のタイトルから
宮城高専校長 四ツ柳隆夫(国専協会長)

平成13年度・14年度の国専協プロジェクトのお礼にかえて
                         長野高専  中村護光

<特集>コミュニケーション能力とTOEIC

「先生」から「学習者」へ---コミュニケーション能力を養成する授業のために
                         北九州高専 大谷 浩
『TOEIC全員400点』は可能か?           岐阜高専  亀山太一

<英語科紹介>
松江高専英語科                  松江高専  飯島睦美
宇部高専英語科                  宇部高専  南 優次

事務局より

編集後記                    詫間電波高専 平岡禎一

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<巻頭言>全国高等専門学校英語教育学会会員の皆様へ
                    福井高専  小寺光雄(COCET会長)
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遅ればせながら就任の挨拶を一言申し上げます。

まず何よりも、平成13年度と14年度の2年間にわたって会長を務められた小澤
志郎先生をはじめ長野高専の先生方には本学会の事務局として精力的な仕事を
され、本当に感謝申し上げます。また、同時期に副会長を務められた中村俊昭
先生と亀山太一先生にも会長同様のご苦労をいただき心よりお礼申し上げます。

さて、はからずも小澤志朗先生の後を引き継ぎ第十代会長に就任したわけです
が、不安感を隠さずにはおられません。しかし、同じく新たに副会長を快くお
引き受けいただいた平岡禎一先生(詫間電波高専)と青山晶子先生(富山高
専)にはご協力をいただけるということで心強く感じ、この上なくありがたく
思っております。ここに至りましては、歴代の会長を初め多くの先輩諸氏が築
いてこられた本学会の伝統を守りつつ、本会がますます発展するよう精一杯の
努力をさせていただきたく思っております。

私がコセットの会員になったのは平成5年、公立の高等学校から現在の福井高
専に赴任した時です。同時に、それまで福井高専におられた大下邦幸先生(福
井大学教育地域科学部教授)が福井大学へ転任されたのに伴い、その後を引き
継いで理事をも務めてまいりました。コセットの研究大会は時代の流れと共に
徐々に規模も大きくなりましたが、雰囲気は当時とまったく変わっていないよ
うに感じます。私はコセットの持つ家庭的なあたたかい雰囲気が何よりも気に
入り、毎年欠かすことなく研究大会に参加し、そのたび毎に少しずつ自分が成
長してきたことを認識しております。このような学会を支える大役を得たこと
は至上の喜びであります。

ところで、今高専を取り巻く社会情勢は急速に変化しつつあります。いよいよ
高専の独立法人化が決定し、来年度(平成16年度)より全国に散らばる55
の高等専門学校がひとつの機構としてまとまり、新たな出発を余儀なくされて
おります。また、日本技術者教育認定機構(JABEE)の評価の重視に絡み、特
に英語科では学生の「国際社会で通用するコミュニケーション能力」の伸展を
目指して、きめ細かい対策が求められております。その他にも、これまでの研
究大会でも話題になった新教育課程の問題や高専入試でのヒアリング導入問題
などさまざまな課題があります。今こそ本学会の会員が団結して相互に意見交
換を行い、より良い高専英語教育の環境作りを推進していかなくてはならない
と思っております。

 最後になりましたが、福井高専の英語科の先生方には、心強いバックアップ
を得ることができ感謝の念に耐えません。また、理事の先生方や全国の会員の
皆様にも、一層のご援助とご協力をお願い申し上げまして、就任のご挨拶とさ
せていただきます。


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<特別寄稿>ご挨拶にかえて~書店で見た英語の本のタイトルから
                宮城高専校長 四ツ柳隆夫(国専協会長)
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 時々書店で語学の棚を見ることがある。最近の棚では、「英語の頭に変わる
本」、「英語は3秒で話せ」、「知ったら使いたくなる英語」、「英語で思っ
たことが話せる本」、「超右脳トレーニング(CD付き)3倍速で英語脳をつ
くる」などを見かけた。これらを見ながら、「音声」に注目した英語教育の流
れがあることに気がついた。

 まず、流暢な英語の音声とは対極にある話題を挙げる。あるときの国連総会
の合間に、各国の大使たちが歓談していたときのエピソードとして有名な話が
ある。英国大使が「いまや、英語は国際語である」と語ったときに、当時のソ
連大使グロムイコが、「いや違うよ!ブロークンイングリッシュが国際語で
しょう」と発言して大いにうけたというお話である。実際に国際的な交流の場
で、講演や討論に立ちあった経験からすると、まさにその通りであった。この
エピソードは、論理的情報を伝達する媒体としての言葉の機能のことをいって
いる。

