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COCET通信        第3号 (2001.2.26)

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COCET通信        第3号 (2001.2.26)
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目次


巻頭言に替えて 富山高専 立野 彰


小特集 マルチメディア演習室の導入
その1 沼津高専 菊地俊一
その2 宮城高専 武田淳
コンピュータ奮戦記
その1 福島高専 宮澤泰彦
その2 松江高専 岩田淳
その3 富山高専 青山晶子
その4 富山高専 立野彰

英語科紹介
富山商船高等専門学校英語科 富山商船 長山 昌子
富山工業高等専門学校英語科 富山高専 高越 義一

事務局より

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 巻頭言に替えて
       富山高専 立野 彰

 コセット通信第三号は、「高専英語教育とコンピュータ」をテーマとして
扱ったこともあり、編集者のわがままを入れてもらって HTML 文書でもお届け
することになりました。HTML 版の URL は、

http://www.toyama-nct.ac.jp/~atateno/cocet/tsushin3/index.html

です。

 お忙しい中、執筆依頼や資料提供に快く応じていただいた執筆者の皆様また事務局の方々に、この場を借りて厚く感謝申し上げます。

 さて、新世紀を迎えて最初のコセット通信、何か気の利いた巻頭言をと思いましたが、もとより私にそんなことができる訳もなく、替わりに文部科学省学習情報課が昨年7月に発表した

「ミレニアム・プロジェクト」により転機を迎えた
「学校教育の情報化」
―「総合的な学習」中心から「教科教育」中心へ―

をご紹介したいと思います。
 このファイルは、pdf ファイルとして、「まなびねっと」

http://www.manabinet.gr.jp

から、ダウンロードすることができます。

 副題からもわかるとおり、この文書は小、中、高等学校を対象としたものであり、直接高専教育に関する記述はありません。しかし現在文部科学省が学校教育へのコンピュータの導入をどのように考えているのかがよく説明されていると思います。 ご参考になれば幸いです。

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小特集 マルチメディア演習室の導入  その1

  沼津高専の場合

沼津高専  菊地 俊一

1 私とコンピュータとの出会い

 私は高専で勤務するまではワープロとパソコンの区別がつきませんでした。ましてやネットワーク関係の知識は持っていませんでした。私が初めてコンピュータに接したのは1977年、筑波大学一年生の時でした。当時「情報処理演習」という科目が全学生の必須科目となっていて、フォートラン言語を勉強しましたが、その時期の半年の勉強だけで終り、学生時代に使用することはありませんでした。大学を出てすぐに高等学校で教職に就き、手書きや英文タイプライターでテスト問題を作成していましたが、1983年に「文作君」というワープロが一台職場に入り、それがワープロとの初めての出会いでした。コンピュータを意識したのはかなり後になってからのことで、高専に異動して数年した1994年頃でした。物理の教官が電子メールの活用を私に力説したのですが、ファックスでも間に合うから、と私はさほど関心を示しませんでした。1996年から職場では一斉にパソコンが支給され、校内LANにより事務連絡はメールで配信されるようになり、それでもあまりメールのありがたさを実感しませんでした。ところが、シンポジウムで発言する人を「シンポジスト」と表記している日本の学会案内を何種類もみて、symposistという表現は通用するかどうかをメールで海外に確認したところ、一夜にして35通のメールが世界中から私に届き、メールのすごさをその時初めて実感したのでした。

2 LL教室からマルチ・メディア教室へ

 本校で1985年に導入したLLシステムが故障も多くなり、音声だけでは学生を引きつける魅力に欠けるようになり、時代の要請に応えるべくマルチ・メディア教室構想が出たのは1999年2月のことでした。英語科の担当者となった私は同年3月から文部省在外研究員で職場を留守にすることになっていたため、出発までのわずか一ヶ月で必要書類を準備するのは大変なことでした。企画の段階で、豊橋技術科学大学と富山高専を見学し、事務官の方々、先生方には大変お世話になりました。私が留守にしている間にめでたく文部省予算が決定し、翌2000年3月から工事にかかり、ほぼ一ヶ月で従来のLLシステムにパソコン端末46台を合体させたマルチ・メディア教室が完成しました。導入に当たっては、SCSSとの合体も考えたかなり大掛かりな構想もありましたが、予算面や英語科の管理運営能力の問題もあって、「LL+パソコン」で落ち着きました。

3 授業実践紹介

今年度は英語と地理の授業で教室を使用しており、1、2、4、5年生の本科生と専攻科生が参加しています。英語の授業では下級生は主に英作文で電子メールを活用しながら、教師から宿題をメールで事前に学生に送り、送り返された課題に対して教師がコメントを加えて学生本人に返信しています。

