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COCET通信        第4号 (2001.7.30)

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COCET通信        第4号 (2001.7.30)
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     目    次


巻頭言 「変えること、変わること」    長野高専  小澤志朗

小特集 飴と鞭の使い方---私の場合
「ノートつけ」            都立高専  山田 豪
「私が使う飴と鞭」          新居浜高専 篠原 學

英語科紹介
 「鈴鹿工業高等専門学校英語科」   鈴鹿高専  出口芳孝

科研プロジェクトについて       岐阜高専  亀山太一

事務局より

編集後記

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             巻 頭 言

「変えること、変わること」

       COCET会長 長野高専 小澤志朗

最近、高専の英語教育を変えようとする、あるいは変わろうとする動きを感
じております。それは、岐阜高専の亀山先生を代表とする科研費の研究グル
ープの研究「高等専門学校の特色を生かした英語教育カリキュラム作成に向け
ての企画調査」と、国専協の関東信越地区が中心となって行っている研究「コ
ミュニケーション能力育成を主眼とした高専英語教育のありかた」とがほぼ並
行して行われているからです。

両者とも、高専の英語教育の現状を調査するところから始めているので、
一見すると中身が似ているのですが、前者は高専独自の教材の検討を視野に入
れているのに対し、後者は学生の学力調査を広範に行う点が特徴的だと思われ
ます。これらの関係で、相似たアンケート調査が全国の英語の先生方のお手元
に届き、お手を煩わせております。両方とも求めるところは同じで、「高専の
英語教育をより良くしようとする」研究ですので、どうぞご理解とご協力をい
ただけたら幸いです。(両方に関与している者としてお願い申しあげます)

日本の英語教育全般に対し、最近あらゆるところからの批判や要求が目立
つようになりました。一億総評論家に対し、われわれがどう答えたり、あるい
は反論していくかについては、それぞれのお考えがあろうかと思います。高専
についてもずいぶん以前から「高専生は英語が弱い」と、事ある毎に言われ、
それに対し先輩の先生方を含め、絶えず努力してきたことは確かです。しかし、
最近は外部から要求や期待がさらに強くなっているのを感じます。

何かを変えるためには、制度的なものを変えること、つまり、外側から変
える方法と、当事者が変わっていく内側からのものとあると思います。今は、
恐らく両方が求められているのではないでしょうか。

外部から強制力をもって要求され、右往左往するよりも、自らの力で変革
を模索する方が精神衛生上良いことは言うまでもありません。苦しいけれど
も今が踏ん張り時のような気がして毎日を過ごしております。

先生方のお考えはいかがでしょうか。

さて、COCETの研究大会が8月26日(日)、27日(月)に京都で開かれます。
例年のように研究発表や講演等が予定されています。ぜひ、ご参加され、研
鑚、交流されることをお勧め致します。

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小特集 飴と鞭の使い方---私の場合
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「ノートつけ」
                      都立高専 山田 豪

 手練手管ではないが、学生たちの興味をひくために幾つかの教え方を私は持
っている。自分で教える上での必要上考え出したものである。
 その1つになるかどうかわからないが、これはどうかなと思うものを紹介し
てみたい。
 年何回か学生たちからノート集めをしている。
 それは1つは、日頃の学習が家庭に帰った学生たちにおいてはどのようにな
されているかを見るためである。
 ノートの中には先ず単語帳を作成してほしいといってある。単語帳として充
実する上ではいろんなことも大切だというが、殊に「名詞」とか「動詞」とか
「形容詞」というように、品詞も書いておいてねと話す。そしてできれば発音
記号も書いておいてくれればとってもいいのだがと、付けくわえてもおく。
 できれば、同時に、熟語などもきちんと意味を調べ、例文を辞書などから幾
つか抜き出して、その中で確認してねといってある。
 勿論教科書のパッセジについても、辞書や参考書などを調べて、わからない
こととわかることを区別して、その違いが色分けしてわかるように書いておい
てねと念を押してある。
 その他に、自分でいろんなものを見た場合、気に入った語句やこれはいいな
と思ったものなどもノートに記しておいた方がいいよと話している。
 ノートが学生自身にとって愛用のものになってほしいとう私の願いがあるか
らである。本末転倒かもしれないが、先ずは自分のノートを慈しむことから
でもいいから英語への入口になっくれればいいと思うからでもある。
 手許のものが気に入ってくれれば、その中味にもきっと好きになってくれる
のではないかという淡い期待もそこにはある。