言葉は、考えを伝える媒体・道具である一方で、論理的思考を可能とする媒体
であり道具である。通常、大脳生理学では、論理的思考は左脳が担当するとさ
れている。しかし、上に並べた本のタイトルによれば、効果的に英語脳をつく
るには3倍速で聞き流すCDが有効であるという。このことは、音楽の類いを
身につける手法を使って英語を身につける方法があることを主張している。右
脳は音楽脳ともいわれる。また、右脳は、我々のような技術者教育の立場から
は、創造力に繋がる着想脳(アイデアを思いつく脳)としての機能をもつこと
を重視している。その脳を使う方法は面白い。

統計データによると、高専の学生達の中学時代の英語能力は、彼らの理数学面
での能力に比べると、見劣りがするとされている。この場合の能力とは、試験
の点数であるから、英語に関する左脳論理能力の差ということになる。これは
本当であろうか。

自分のことで恐縮であるが、高校時代、私は語学、特に英語が苦手であった。
私の状態を見ていた高齢の英語教諭から、「君は英語が論理的な言語であるこ
とを理解していない。理屈で英語をやってみないか」と誘われた。やったこと
は、ワーズワースの難解なバラードをモデルとした徹底的な構文解析であった。
言葉の成り立ちの論理構成を自分で納得するまで掘り下げる作業であった。こ
れを毎週1回、半年くらい続けたように記憶している。つかみ所のない苦手意
識で凝り固まっていた理工系学生の目を覚ます上で、言語と論理の関係から切
り込んだこの荒療治は有効であった。

 最近の本の題名から受けた印象から、左右の脳の機能と英語教育の関係が気
になってこの感想を書いた。高専の学生が英語を道具としてやすやすと使いこ
なす能力を身につけるためには、技術者の命である右脳(着想脳・音楽脳)か
らアプローチする方法は、近道かもしれないと思い始めている。

すぐれた英語教育法の開発と貴会のご発展を期待して挨拶とします。


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<特別寄稿>
平成13年度・14年度の国専協プロジェクトのお礼にかえて
                         中村護光(長野高専)
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 この度、「コミュニケーション能力を主眼とした高専英語教育のありかた」
をテーマとしました国専協のプロジェクトが最終報告を作成し、全国の高専に
お届けすることができました。ここに至るまで、全国の高専の先生方、特にコ
セットの会員の先生方からは沢山の温かい励ましのお言葉と多大なご協力いた
だき大変有難うございました。

プロジェクトの成果は実行委員会を構成した関東信越地区高専の先生方の努力
の結集そのものであります。今回は、当番校の実行委員として、僭越ながらこ
の文を書かせていただいております。

最終報告書は昨年3月発行の高専生の基礎学力実態及び意識調査等の結果・分
析を載せた中間報告書を受けて、高専での英語教育のありかたを提案させてい
ただいたものです。日頃の私共の経験と実践、実行委員会での議論、全国教員
研究集会及びアンケートで寄せられたご意見等に基づいております。勿論ご提
案を致しましたからには私達自身、率先してその一つひとつの実現に向かって
努力しなくてはと、今更ながら責任をひしひしと感じております。ただし、実
行委員一同の願いは、報告書の提案はあくまでも、たたき台であって、その学
校、学生の事情に応じて違うもので、各学校に於いてはよりbetterで、有効な
方法が工夫され、その上でコセットの研究大会でも数多くの事例を紹介してい
ただきたい、科研グループが行ったような具体的な実践が続々出て、私達にも
大いに利用させていただきたいとの趣旨からのものであります。

ところで、我が国の英語教育については、「『英語が使える日本人』育成のた
めの戦略」が構想段階から、今やいよいよ行動計画に入り、この3月には、文
部科学省による全国都道府県及び国立学校の指導者を集めた具体的な行動計画
についての説明会が東京で開かれたところです。私の住む長野県においても、
これを受けた形で、県内の中学校、高等学校の英語教員全員が指定されたいず
れかの日に県の教育研修センターに出向き、講習を受け、TOEICの受験と同時
に、夏季intensive trainingの受講が義務付けられたようです。
まさに、待ったなし、是が非でも国を挙げてこの戦略を遂行する姿勢だと思い
ます。

 ここで、プロジェクトの誕生に話は戻りますが、国際化の進展と、国際市場
における産業競争の激化、日本経済の低迷など国内外の厳しい環境の中で、国
際コミュニケーションの手段として使える英語能力育成がますます切実なもの
となっております。ですから本テーマが国専協のプロジェクトとして取り上げ
られることが決まった時には、今後予想される英語教育への強い要求、具体的
諸施策が外部から提示されてくる前に、この際、私達のことはまず私達で、主
体的に、積極的に研究してみようと、関東信越地区の全高専がチームを組んで、
スタートしたわけです。

 英語教育への期待がますます高まる中で、高専で英語を教えている仲間同士
が力を合わせ教育改善に取り組んでいけたらさぞ大きな力になるでしょう。コ
セットはまさにその機会と場を与えてくれる拠り所だと思っています。このプ
ロジェクトの実行委員並び授業研究者の先生方と共々、最終報告書が少しでも
会員の先生方のお役に立つことが出来れば幸いであると願っております。