普通教室での板書に相当するものはなく、すべてパソコン画面を通して教師側から説明事項を送り、学生はノートに写すのではなく、フロッピィに保存します。

 上級生はインターネットを活用して情報検索に慣れるための練習をさせ、英語について学ぶのではなく、英語を道具として活用できるよう訓練しています。具体的には海外の図書館にあるデータを検索させたり、ホテルや飛行機の格安チケットを探し出す競争をさせたり、遊び感覚も取り入れながら、学生を飽きさせないよう工夫しています。つい最近、アメリカ大統領戦の決着がついた時には、ワシントンポストにアクセスさせ、ブッシュ氏の勝利宣言とゴア氏の敗北宣言のテキストをダウンロードさせ、比較させました。どの学生がどんな画面を見ているかをモニターできる機能がついていますので、教師から指示された以外のホームページをみていたり、ちゃっかりゲームをしているような学生はすぐに発見できます。従来のLL機能を生かした授業では、ヘッドセットから音声を聞かせながら、パソコン画面には単語のヒントを提示したり、あるいは学生がそろそろ眠くなりそうな頃に「寝るな!寝たら天井から水が落ちる」と警告を提示したり、携帯電話でメールの交換に慣れている上級生にはこうした文字メッセージを読むのがおもしろいらしく従来のLLのようにただひたすら黙々と音声に集中させていた頃と比較すると教育効果も高まり、欠席者もゼロです。授業以外に、朝、昼、夕方の時間帯に一般開放して、学生は自由に電子メールやインターネットを楽しんでいます。

4 メンテナンスが大変

 授業実践ではいいことばかり記しましたが、実はメンテナンスが大変です。純粋にLL機能として使用する分には故障はありませんが、電子メールやインターネットを活用するためいわゆるパソコンとして立ち上げようとすると、何らかの理由により立ち上がらないパソコンがあり、多いときには一度に7台のパソコンが同時に動かなくなり、それ以外の時でもほぼ毎回トラブルは発生し、専門知識のない私は業者を待つしかなく、しかしながら業者のスケジュールでなかなか点検してもらえないこともあり、トラブルが発生した端末に座った学生には正常に起動している端末に移動してもらっていますが、学生のせいでのトラブルではないので、とても困ることがあります。さらには、教材作成や学生からの返信メールへのコメント記入のために土曜、日曜も出勤することは私は日常茶飯事であり、メンテナンスのため夜8時、9時まで残ることもよくあり、マルチ・メディア教室専属の技官がいないため、予算請求、物品管理、メンテナンス等の総括責任者を一人で行っているため、とにかく大変です。

5 今後の計画

 CS放送受信契約を12月に学校長に認めていただきましたので、1月から受信可能になりました。SCSSの放送番組は校内の普通教室にあるTVモニターに流せるようになっていますので、それと連結してマルチ・メディア教室で受信したCNNやBBC等の海外ニュースを昼休みに各HRに流したいと思っています。さらには、各端末にカメラをつけ、国内外の学生や様々な機関とテレビ会議方式による交流が可能になればいいと思います。

6 これから導入計画のある高専の方々へ

 まずは英語科内で、このために時間とエネルギーを惜しみなく提供してくれる教官がいるかどうか、です。結局はその人が一人ですべての苦労を背負うことになります。願わくばこの中心人物が蓄積疲労でダウンしそうな時に「お茶でもどうぞ」とさりげなく言ってくれる心やさしい同僚がいればなおよろしいです。次に大切なのは、ネットワーク関係のことで力を貸してくれる人が学科内にいるかどうか、です。幸い沼津ではいました。ネットワーク関係のことでは、その人の負担も増えることになりますので、人間関係を円滑に保つためにいろいろと気をつかうことがあるかと思います。最終的に大事なことはマルチ・メディア教室で何をするのか、というビジョンを明確に持つことだと思います。各高専でのご成功を祈ります。

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小特集 マルチメディア演習室の導入  その2

    宮城高専の場合

宮城高専  武田 淳

はじめに

 宮城高専のマルチメディア・ルーム(以下MM)は2000年4月の竣工以来、2001年1月末までの10か月間に全国から問い合わせをいただき、視察にいらした高専、大学は19校を数えます。その際に受けた質問のかなりが重複しており、また全国高専のLL教室のMM化が急速に進みつつあることとも合わせて、ここでは本校へのMM導入の経緯と現状、そして現在の問題点等を簡単にまとめさせていただきます。担当の立野先生から「気楽な文でいいから」というお話をいただいているので、それに甘えさせていただきます。ご了承を。