 ノート集めにはしかしもう1つの狙いがある。
 一生懸命ノートをつけている学生たちをダシにして、もう1つ英語に手が出
ないとか、英語には見向きもしたくないという学生たちに「確実な歩み」が手
許にあるよとか、そこから出発すればいいんだよというように、学習のスター
トラインを自覚してくれればという思いからである。
 学生たちの机の間を適宜回ることが学生に対しては結構緊張感を与えるのは
事実である。が、回っている時に時に何人かの学生のノートを見て、その後ノ
ートを高く持ち上げて皆に見えるようにかざして「これは素晴らしい。こんな
にきちんとノートをつけているなんて、学生の鏡だ」と、大きな声で賞賛しま
す。
 まあそれは私だけでなく、誰が見ても楽しいノートで、中味的にも実に見事
にしっかりとつけてあります。
 赤、黄色、青、橙、その他目を楽しませるという点では、実に配色よくでき
上がっているものがあります。内容的にも私が求めているものがしっかりと整
然と付けられています。実に私も感嘆するしかないというノートが大概1クラ
スに2、3はあります。
 これを作った人は「学生の鏡!」だとほめます。そのことは実際には、ノート
つけに無関心で、英語に何の興味も示さない学生たちに向かって訴えているの
です。
 これで10だというと、それを聞いてノートつけにコンスタントに躍起にな
ってくれる学生が結構出てきます。
 英語が嫌いだと日頃いっている学生たちの何人かがきちんとノートつけをし
て、これでいいかななどと戯れ言をいって私のところに来るのを見ると、内心
私はにっこりである。
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「私が使う飴と鞭」
                       新居浜高専 篠原 學

 平成7年に高専に移ってきました。それまでの33年間は、愛媛県の高校を
転々としてきました。新居浜高専の1,2年の英語のカリキュラムは高校のそ
れとほとんど変わりがありません。以下、私の「手練手管(?)」を2,3述
べてみます。
 
1.学生が自発的に手があがる雰囲気づくりをする。(飴の方)
 1年生の初っぱなの授業で、「よく手のあがる人は、こちらの印象がよくな
るので平常点(40%)に何点かプラスします。」といって、挙手を奨励する。
(シラバスなどは学生さんは見てくれたりしない)その結果、クラスの1/3
がよく挙手をするようになっている。また、reading aloud を重視し、自発的
に挙手をした学生が音読すれば、+1ポイントを「えんま帳」につける。
1/4の手があがるようになった。
 
2.1年の教科書(文部省検定済)は丸暗記させる。(鞭の方)
 今年の1年生に調査した結果、40人のクラスのうち、中学でよく丸暗記さ
せられたという者は、ほんの2,3人であるということが判明した。英文が頭
にないのに、どうして英会話ができるのか、インターネットを使って読んだり
書いたりできるのか、と考えて丸暗記させることにした。初めは学生も戸惑っ
たが、3課が終わる頃には慣れてきて、3/4が小テストで合格するまでにな
った。part 1 の小テスト(罫線の入ったテスト用紙に、だいたい1ページの全
文を書かす。テキストは机の中)で「-6点」以下の者は、その週の内に篠原研
究室を訪れ、音読を披露する。来なかった者は、期末の平常点から1回につき
-1点とする。音読の合格者には「えんま帳」の小テストの点数に赤丸をつけ
て、期末の平常点からは減点しない。その結果、はじめは門前市をなした。
(廊下に、あぐらをかいて車座になって座っている者もいる。近頃の流行か。
学生の生活指導もできる。) 
   
3.できるだけ英語を使う。(飴と鞭の両方)
 クラスではできるだけ英語(教室英語とあざ笑うものは笑え)をしゃべるよ
うにしている。学生は、英語での指示はだいたいわかってきている。学生に未
知の単語などは、単語の位置に日本語をそのまま入れて英文にする場合と、英
語で言ってその後日本語を付け加える場合とがある。完全な英語などしゃべれ
るわけがない、と自分に言い聞かせている。
 BBCやCNNで話される英語はどうだ。インドの首相やパレスチナのアラフ
ァト議長の発音も文法も間違いだらけ、猫灰だら毛ではないか。高専の学生な
ら、質問してくるときに、"Line five." と言えただけでもいいではないか。ま
た、学生が英語をしゃべるときのエラーは寛大に受けとめたい。コミュニケー
ションができたら満点だ。こちらは、1968年に英検1級を取るのは取った
けれども、今は準1級の力があるかどうかもおぼつかないんだから。

 以上、ここ何十年もやってきたことの一部を述べてみました。一つでも参考
にしていただけたら幸いです。

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新任教官ごあいさつ
                    大島商船高専 吉留文男