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<特集>コミュニケーション能力とTOEIC
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「先生」から「学習者」へ---コミュニケーション能力を養成する授業のために
                         北九州高専 大谷 浩

「コミュニケーション能力」にせよ「TOEIC」にせよ、我々英語教員に
とっては一瞬身構えてしまう「怖い」言葉である。なぜ「怖い」のか?それは
自分たちが英語の勉強に精を出していた若き頃には重視されなかった能力、存
在しなかった(または認知度の低かった)試験であるからだ。多くの英語教員
は「コミュニケーション活動」や「TOEIC」に対して学習者としての経験
を持たないのである。にもかかわらず「先生」になってしまった今、学生に
「コミュニケーション能力」を付けさせることが求められ、「TOEIC」で
高得点を取る指導まで求められる雰囲気が、日増しに強くなっているのである。
落ち着かないこと、この上ない。

 普通「先生」というものは、知識として又は経験を通じて「知っている内
容」を授業で学生に教授する人間である。日本の英語教育もこのパラダイムに
則って行われ、英語の先生は「英文法」や「訳」「諸外国の文化」などに関す
る知識を持ち、説明をし、質問に答えることがその主たる仕事であった。そし
て程度の差はあれ、そうした「教養としての英語」に興味を感じた学習者が次
世代の英語教員となり、同じようなパラダイムが継承されてきた。他教科の場
合は、おそらく現在でもこれで問題はないのかもしれない。ところが世の中の
国際化に伴って、英語教育のパラダイムは「言葉に対する知識や書物を通じた
理解」から「言葉の運用や対面交渉能力」へと急速にシフトし始めた。「英語
を勉強する」時代から「英語で物事に対処する能力を養成する」時代となった
のだ。起きるべくして起きたパラダイムシフトである。しかし、現場の教員に
とってみれば、自らは授業を通じて英語を使えるようにしてもらった経験がな
いのに、学生に対しては英語が使えるようになる授業を提供しなくてはならな
くなった。英語教員は従来の「先生」ではいられなくなったのだ。確かにこれ
は居心地が悪い。

 では、こうした居心地の悪さから抜け出すにはどうすれば良いだろうか?早
い話「先生」でいられなくなったのであるから、「先生」を辞めれば良いので
ある。もちろん「授業を放棄する」という意味ではない。知識の伝達者として
「教える」という態度を捨て、自らも学生と同じ英語学習者として「共に学
ぶ」という立場に立つのである。もちろん実際の英語力は彼らより勝っている
のであるから、彼らより多少先を歩く「先輩学習者」として、授業において学
習活動のリーダーシップを取るのである。「私も実は英語によるコミュニケー
ション活動には馴染みがないし、得意でもない。しかし今より上達したい。
TOEICは、受験勉強をしたことも受験したこともない。しかし近い将来、
諸君と共に受験して良い点数を取りたい」というスタンスを取ることである。
On-the-Job Trainingさながらに「英語によるコミュニケーション能力の養成
を目指した授業」の実地経験を積んでいくのである。確かに「先生である」と
いうプライドには多少傷が入るかもしれない。しかしこうした態度は懸命な姿
勢がある限り、学生から尊敬されることはあっても馬鹿にされることはない。
学習者としての姿勢を共有してくれる教員には、学生も心を開くものである。
それに数年経てば、自分なりの新しい授業が確立できるはずである。最初の数
年は苦しいかもしれないが、居心地の悪いまま旧パラダイムの中に閉じこもっ
てしまう方がもっと辛いことだろう。

 またこの感覚を一歩進めて、同僚に対しても同じように肩の力を抜きたいも
のである。一口に英語教員と言っても一人一人の英語力やコミュニケーション
能力には差があることは公然と認めようではないか。教員100人が英語の試験
(例えばTOEIC)を受験すれば、当然1位から100位まで順位がつく。我々は日
常的に学生に対して数値評価を行なっているにもかかわらず、自分たちがその
評価を受けることは極端に嫌う。「学生とともに学ぶ」のであれば、自分たち
だけ数値評価から逃げるわけにはいかないだろう。見栄を張らず、投げ出さず、
諦めず、英語教員間でも共に学習者としての一体感を感じたいものである。場
合によっては同僚のTOEICの得点を知ることがきっかけで、TOEICの点数と実践
的コミュニケーション能力が必ずしも一致しないことに気づくかもしれない。
その視点は、TOEICの得点では計れない学生の英語力に対し、理解を深める手
助けとなるだろう。

 さて「先生」を捨て学生と共に学ぶ「学習者」の心構えを持つことが出来た
として、現実には教員である我々はどのような授業をすればよいのだろうか?
以下に個人的に大切だと考えている点を、敢えて書いてみたい。共に「コミュ
ニケーション能力を養成する英語授業」を探求する学習者として、アイデアを
共有できればと考えるからである。決して「先生」的態度を取っているつもり
はないし、書くこと全てを筆者が実践できているわけでもない。「できるよう
になりたい」という叫びであると受け取って頂ければ幸いである。