●コンピュータが純粋にオモチャだった頃

 高校3年の夏までは理科系志望、進路希望調査書に「白衣を着て研究室にこもって試験管を振っているような仕事がしたい」と書いた私でしたが、物理の力学で敢えなく挫折、現在に至ります。私のような「理系崩れの英語教師」は実は少なくない、と耳にしたことがありますが、それはともかく、大学時代に初めて触れた国産PCは大きな衝撃でした。
 それまで電動タイプライタや初期のワードプロセッサの使用経験はあったものの、「こちらの組んだプログラム通りに動いてくれる」オモチャに夢中になり、雑誌に掲載されていたコマンドラインをその通り入力しては「あ、絵の色が変わった」「おお、画面に雪が降っている」と無邪気に喜んだものでした。このオモチャが実は、間違ったプログラムを組んでもその通りに動いてしまう、ちょっと困ったオモチャにもなり得る、と知ったのは、だいぶ後のことでした。

●仕事への導入

 大学卒業後、最初の赴任校だった女子高校には既にコンピュータが導入されていました。が、当時の多くの高校でそうであったように、そのPCは教員にほとんど触れられることもなく、職員室の片隅で文字通り埃をかぶっていました。入学試験はおろか定期考査の成績処理さえも「短冊並べ」と称して点数を記した紙片を延々と並べてゆく有様で、私と同期の教員で何とかしようと手探りで始めた勉強会が仕事への導入のきっかけでした。その後、県教育委員会による教育現場の電算化推進を受け、瞬く間にコンピュータ処理室が準備され、2年後には入試の処理もPC3台でこなせるまでになりました。どうやらコンピュータは使えそうだ、成績処理だけでなく、英語の授業にもPCを活用できないか、と考え始めたのはこの頃です。

●インターネット以前のコンピュータ通信から

 必ずしも英語に興味のある生徒ばかりではなかったその高校で、PCを英語の授業に活用する最も手軽な方法は、やはり電子メールの交換でした。が、当時のインフラは現在のような専用線接続ではなく、一般の電話回線に何と9600pbsという低速モデムを介して接続、ニフティをゲートウェイにコンピュ・サーブに入ってアメリカとつなぐという至極ノンビリしたものでした。しかもメールの交換相手
はカリフォルニアの中学生で、生徒数分のアドレスが準備できないため、こちらの生徒が書いたメールを1つのファイルにまとめ、私のアドレスで相手校の先生に送り、あちらからも同様に私宛にファイルにまとめられたメールが届くという、何のためのコンピュータ通信かわからなくなるような手間のかかるものでした。

 それでも、自分宛のメールを読む時のあの生徒たちのたまらなく嬉しそうな表情は、現在の高速ネットワークを介した電子メールを読む宮城高専の学生たちのそれと全く変わりはありませんでした。私はこの女子高校に4年間勤務した後に英語科の設置されている新設校へ転勤しますが、そこでのPC活用の状況はこの女子高校と大差ありませんでした。

●導入に至る経緯

 1994年に宮城高専に赴任した私は、その2年後にキャンパス全体がネットワーク接続される予定である、と聞いて驚きます。低速ネットワークへの不満が解消される、学内にいる限り夢の常時接続が可能だ、授業資料もネット経由で入手できるぞ、と夢は広がります。
 実際、95年冬に開始された試験運用では、教官室に入りきらないほど集まった学生たちが初めて見るホームページに歓声をあげる、という嬉しい状況が現実のものとなりました。
 さて、従来のLL教室に端末を持ち込んで、その画面をプロジェクタで投影すれば何とかなるかな、と考え始めていた頃、LL教室改修の話が持ち上がります。