本年4月より大島商船高専に勤務することになりました一般科目の吉留文男
です。教職歴は22年と長いのですが、高専で教鞭をとるのは初めてで毎日新
鮮な印象を感じつつ、同時につかみ所のない集合体に戸惑っているのが正直な
今の気持ちです。現在、1年生と4年生の授業を担当しています。新しい希望
に満ちた学生と高専を知り尽くした学生を観察しながら、卒業後の社会で彼ら
の役に立つ基礎づくりができたらと思いながらチョークを握っています。
また、COCETのメンバーに参加することで英語教育の研究での新たな出会
いができることを嬉しく思っています。今までとは違って様々な交流を通じて
幅広い見聞をひろめられることを楽しみにしています。今年になり、世の中も
急に空模様がおかしくなってきましたが、あまり流行に流されない地に着いた
教育、英語教育を心がけていきたい考えています。
最後になりましたが、趣味はスポーツ観戦とゴルフです。セントアンドリュ
ースのコースをまわることが夢です。

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英語科紹介
     「鈴鹿工業高等専門学校英語科」     鈴鹿高専  出口芳孝

1.強力スタッフ
 先年、COCETの幹事校をお引き受けしていた頃、鈴鹿の英語科を評して大
変仲が良い、とお褒めの言葉を頂戴して、社交辞令と思いつつ嬉しい思いを致
しましたが、実はもうひとつ他に誇るべき特徴があります。有能な方が揃って
いるという点です。
 有能という言葉の定義には色々あろうかと思いますが、6名全員がもれなく
学級担任、主事補、クラブ顧問を歴任しているということでお分かり頂けよう
かと思います。それもお飾りの名前だけの仕事ではなく、それぞれにしっかり
仕事をこなしておられるのを見ると身内ながら大したスタッフだと思わざるを
得ません。
 その筆頭が先々代のCOCET会長として皆様にもおなじみの松林先生です。
現在学生主事を務められておられますが、みずからプロ仕様のデジカメを担い
であらゆる学生の催しを取って回られ、写真速報を行なっておられます。私も
学生時分に教わったことがあるのですが、当時野球部顧問をされていて、学生
と教職員のソフトボールの対抗戦で左中間をつくランニングホームランになり
そうな打球を2本も取られてしまいその運動能力に脱帽した覚えがあります。
 有能な人間が集まると、喧嘩が絶えないか、我関せずのバラバラ集団になり
がちなものですが、本校英語科のまとまりの源は先生の包容力にあるのだと信
じて疑いません。実に人の話をよく聞かれ、中庸の徳を備えられた方だと思い
ます。
 人柄の良さでは教室主任の中井先生も抜群です。ところが温厚な外見からは
想像もつかないほど多趣味で、雑学人間を自負する私が、繰り出した話題にこ
とごとく薀蓄を傾けられてしまうほどです。学生時代から強豪でならした卓球
はもとより、ゴルフ、ボーリングでは学内随一というスポーツマンにして、サ
ンケイスカラシップで英国仕込みの英語はイギリス人も舌を巻くほどで勿論通
訳ガイドの資格持ち、というスーパーマン、いやクラークケントというべきな
んでしょうか。
 英語の力なら忘れてはならない方がもう一人。本校紅一点のご存知大石先生
です。ESS顧問やtechnical writing関係の公開講座や、文系には珍しい産学協
同で大車輪の活躍です。最近ではTOEICの導入を一手に引き受けられ、今年は
ついに準会場実施を実現されました。運動の方は、失礼ながら下手の横好きと
お見受けしていたのですが、松林、中井両先生や私も属する職員テニスクラブ
で、県の理事長も勤められたテニス部の前部長を引っ張り出して2年も3年も
個人指導を受けて遂にものにしてしまわれ、やはりただものではありませんで
した。
 さて、今や「若頭」的役割を期待される林先生ですが、この方もすごい。実
に丁寧な教え方をされるそうで、学生からの信頼も厚く、寮務主事補や市の補
導員もこなし、それで足りず日夜バレー部の指導に明け暮れ高体連ではBest4
に入るほどだとか。着任まもなく学校祭イベントの「筋肉番付」で学生をぶっ
ちぎった体力には脱帽でした。
 若手の三上先生は、優しい英語が売りだとか。女子学生の人気もうなづけま
す。さすがに自縄自縛の単語テストには苦労されているようでしたが、最近は
軌道に乗ったようです。志願されたソフトテニス部長職も順調で、土日や長い
休みには姿がみえなかった部員が連日練習するようになり、2年連続全国大会
出場を果たし、我がテニス部もうかうかとしておれない情勢です。
 と書き綴って、ふとわが身を振りかえれば、「忙しい、忙しい」とわめき散
らしているのは己の無能さの証明にすぎないのではないかと、身を竦めるのみ
です。