1)授業中の指示は極力英語で、しかも簡潔でわかり易い表現を身につける。

2)教師ではなく、学生が英語を使っている時間を増やす。
  -ペアプラクティスの多用など。

3)量とスピードの重視
  -スモールステップの類題を大量にスピーディーにこなす。口頭でも紙面
  でも構わないが一般論として口頭の方がスピーディーであるし、量もこな
  せる。またパソコンを活用する手もある。

4)和訳をきちんと渡す。
  -初学者ほど英文の内容を日本語で確認したがり、授業中のほとんどを教
  師のしゃべる和訳を書き取っているという状態が起きやすい。こんな時間
  の無駄はないし、そもそも英語の授業になっていない。和訳は後で渡すと
  念押しし、訳の書き取りに時間を使わないように徹底指導するとか、最初
  から全訳を渡しても良い。和訳を読めば理解できるような箇所を授業中に
  説明するのは時間の無駄である。英文と和訳を読み比べ、それでも英文の
  意味が理解できない箇所を検知し、そのポイントをドリルで定着させる方
  が、よほど効率的である。学生は和訳を知っても、その部分を正しく読み
  取っているとは限らないし、少し単語を入れ替えただけで意味が取れなく
  なることが多いので、和訳を渡してしまうと授業が成り立たなくなるとい
  う心配はない。また、辞書引き活動を妨げるものでもない。

 具体的には時々以下のように自問してみることにしている。どれほど授業準
備が整っているかチェックすることができるが、冷や汗が出るばかりである。

○一つのレッスンを教えるのに、授業前にそのレッスンを何度音読しているで
 あろうか?

○何度その音声教材を聞いたであろうか?

○いくつの単語を辞書で調べただろうか?

○キーワード、キーフレーズを用いた例文をいくつ準備しただろうか?

○それらに取り組むワークシートは作成したか、または口頭でテンポ良く、数
 多くの質問ができる準備をしているだろうか?

○難しい単語の解説が簡単な英語で説明できるように準備しただろうか?

○本文の大切な箇所を、簡単な英語で説明できるように表現を考えているか?

○それを口に出してみて、学生にわかりやすいスピードで滑らかに言えるよう
 に練習しただろうか?

○試験との関わりを常に意識して、授業を行っているだろうか(=授業で教え
 たこと、訓練したことを試験問題として出題し、逆に試験問題として出題し
 たいことを授業活動として行っているだろうか)?等々。

 こうして自問してみると(ある意味どんなパラダイムの元で授業をしようと
も)実りある授業にしようと思えば、今更ながら十分な授業準備をすることに
尽きるということを実感する。英語教師にとって最も大切な仕事は、論文書き
でも学会発表でも会議でもなく、保護者への対応でもない。授業である。必死
で授業準備をし、それを元に学生の英語力が伸びる授業を提供することである。
その自覚をしっかり持っていれば、自分にとっての更に具体的な工夫に関して
は、様々な文献、資料、教材集、各種英語教育セミナーなどに多く埋まってい
るはずである。

 最後に高専での英語教育評価にTOEICを導入する件に触れておきたい。
やや大ざっぱ過ぎるかもしれないが、上述したコミュニケーション活動を取り
入れた授業を展開していれば、自ら得点は向上すると、全く楽観視している。
試験日が近い時期には、問題慣れするために練習問題に取り組むのも有効だろ
う。ビジネス関係に特化した単語や文章が一部出題されるが、別に満点を目指
す必要はないのであるから、負担が大きければそうした問題はあっさり捨てて
しまえばよい。マークさえすれば、まぐれ当たりもあり得る。TOEICは上
手に利用すれば良い、というのが基本姿勢である。一般的に試験は波及効果の
大きいイベントであり、授業との相乗効果を図って巧く利用すれば、学生の学
力増進に大きく貢献する。TOEICは今や、企業も大学も大幅に採用してい
る世の中で最も認知度の高い英語試験の一つである。大学受験がなく、外部か
らの英語学習圧力に欠ける高専生の現状を見ても、TOEICを上手に利用し
ない手はないであろう。教員も学生に得点を公表し、共に学ぶ姿勢を明確に表
せば、学生とのコミュニケーションも一層進むことであろう。
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『TOEIC全員400点』は可能か?            岐阜高専 亀山太一