●大失態の初仕様書

 導入から13年を経ていたLL装置はとにかく故障続きで、44台のユニット中、授業に必要な40台を確保することができないといった状況が珍しくない有様でした。年間20万円を越える修理・維持費を英語の教官研究費でまかなわなければならない事態に陥り、挙げ句の果てはLL教室にカセットテープレコーダを持ち込んで授業を行うという笑うに笑えない状況に至っていました。そんな折に降っ
てわいたようなLL教室改修の話題に、我々英語科教官は驚喜しました。
 従来のLLにコンピュータ演習室の機能を付加した教室にしよう、各端末は個別にインターネットに接続できるようパラレル接続にしよう、端末のスピードは可能な限り最速に、と喜ぶ私たちの前に、大きな問題が立ちはだかりました。「1週間以内に仕様書を準備しなさい」
 仕様書をお書きになった経験をお持ちの方はご存知の通り、仕様書に記載される内容は、OSに始まりPC端末に至るまで、特定の機種ではいけないことになっています。つまりOSはWindowsかMacOSか、ハードは国産機か輸入機か、そういった記載をせずに必要とされる機能のみに基づいて仕様書を作成しなければなりません。いくつかの先進校をプロトタイプにしようにも、旧LL教室のスペースの制限のもとに最新のシステムを構築することは至難の業でした。仕様書を書くこと自体が初めてだった私は、期限内に資料を準備することができず、結局、この改修案は予算請求そのものが実現しませんでした。同僚に「改修の話がいつ持ち込まれてもいいように、予算案は常に用意しておくべきものだ」と諭され、自分の至らなさに胸が痛んだことを覚えています。
 が、その1年後、今度は更に驚くべき話題が持ち上がりました。校舎の全面改築に伴うMM教室の新設です。

●モデルとしてイメージしたシステム

 新たにMMを計画することは、LLの改修案を作成することよりも容易でした。教室のスペースさえ確保すれば、あとは数ある先進校のプロトタイプを組み合わせてデザインすることが可能です。本校の場合は、私がネットワークの研修会で何回かお世話になった豊橋技術科学大学の野澤和典教授(現・立命館大学経済学部教授)にとてもお世話になりました。また、COCETはじめ諸研究会での発表内容も参考になるものが多く、そうした発表をなさった先生方にメールで御教授いただいたことも多くありました。本校のイメージしたMMのデザインの主なものは・・・

(1) 英語のlisteningとspeakingの学習が、コンピュータから
  独立した形で可能であること。
(2) 会話演習のプログラムを学習者自身が組めること。
(3) イントラネットで接続された各端末から、独立してインターネットに
  接続可能であること。
(4) DVDやVHS、BS等の映像資料を活用できること。

といったものでしたが、これらは最終的に全て実現されました。

●これまでの授業

 本校のMMはもうすぐ稼働1周年を迎えます。この間、授業としての使用は「1年英語講読・LL」(週1時間×5クラス)、「4年選択外国語1AB」(週2時間)、「5年選択外国語1AB」(週2時間)、そして授業の他には「ESSの部活動」(放課後・週8時間前後)、「英語検定の事前指導」(随時)が主なところです。今のところ、授業用に市販の教材の導入は見込めないため、教材は全てオリジナルです。
 1年のLLでは発音記号と実際の音との関連に始まり、市販の英語雑誌(MiniWorld)の記事とカセットテープ(最新号からCDになりました)、BSニュースを録画したもの、一息ついてもらいたい時にはCDでポップス、DVDで映画といった具合ですが、学生は楽しんで取り組んでいるようです。導入時期にタイピングの練習用ソフトを紹介したり、ネットワーク・ブラウザの操作に慣れてもらうために「80分間世界一周」を競争したり、といった活動も、彼らには好評でした。
 4年と5年の選択授業は、テーマを与えてインターネットで検索させ、その英文の内容を把握させる、といった作業の繰り返しですが、こちらは彼らの知的好奇心に合ったテーマを用意することが最大のポイントのようです。

●さて、導入されたはいいけれど

 ここから先の経験談・失敗談は、おそらく皆さんが何度も耳にしたこととよく似た内容になるかと思いますが・・・

(1) 管理責任者の問題
「MMのような特別施設の立ち上げには、そこに泊まる担当者が必要だ」とよく言われますが、これがまさか本当だとは思いませんでした。私も竣工直前の昨年2月には、業者と一緒に天井裏にケーブルを這わせているうちに午前2時になったり、端末のアドレスを設定しているうちに夜が明けたり、といった具合でしたが、どうしても業者に任せておくだけではすまない、学内担当者が把握しておかなければならないことが出てきます。私の場合は「好きでやっている」部分が多く、また使用しているシステムそのものがユーザー・フレンドリーを標榜するMacOSであるため、これまでさほど大きなトラブルには見舞われずにいますが、さて、これを他の教官に担当していただくことができるかどうか、は悩ましい
問題です。幸いなことに、宮城高専では2001年度から私の他にも英語教官がMMで授業を展開することになっており、また物理や化学の担当教官からも使用の問い合わせがきているため、管理責任者の負担は「少し」軽減されるかもしれません。

(2) 信頼できる業者
 上記1とも関連しますが、トラブル発生時は勿論のこと、システムに対して何かリクエストが生じた時にすぐに対応してくれる業者の存在は不可欠です。本校のシステムも何度か改良を依頼しましたが、その都度、満足のいく対応を見せてくれています。中にはそうではない業者もいるようなので、これは我々のネットワークで情報を交換すべきテーマのひとつとも思えます。