2.営業内容
 鈴鹿では授業以外に、県内中学生を対象にした中学生英語スピーチコンテス
ト、学生向け英検・工業英検や上述のTOEIC準会場実施、新入生学力検査、学
外向け公開講座、などを行なっています。
 学力検査は共同研究として、10年ほどは自作問題で行い、結果分析を紀要
に発表してきました。ここ2,3年は林先生が国語・数学と共に業者テストを
利用して、分析をされています。成績分布が2つのピークをもつことが共通で
あり、どんな山になるかが学科ごとに違うこと、などが分かってきました。
 もうひとつ、教室全体で力を入れているのが単語テストです。範囲により7
~8割を合格として、1~3年で単位認定の必須条件としています。らせん状
のテストを心がけており、成果は感じるものの、期待ほどではありません。
3年生で実施している習熟度別クラス編成を「飴」とするならば、こちらは
「鞭」というべきなのでしょうが、寧ろ正月あけには延べ何十人という不合格
者を抱えて連日再試を行なわざるを得なくなり、自縄自縛となっている所があ
ります。
 また、専攻科で岐阜・豊田高専と共同でSCS授業も行なっております。これ
については当初から今年8月のCOCETでご報告する予定だったのですが、私の
勘違いで来年回しとなってしまいました。(鈴鹿では私が担当になっておりま
すので、何かありましたらお問合せください。)

 以上、色々述べて参りましたが、やはり人間ですので実際には主義主張は個
々に違うところがあるのですが、学生の英語学力向上のためには手をかけなけ
ればならないし、そうすることが教官の義務という一点では常に合意ができ、
実施の段階でも手を抜くものがいないという点で、実に働きやすいところだと
考えております。

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科研プロジェクトについて
                          亀山太一(岐阜高専)

COCETメーリングリスト等でもすでにご案内の通り、平成13年度科学研究費補助
(科研費)による研究プロジェクト「高等専門学校の特色を生かした英語教育カ
リキュラム作成に向けての企画調査」が進行中です。

この研究プロジェクトは、昨年度のCOCET全国大会において提案されました。
大会の後、岐阜高専の亀山が中心となって、研究に参加していただく先生を募っ
たところ、北は北海道から南は九州まで、全国から13名の方が名乗りをあげて下
さいました。そこで、私を含めて14名の共同研究という形で科研費を申請したと
ころ、これが認められて320万円の経費をいただくことになった次第です。

このプロジェクトの基本的な柱は4本です。
1.全国の高専のカリキュラムの現状と、高専英語教官の意識調査
2.高専生を受け入れる企業のニーズ分析
3.高専からの編入生を受け入れる大学教官の英語に対する意識調査
4.これらを踏まえた新しい英語教育カリキュラムの提案

現在、上記の第1番目の調査と分析を終え、第2、第3の調査の為の準備をして
いるところです。第1の調査では、全国ほぼすべての高専の先生方のご協力を得
て、貴重なデータを集めることができました。この場を借りてお礼申し上げます。
(なお、この結果については、8月に行われるCOCET全国大会において報告する
 予定です)
また、第2、第3の調査も、夏休みから前期末にかけてのなるべく早い時期に行
う予定で、その後はこれらの調査結果から、高専のための新しいカリキュラムや
新しい教材を提案できればと考えています。

今後とも、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

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COCET事務局より

会費納入と京都大会の参加申し込みをまだなさっておられない方は、どうぞよ
ろしくお願いします。
本年の大会での出展予定は、4~5社(セイド-、成美堂、アルク教育社、TOEIC
事務局等)です。
日本各地の暑い夏を乗り切り、京都でお会いすることを楽しみにしております。

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編集後記

 大変長らくお待たせ致しました。やっと4号をお送りできます。
 こちらでは、夏休みを待ち受けていたかのように、猛烈な暑さに見舞われ、
全国大会 (広島商船のみなさまお世話をおかけしますm(_ _)m) 向けの合宿練習
の最中にようやくCOCET通信の仕事にかかることができました。地区大会前の練
習で既に2回も剥けた鼻の頭がまたもやムズムズしてきていますが、日中戸外
では40度、夜でも30度の日が続きました。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 合宿の夜に仕事を続けながら、せめて一晩くらい熟睡したいと思いつつ、追
い込まれてからの原稿依頼にもかかわらず、快くお引き受けいただいた方々、
しかも普段からとてもお忙しい方々のご協力に応えるためにもと、なんとか形
をつけることができました。本当にありがとうございました。
 一方で依頼のメールに返事も頂けずに落胆したことも事実ですが、日頃の自
分の忙しさを考えれば「構ってられない」というお気持ちもよく分かります。
ただ、メーリングリストもますます低調になってきているようで、「忙しいで
すね」などという愚にもつかないコミュニュケーションでもあればなあ、と考
えております。
 どうかくれぐれもお体をお大事に。また、京都でお会いしましょう。
(養老山地麓にて 2:00/07/30/2001)
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