 「TOEIC400点」。本校での「合言葉」だ。

 3年生全員にTOEIC-IPテスト受検を義務づけるようになって3年。今年度か
らは専攻科生も受検が「義務」となった。

 400点という数字になった理由は、いろいろあるようで実は一つしかない。
だが詳しいことは言えない。まあとにかく、本校では400点なのだ。

 400点と決めたとたんに、急に外野がうるさくなった。400点を取らせるため
にどうするか、400点に達しない学生をどうするか、そもそも400点というのは
どういう水準なのか。などなど、いろいろと「明確な説明」が必要らしい(が、
本当はそんなことできるわけがない)。

 先日、体育の先生と話していて「TOEIC400点というのはどれくらいのレベル
なんですか?」と聞かれた。私は「100メートル14秒」と答えた。つまり、
「それほど高くもないが、かといってだれもが楽に到達できるわけではない」
というレベル。

 さすが体育の先生、すぐに理解してくれた。10代の若者でも、100メートル
14秒を切るのは半数以下。15秒以上かかる者もいる。
「14秒の壁」(=TOEIC400点の壁)を超えるのはそれほど簡単ではない、とい
うことをわかってくれた。15秒台の人が14秒を切るには、毎日練習しても半年
はかかる(が、たいていはその前に挫折する)。

 もう一つ、くだんの体育の先生は「英語力は体力と同じ」という話もすんな
りと理解してくれた。どちらも「常に鍛えていなければ確実に低下する」とい
う意味である。高校で陸上部だった私自身、40を過ぎて運動不足になってし
まった今では10分走っただけでも息が切れる。かといって、「これじゃいけな
い、明日から毎日3キロ走ろう」という気になるかといえば、その答えは言わ
ずもがな。

 英語も同じ。1年間必死で英語を勉強したとしても、その後の1年間まった
く英語を使わなければほとんど忘れてしまう。逆に、1日10分でも、毎日学習
を続ければ英語力は確実に伸びる。まさに「継続は力」だ。わかっていても、
毎日学習を続けることはなかなかむずかしい。

 この傾向はTOEICの点数にも現れる。本校では、3年生で210点だった学生が
1年間で400点まで上昇した例がある。「がんばった学生」の代表だ。が、逆
に400点取っていた学生が300点程度まで下がる例もめずらしくない。こちらは
「サボっていた学生」だ。上がった学生も下がった学生もほぼ同数いるのだか
ら、授業の善し悪しとは関係ない(と、思う)。

 つまり、「その気」になった学生にとっては、TOEIC400点などはそれほど難
しいことではないということ。問題は、「継続」できる学生がどれだけいるか
だ。

 TOEIC400点は、実は学生にとっては決して高いレベルではない。が、学生
「全員」をそのレベルに到達させるという、我々英語教員に与えられた「目標」
は、豚100頭を木に登らせるくらい難しい。聞くところでは、おだてれば登って
くれるらしいが、そのおだて方まで発見したらノーベル賞ものだろう。


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<英語科紹介>
松江高専英語科                   松江高専 飯島睦美
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 宍道湖の辺から車で約10分北へ走ると,田園風景の中の小高い丘の上に,
松江高専は建っています。春は桜並木の下で友と語らい,初夏にはいると色鮮
やかなサツキの花にミツバチと共に集い,夏は油蝉の鳴き声を聴きながら木陰
で涼風を待ち,そして秋深まると音もなく落ちる椎の実を何気なく拾いつつ,
冬は一面の銀世界に我を忘れ,こんなゆったりと流れる時間の中で・・・日々
「英語教育」について熱く時に激しく語る松江高専英語科について,ご紹介さ
せていただきます。

我々のmissionは,次に挙げる「学習目標」を全ての学生に到達してもらえる
よう,教科指導・学生指導に工夫を凝らし,その工夫を独創的且つ有益なもの
とするために,各々がそれぞれの分野での研究に勤しむことです。

松江高専英語科の掲げる「学習目標」
1.実践的コミュニケーション能力を備えた技術者の基盤となる語彙力・語法力
  の育成
2.実践的コミュニケーションにつながる運用能力・思考力の育成
3.Output(情報発信)を意識したInput(情報入力)法の育成

本校で行っている活動には特別なことは何もなく,英検やTOEICといった資格
取得への指導,CALL授業の導入,様々な市販ソフトを利用しての授業実施など,
おそらく多くの高専で努力されている同様のことを我々も行っています。又,
全学年を通して縦のつながりを重視したカリキュラムで,年次を追う毎に段階
的に目標に近づいていけるよう連携をとっています。いくつかを簡単にご紹介
させていただきましょう。

(1)新入生テスト:業者テストを導入し徳山高専との2校を母集団とする「高
専偏差値」を出します。これは,一人一人の学生に「井の中の蛙」的発想をやめ,
少しでも広い視野で自分の英語力を客観的に捉え,努力目標を立てて欲しい,と
言う狙いから徳山高専では英語科国重先生のとりまとめのもと開始しました。
今年始めての試みですが,この母集団が中国地区高専・中四国高専と拡がってい
くと,更にその評価の客観性が高まるといいと願っています。