(3) 維持管理費の確保
 意外なことに、この問題を解決しないまま走り出しているMMが多いようです。例えば同窓会費や専門学科からの援助といった確約があればいいのですが、とりあえず最初の1年間の維持管理費はメーカーが負担してくれるから、と安心していると、あっという間に次年度になってしまいます。しかも決して少ない額ではありません。

●最後に

 あくまでも私見ですが、英語教育におけるコンピュータ設備の存在意義は、学習者のモティベーション強化につきると信じています。学生が内容を把握できない英文に出会った時には、我々の元に戻ってきてもらいたい、その時にはこちらは旧態依然として黒板とチョークで説明するから学生にはきちんとノートを取りながら考えてもらいたい、しかし、そのモティベーション強化には、彼らの目を英語学
習に向けさせるtriggerとしては、このコンピュータに勝るものはないのでは、と考えながらPCに向かっています。
 そして、言い古されたことではありますが「コンピュータ設備が導入されたから、さて、何をやろうか」ではなく、「これを実現したいからこうした設備が必要だ」という姿勢でありたいとも思います。
 導入と、その後の運用には少なからず苦労(疲労?)が伴いますが、それを補って余りある成果がきっと得られます。導入を検討なさっている高専が希望通りの成果をあげられますよう心からお祈りすると同時に、先進校が我々に更なる目標を提示し続けて下さることをお願いいたします。

 尚、本校のMMの仕様の詳細および資料画像は、宮城高専のHPの武田のサイトに載せてあります。

http://www.miyagi-ct.ac.jp/~jtakeda/index.html

内の「宮城高専MMRoomについて」をご参照下さい。

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コンピュータ奮戦記 その1

「ネットでエーゴもエーネット!」: 
ドジでマヌケな「インターネット・イングリッシュ」奮戦記?

                 福島高専(終身反面教師) 宮澤泰彦
 
 トンデモナイ原稿依頼が来たものです。このワタシに「コンピュータを利用した英語教育」の実践報告を書けですって。ミスキャストではないかと一旦はお断りしたのですが、「失敗記」のほうが都合がよいからというので思い直しました。間抜けな失敗談なら事欠きません。自称「文系人間」などと怠け者の言い訳をして、そちらの勉強は敬遠しがち。おかげで文字化けしたホームページも手つかずの店晒し。慚愧に耐えぬ有様なのです。
 そもそも個人的なコンピュータ利用にしても、ワープロの他にはネットでアヤシイ覗き見するくらいにしか使えてません。そんなワタシになぜこんな話しが舞い込むのか?答は簡単。いつかメーリングリストに迂闊な回答をした罰が当たったんです。よくもまあぬけぬけと「インターネット・イングリッシュというテキストを使ってウェブサーチやらメールやらの指導をしてます」なんて書いたものです。
ウソではないんですけどその実態たるや...