(2)英語実用検定試験:年3回の本校を2次会場とする英検の実施は,平成7
年度より始め,平成10年度より5年連続で「優秀団体賞」等を受賞することが
できたことは,学生諸君への励ましともなっています。大勢の学生に対して,2
次面接試験個人指導には,教官の時間とエネルギーがかかりますが,寸暇を惜し
んで指導をしています。

(3)TOEIC:IPテストを今年は,年4回の実施を予定しています。特に4年以上
の学生の受験者が年々増え受験者の平均スコアも上昇してきています。本校には,
去年アルク社の「ALCNetAcademy」を導入しました。学内のイントラネット環境を
活用して英語を学習するネットワーク型マルチメディア学習システムで,学習教
材は学内のサーバにインストールされており、学生はCALL教室などに設置されて
いるパソコンから教材をダウンロードして学習することができます。また、学習
履歴や進度、テストの成績はサーバに記録されるので、学生本人や教官などが学
習状況や進度を随時把握することができます。学生はこのシステムを各自自由な
時間に利用し,TOEICのスコアもその利用程度に比例して伸びています。

(4)英語弁論大会:毎年行われる中国地区高専英語弁論大会へは,多くの学生
出場を希望し,校内専攻の末,本大会へ参加することになっています。平成13年
度は,本校から4名の学生が参加し,2名の学生が見事優勝・準優勝に輝きまし
た。H14年度も参加学生3名のうち1名の学生が優勝させて頂きました。年々レベ
ルが上がりつつあるこの弁論大会は,英語の好きな学生にとっては,とてもよい
刺激となっています。

(5)E-mail交換:約40名の学生がハワイの高校生とメールのやり取りをして
います。ハワイの高校生は,日本語を学んでおり,メールは日本語と英語で書か
れたものを1週間に1度交換しています。外国がかなり身近に感じられるように
なったという感想を多く聞いています。IT進化のお陰で,国際教育・外国語教育
も非常に個人レベルでの活動が活発になってきました。

(6)課題テスト・実力試験:本校では,4年生以下までの英語の時間を利用し,
月1度の課題テストを実施しています。共通の問題集を利用して範囲を設定し,
実施しています。この課題テスト採点・成績管理には,カードリーダーを利用し,
マーク式採点をしていますので,学生には素早く採点結果等をフィードバックす
ることができます。2月には年1度の実力試験を行い,1年間の習熟度を測る目
安としています。

(7)暗唱:少しでも高い英語力を習得してもらおうと,日々の一つ一つの授業
にも努力を重ねています。たとえば,1年次よりまとまった量の英文を暗唱課題
として毎時間与えます。更には,暗唱した内容について英問英答を行い,input
されたまとまった内容について,情報検索作業と思考する訓練を行っています。

「高専生の英語力は低い」と半ば神話ともなっているこの汚名を,真摯に受け
止めつつ,この実態に対していかに立ち向かうべきか,話し合いを続けていま
す。日々多忙を極めつつある高専の教育現場で,忙殺されつつある教官間の情
報交換・情報共有に留意しながら,最もおろそかにしてはいけない目の前の学
生達を育て上げていくこと,それは英語力だけに限らず松江高専の教育目標で
ある「学んで創れるエンジニア」の育成を念頭に,「学ぶ姿勢,創りあげよう
とする意欲,挑戦する意志」の原点ともなる「人間教育」を根底にもちながら,
学生に接していくことに努力しています。

我々の持つ教育観からは理解できない昨今の学生の態度・姿勢に,ふさぎ込ん
だり,嘆いたりすることも多々あります。1日も終わりに近づいた夕暮れ時,
「ちょっと聞いてよ!」と愚痴が始まります。「そうだよね」などと癒しても
らいながら,「よし!また頑張るか!!」と言った具合に明日へつながってい
きます。明日は,ほんのちょっとだけ,“nano”の単位ででも,今日より“や
る気”“本気”を持った学生が増えることを願って,「あぁ・・・論文の〆切
が・・・発表が・・・明日の予習が・・・寮に行かなければ・・・体育館
へ・・・」と各々退散するのでした。もう辺りはいつの間にやら街灯の点る時
間です。


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宇部高専英語科                   宇部高専 南 優次
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 最初に、宇部高専の紹介をします。

 本校は、1962年(昭和37年)、12の国立高専の1つとして開学しまし
た。機械工学科80名、電気工学科40名、計120名の学生と共に、その歴
史を刻み始めました。

 昨年、2002年(平成14年)5月18日、創立40周年記念講演会を、現
校長の幡中先生から挨拶を戴き、執り行いました。場所は、宇部新川駅に隣接
する、渡辺翁記念館でした。

 この時の講演者の講演題目が、「人生を楽しくする方程式」です。そして、
講演した人が、あの、とても有名な(強調しておきます)、ハンガリー出身の
ピーター・フランクルさんでした。

 彼の講演の要旨は、平成14年12月発刊の、「宇部高専40年誌」に載っ
ています。この記念誌は、10年前の平成4年に発刊された、30年誌の後を
受けての冊子ですが、この10年のみならず、40年の歴史を窺わせる、良書
になっています。当然、英語科の歴史も、紹介されています。せっかくですの
で、初代英語教官の紹介文を引用させて頂きます。

 『我が英語科は、シュルレアリスト上田敏雄を始祖とする。上田は高専設立
の昭和37年に英語教官として山口大学から任官した。
英傑山縣清校長をして「どっちへ向いて噴出するか分からんロケット」と言わ
しめた卓見に富む激越な論客であった。・・・退官後、昭和55年には日本現
代詩人会より「先達詩人の顕彰」の栄を受けた。』(宇部高専40年誌 
p.117)

 ちなみに本校校歌は、上田先生作詞です。

 この40年誌にも、各英語教官の紹介が載っています。また、これとは別に、
『研究概要集』なるものが、ここ数年発刊されております。平成10、12、
13年版があります。また、平成14年には、『教官総覧2002』という冊子が
出版されました。私から各教官の研究内容をご案内するよりも確かな情報が手
に入りますので、興味のある方は、ご参照下さい。

 残念ながら、本校英語科は、学校単位ではCOCETに参加しておりません。私
をCOCETに誘って下さった河崎教授も、退官されて数年たち、宇部高専での
COCET関係者は、南1人という状況です。COCETさん、どうか私を見捨てないで、
という心境です。ただ、本校教官にCOCETの活動を伝える努力は怠りません。
先日も全教官に、『英単語プロジェクト』の紹介を、紙媒体で配布しました。
また、何らかのご意見を頂けるものと期待しております。

 平常、各英語教官は、授業と研究に専念しています。が、特に本校主管で中
国地区英語弁論大会を開催する際は、ESSの学生も駆り出しての英語科総出の
イベントとなります。本校は、平成6年第10回と、平成12年第16回を担当して
います。また、本年平成15年が、当番校となっています。この中国地区英語弁
論大会規約は、平成10年5月18日の中国地区校長・部長会議で了承されていま
す。この規約については、英単語プロジェクトでお馴染みの広島商船高専の上
杉先生が、COCETのメーリングリストで紹介されている通りです。成績点集計か
ら、順位決定まで、滞りなくというか、スムーズにいくと、主管校としては拍
手喝采となります。出場する学生には、結構ドラマがあります。せっかく上手
に発表している子が、突然忘却の罠に陥ったりすると、審査員全員が、大きな
ため息をついてしまうこともあります。

 この大会の規約は、平成10年4月1日から施行されています。第14条によると、
『重要事項は、大会役員会議の議を経て主管校の提案により中国地区高等専門
学校校長会議で定める。』ことになっています。正式な学校行事であり、今後
も続行されると思います。

 あとは、夏休み明けの9月、授業開始後の最初の火曜日あたりに実施する英
語課題テストも、英語科総出の行事です。この時は、数学も同時に実施されま
す。このテストの対象は、1、2年生です。夏休み前に英検準2級の問題集を
買ってもらい、その問題集から出題するという形式のテストです。1,2年と
も同じ問題集なので、毎年平均点が、1年生40前後、2年生60前後となります。

 このテストを本格的に実施し出したのは、先程名前を挙げた、河崎先生が英
語科主任をされていた時です。河崎教授は、平成7年のセンターニュースに、
「宇部高専英語教育最新事情」と題して、次のような寄稿をされています。

『最近英語科の3つの行事が実現可能になりました。その1つは英語検定試験の
本格的取り組みです。本校を会場にしたこの検定試験は、従来内向的と言われ
てきた本校学生に少しでも競争心を呼び起こし、彼らの成功を通して各自の能
力にプライドを持たせよう、というのが狙いです。この狙いは的中して、工業
英検の結果が今一つふるわないながらも、実用英検では2級合格が6名、準2
級合格が8名、3級合格は196名と  なりました。2つ目は夏休み課題テ
ストです。従来行っていたものに手を加えて、英検問題集を課題として与え、
その中から選択して試験問題を作製したものです。成績の集計、組別平均値の
算出、成績上位者の氏名公表などを経て狙ったことは、英語検定試験と同様に
数少ない競争の機会に学生達を参加させることにあったのです。また、今夏か
ら夏期講座に「中学生のためのLL英語教室」を8月初旬に実施する予定にして
います。この講座の狙いは、本校の施設を利用して中学生に「聴く英語・話す
英語」を練習していただき、あわよくば、英語の好きな生徒に本校へ入学した
い気になっていただく、という虫の良い話なのであります。』(総合技術教育
センター発行 センターだより p.12、No.7 1995