 本校にはコミュニケーション情報学科という工業高専の名に似つかわしくない「文系」学科があって、英語とコンピュータ(の使い方)を中心に学んでいます。
「全員に英検準1級取得を義務づけ、あわよくば複数名の1級合格者を」との当初目論見は見事にはずれましたが、それでも英語検定協会団体表彰に貢献しつつこの春3度目の卒業生を出そうとしています。ユニークな先生方の陣容に加えて、集まる学生がすごく優秀なのです。
 この学科の5階建ての建物にはコミュニケーション演習室という部屋があり、創設当初よりマックのパフォーマを学生数ぶん揃え、ウインドウズマシン主体の情報処理教育センターとは一線を画して独自にネット構築を行った経緯があります。学科創設に孤軍奮闘された教授が引退に当たって寄贈された基金をもとに、昨夏この部屋のコンピュータが全てiMac に取り替えられました。各種専門科目に加えて小生も週に一度だけ3年生の授業に部屋を利用させていただいているという、ただそれだけのことなんです。
 システム構築を一手に担ってきたのが他称「歩くマック」こと若きF氏。情報処理ご担当の先生方のご多分に漏れず、とにかく精力的に朝から晩までよく働き、驚くべき速度で仕事をこなします。彼の全面的なサポートにタダ乗りしつつ、この恵まれた環境下でワタシのやっているのは、なんのことはない、既存の教科書を使ってのさほど変わり映えのしない授業なんです。
 まずハードウエアですが、学生用にボンダイブルーの iMacが44台、サーバ用に Power Mac G4が一台、それに6連装 RAIDのハードディスクドライブがくっついてるだけです。予算不足でフロッピーディスクドライブは2人に1台ぶんしかありません。教師用マシンだけ新型の赤い iMac(女子学生垂涎の的!)で、入り口付近に位置して三方に睨みを利かせています。背後の50インチディスプレーは、手順説明や教材の一斉提示に利用できます。学生用マシンは三方の壁面に向かって26台、残りもおおよそ同心円状に教師側からモニター画面が覗けるように配されています。
 ソフトのほうはマックならではの「ネットブート」という夢のようにメンテナンスが楽なシステ。wwwブラウザや Eメール、電子辞書、ワープロ・表計算、画像加工など諸々のソフトも、各授業ごとに異なる個々人のデータもリソースも、すべて一台のサーバで管理され、各端末はあくまでサーバへアクセスするためのネットワークコンピュータにすぎません。学生はどのマシンからでも授業ごとに各自のID とパスワードを打ち込むことにより自分のページへアクセスし、蓄積したリソースを活用することができます。これにより個々の端末の設定を使用者ごとに固定する必要なく、汎用的な使い方ができる環境が実現されている(ということらしいです?)
 かように立派なシステム構築は、当然ワタシごときの関知するところではなく、全ては「歩くマック」F氏の献身的な労力に負うものです。仮にWindows マシンで同様の水準を実現するとしたら数百万円かかるところを、このシステムだと3.5万円であげてるわけなんだそうです。元来が教育現場での利用を念頭に置くマック系ソフトのリーズナブルな価格設定もさることながら、F氏の「知力」と「体力」と「時間」の際限ない無償奉仕には本当に頭が下がります。
 エッ?システム立ち上げもメンテナンスも他人任せ、教材は既存のテクストというのでは、結局自分では何やってるのですって?面目ありません。多少なりと独自性を出しているところがあるとすれば、学生たちにはとにかくいっぱい英語でモノを書かせようとし向けてるところでしょうか?教科書のInternet English (Oxford University Press) は、ペアワークを中心とした会話活動を最終目標にしている教材です。日本語サイト厳禁は当然として、当初は教師も学生もすべて英語でコミュニケーションをとることを目標としていました。しかし、座席配置の関係でどうしても会話活動がうまくゆかないこともあって、途中からはむしろライティングに力点を移してきました。
 授業は月曜の午後です。前の週のうちに授業用ホームページのBBS に指示を英語で書き込むことから準備が始まります。ネイティブに毎回見てもらう暇もないので完全な日本人(東北訛)英語です。「オーセンティックな英語を教材に」というのは理想ですが、そちらはそれこそウェブ上にこれでもかというほど待ち受けてる訳です。学生の肩の力を抜かせる意味でも、カッコつけずに「ハチャメチャの英語(らしきもの)でもなんとか意図は通じッペ!」と八方破れの無手勝流。反面教師の面目躍如!
 教科書に指示された以外の活動を必ず盛り込み、アサヒ・コムの英文記事を要約させたり、日本文化の紹介を英語で書かせたりとキーボードを叩かせます。レッスンごとのタスク課題とプラスアルファの文章が、ワープロ文書として各自のページにファイル保管され、ワタシの課題回収フォルダにコピーして提出されます。もちろん間に合わなければ放課後や昼休みに納得いくまで推敲してもよく、最終期限は翌週の授業前までとなります。全員がノートパソコンを持っているのでフロッピーで持ち帰って家でやる者もいます。(本来これらには詳しく目を通し、できれば添削やコメントをつけてやるべきところですが、残念ながらとてもその気力・能力はありません。)
 定期テストは通常の紙に書かせるエッセイですが、授業に関連した2テーマないし3テーマを与えてそれぞれ150語から200語程度、合計で5?600語をほとんどの者が50分以内に書き上げます。これだけは5つの観点項目ごとに44人ぶんを点数化し、論理展開や接続表現、そしてもちろん
文法、用語、綴りの誤りなど、気がついた限りの赤ペン添削をして返します。(恥ずかしながらネイティブでないウラミで、屋上屋を重ねる誤りも一再ならずではありますが...)
 さて、だいぶ駄弁を弄しました。この辺で簡単にこの授業の総括をしたいと思います。思いつくままを箇条書きに書き出してみます。

学生のニーズ(コミュニケーション情報学科の特徴)
 工学系エンジニアに求められるESPとは異なる「一般的総合的英語力」養成
 聞いてわかって話せる上に「速くたくさん」読めて書ける英語力

授業目標
「コンピュータリテラシーと英語リテラシーの融合一体的習得を目指す!」

1.多種多様な英語を「速くたくさん読む」!
 リーディング・フォー・インフォメーションの実践
 (まさにブラウジングから!)