 この河崎先生の狙いは、定着したと言っても過言ではありません。英検に関
しては、現英語科主任の大野教授が次のような寄稿文を書いておられます。

『この度、英検本部より優秀団体賞を授与されました。・・・準2級50%、2
級30%以上の実力がないと貰えないものです。全国の高専でこの賞を戴いた
のは本校の他、福島高専、富山商船高専、松江高専のみです。・・・また、重
田先生の代から英検資格試験の積極的参加の掛け声及び南、澤先生両先生の犠
牲的精神をもって年2回の本校会場のお世話や煩雑な会計処理などの献身的努
力のお陰であります』(宇部高専校報 第157号 p.9 平成15年4月1日)

また、「中学生のためのLL英語教室」は、名前を「ナットンさんの楽しい英会
話教室」に変えて、本年も8月下旬に実施する予定です。あと、定着している
行事としては、図書館主催の英単語コンテストがあります。

 以上、ここ10年の英語科の行事の変遷をご紹介しました。

 これから先の準備も、現在進行中です。また機会を頂いた時に、その話を紹
介できればと思います。

 一応これで、宇部高専英語科の紹介とさせて頂きたいと思います。長々と読
んで下さった皆さんに感謝致します。有難う御座いました。


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編集後記                    詫間電波高専 平岡禎一
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 「高専の教官は一人五役だよ。」20年近く前、右も左もわからぬヒヨッコに
諭してくれた先生も今はない。「高専の教師は高校の教師とは違うんだ。研究
をしなくちゃいけないんだ!」功名心に駆り立てられては煮ても焼いても食え
ない論文を書くことに腐心し、その片手間に授業をしては、「やる気がない」
「こんなことも分からない」と学生に罪をなすりつける。やがて授業は崩壊し、
苦痛になる。研究室という名の避難所に逃げ隠れ、学術書を読もうとするのだ
が、一向に意欲が湧かない。「俺は一体、何をやってるんだ?」

 そんな教師を何年続けただろう。世間ではバブルとやらがはじけ、すでに閉
塞感が漂い始めていた。今思うと、寮務主事補を務めた2年間が転機だったか
もしれない。そんなダメ教師がウダウダしている間に、学生たちも変質し始め
ていた。ペンの代わりに酒やタバコを持ち、部活動の代わりにアルバイトに走
り、友情を育む代わりに友達の金品を盗むことを覚えていた。盗電、偽造テレ
カ、女子寮への侵入…。愕然とした。

 これではいかん、と思い、いろいろと試みた。夜8時からの学習相談、タバ
コについての調査や勉強会、等。特にタバコには手を焼いた。何せ、自らがか
なりヘビーなスモーカーである。「体に悪いから止めろ」と言うほどの偽善者
にはなれない。「未成年は…」と言うよりないが、時が経てば無意味な説教。
「今度見つかったら退寮だぞ」と、「脅迫」する他に能のないダメ教師に終止
していた。

 やがて、一人一人の寮生の「顔」が少しづつ見えてきた。タバコを吸うにも
「理由」がある。もちろん、やがてニコチン中毒になると理由もなしに吸いた
くなるのだが、吸い始めるのには理由があるのだ。一言で言うなら、「退屈」
である。退屈な授業、退屈な人間関係、退屈な毎日。一度しかない青春の、掛
替えのない日々に、彼等は「退屈」していた。

 そんな彼等がどうやったらタバコから足を洗えるか、これは難問だった。結
局、これといった方法は見つからなかったが、なぜか、私自身はタバコを止め
ていた。

 TOEIC、JABEE、全盛である。確かに下手な授業より、TOEIC対策の練習問題
の方が「退屈」しないだろうし、英語力も伸びるかもしれない。ただ、どうも
私には「今度吸ったら…」いう文句で脅かしていた自分の姿が思い出されてな
らない。英語を勉強しない学生に対して、「○○○点以上を取らないと…」と
いう、ある種の「脅迫」を我々はおこなってはいないか。英語(外国語)学習は、
単なる「脅迫的」数値目標を目指して行われるべきものではない。母語とは異
なる「ことば」を学ぶ時の、ある種の身体的な快楽や、精神的・知的興奮のよ
うなものを忘れてはならない。その一方、英語(外国語)学力とは「実技」能力
であり、「知識」ではない。きちんとした方法で「測定」し、数値化すべきも
のである。TOEICがその測定方法として相応しいテストなのかどうか、まずこ
の点について、もっと多くの議論がなされる必要があるように思う。

 今回、多忙を極める先生方に執筆をお願いしたところ、快く引き受けて下
さった。寄稿してくださった全ての先生方に、この場を御借りして、お礼申し
上げたい。ありがとうございました。

 最後に、手前みそで恐縮だが、夏の高校野球県大会で、創部以来初の2勝を
あげた。文字通り、汗と涙にまみれながら、へぼなノックにも愚痴一つこぼさ
ず、ついに天高く校歌を轟かせた彼等の青春に、そして高専生活に、幸多かれ!
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