2.「たくさん書く」ことによるマクロ的視点の醸成!
 パラグラフ・ライティング技法の紹介、TOEFL-TWEの評価基準解説。

3.タスク重視!(スキル錬磨もコンテンツの構築を随伴促進するという逆説)
 言語学習の「守・破・離」:まずは文化固有の「型」習得から。
 パラグラフ展開パターン、構文・イディオム・語彙、最後に「文」
 文法の順序。
 演繹的グラマー習得訓練偏重から、帰納的視点でのレトリック技能
 錬磨の実践へ。
(個別知識からのボトムアップよりも、発想とコンテンツからのトップ
 ダウン重視)

 水に入らねば泳ぎは習えない。柔道も「乱取り」なしの「打ち込み」
 だけでは技は使えない。「お座スキー」ではいつまでも滑れるように
 ならない。思い切ってリフトに乗り、長いコースを何度も滑ってこそ
 ダイナミックな運動感覚がトータルに身につくのでは?

授業でのインターネット利用のメリット
 まず第一に、「調べてまとめる」タスクを中心とした活動に繋ぎやすい。
 
 これまでに行った主な活動
1.コンピュータとネットの基本術語とネチケットについてサイト訪問し
  情報収集
2.フリーメールアカウント取得、自己紹介メッセージを世界に向けて発信
3.歌手、俳優、スポーツ選手など有名人サイトから情報収集・プロ
  ファイル作成
4.各種ウェブカード作成(提出・学生相互に送付)
5.海外留学情報収集・仮想学生募集ページおよび応募書類作成
6.海外レストラン探訪・メニュー入りオリジナル仮想広告ページ作成
7.海外バーチャルショップ探訪・仮想ショップカタログ作成
8.洋画サイト探索・オリジナル推薦文作成
(ちなみに教科書には専用のホームページが用意されていて、
各レッスンごとのタスク例とお奨め参照ページのURLリストが載ってます。)

そのほかの特徴を挙げると...
1.オーセンティックな生の素材へのアクセスが可能
無限の情報リソース:多様性・無限定性
2.自主性、主体性の尊重
主体的選択:好奇心・知識深化意欲充足、達成感は学習へのモチベーション

各自の個性反映の可能性(趣味、嗜好、得手不得手):自己の尊厳確認
情報探索技術習得プラス知識拡充、意見構築訓練(スキル&コンテンツ)
3.デジタルオンライン化によるペーパーレス効果
資料配布・学習記録保存、評価の省力化
4.真のコミュニケーション活動
BBS/メールによるインタラクション、コンテンツの共同作成
*ただし長所はそのまま欠点ともなりうる。(上記1?4に関して)
1.量はともかく質の保証はない:難しすぎる or 非教育的情報の存在
2.知識の偏りを助長し、自己満足にとどまる危険性
3.コピー&ペーストによる労力忌避習慣、著作権侵害への感覚麻痺
4.フレーミング、匿名性故の様々なリスク

 以上、はなはだ雑駁ではありますが、普段適当にやっていることを精一杯キマジメに振り返って省察してみました。数知れぬ失敗を重ねつつも、この授業は来年度も小生が担当することになりそうです。次の学年は2年間F氏の情報処理で鍛えられた精鋭たちで、全員がワード/エクセルの達人だそうです。彼(女)たちを相手に、PC文盲(おっと、この用語はあちらのPCにひっかかりマスネ?)の小生がドコまでヤレルノカ?まさに戦々恐々です。「昨夏課題で作成した各自のホームページに英語版を追加する指導も面白いかもしれませんね...」などと、天使のような微笑みを浮かべつつF氏は軽くノタマウのでした。まったく人の気も知らないで...(終)

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コンピュータ奮戦記 その2

 Webを利用した英語教育 ― 「オンライン英語セミナー」の試み ―

松江高専  岩田 淳

 松江工業高等専門学校の外国語科ホームページ

http://black-gw.matsue-ct.ac.jp:1087/foreign/common/foreign.html

では、授業内容、シラバス、教官の個人ページにとどまらず、英検・TOEIC等の資格試験、中国地区英語弁論大会、公開セミナーの内容等、多くの英語学習に関する情報提供をしています。96年にはホームページ上に「オンライン英語セミナー」

http://black-gw.matsue-ct.ac.jp:1087/foreign/common/seminar.htm

を設置、英語教育の一手段として利用を始めました。
そのメニューは下記の5つです。

 1「英語で電子メール -- How to write e-mail in English --」
 2「電子メールで役立つ場面別表現集
   -- Useful expressions in writing e-mail -- 」
 3「英語学習に役立つリンク集」?
 4「オンライン英語学習支援システム?Web-CALL?」(学内のみ)?
 5「工科学生の英作文支援システム?KWIC?」(学内のみ)?

 1と2については高専の学生が英語で電子メールを書くときに役に立つようにと準備したページです。多くの関連ページからのリンクや、雑誌、書籍等で紹介していただいたおかげで学内より学外からのアクセスや問合せが多く、嬉しい悲鳴を上げています。実は内容は開設当時からほとんど更新しておらず"Coming soon"というアイコンがずっとついたままで利用者の方々には申し訳ないことをしています。3については筆者が勝手に選んだ英語学習に役立ちそうなサイトにリンクを貼らせてもらっています。
 4は98年のCOCET全国大会(東京)でも発表した"Web-CALL"と名付けたオンライン英語学習支援システムで、96年に校内ランが構築されたことをきっかけに情報工学科の藤井諭研究室と共同で始めたプロジェクトです。
 Webページを利用したオンライン教育の利点の1つは、1人の教師対40人の学生という一斉指導型の授業において困難であった「個別学習」に重点を置けることです。実験的に続けているWeb-CALL授業では、学習に対して個々のペースで積極的に取り組む学生の姿を見ることができます。またWeb教材は
授業以外にも、学内のパソコンや家庭からインターネットでアクセスできますので教室という壁を越えた学習環境がもてるのも利点の一つです。さらに、Webで教材を配信する利点は、教師が教材そのものを作成、更新できることです。問答を掲載するだけでは市販の問題集と同じですが、そこにオリジナルの解説やヒントをつけ加えることができます。また学習者から質問ができる双方向性も魅力です。
 実際、システムの利用率は高いのですが、これを持続させるのが課題です。もの珍しさだけではやはり学習は続きません。今後のWeb-CALLの利用拡大には内容(コンテンツ)の充実が欠かせません。音声や、静止画だけでなく動画も用いて文字通りマルチメディア教材を目指して研究開発を続けていきたいと考えています。
 5については飯島睦美教官と服部真弓教官が情報工学科の川見昌春技官と共同で開発したコーパスによる学習支援システムで、単語が文脈でどのように配置されるか羅列するプログラムです。工科系の学生が論文等で英作文するときに役立つプログラムを目指して現在も開発、評価研究が続けられています。

 以上「オンライン英語セミナー」の内容を簡単に紹介しました。実は冬休み中に自分のページも含め、関連ページの更新を計画していましたが結局触らずじまいで休みも終わってしまいました。みなさんがこの稿に目を通される頃にはできていればよいですが…。また時間がありましたらセミナーのページをご覧頂いて、ご意見・ご感想をお聞かせください。

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コンピュータ奮戦記 その3

  たくさんある中からひとつだけ??コンピュ?タ「大」失敗体験 ?
                       
                        富山高専 青山晶子

コンピュ?タ?にさわり始めて10年余りになります。今日、私がまがりなりにもコンピュ?タ?を使って仕事ができるようになったのも、英語科の偉大なるデジタル・マエストロ(なんて言葉があるのでしょうか?)、立野先生のお陰に他なりません。
10年前高専に赴任した頃は、一太郎とロ?タスのごく基本的な基本的な操作ができる程度で、まさに「さわっていた」だけでしたが、教官室が廊下をはさんで斜め向かいであったことと、当時の英語科には立野先生以外にはコンピュ?タ?を使っておられる先生がいらっしゃらなかった、という私にとっては幸運が(立野先生にとっては不運が)重なって、立野先生にご指導をいただきながら、今日に至っています。
立野教官室は、当時から、学校中のコンピュ?タ?にまつわるトラブルの「駆け込み寺」になっていましたし、パソコンのセ?ルスパ?ソンまでが、売り込みではなく教えてもらうために、立野研究室を訪れていました。そういう人達からも、アプリケ?ションの使い方を教えてもらったり、ソフトをインスト?ルしてもらったりと、駆け込み寺周辺住民としての恩恵にも浴しました。周囲の方々の暖かいご指導のお陰で、長い「仮免」時代を経て、ついに自分でもパソコンを買って仕事をするようになりました。7年前のことです。私にとってのコンピュ?タ?は、まさに車と同じでした。生活に無くてはならないものである点もそうですが、操作はできるけれど機械のしくみは全くといいほど知らず、故障すると完全にお手上げだと言う点。更には、慣れた頃が一番危ない、という点。
ある日のこと、コンピュ?タ?がハングアップしてしまいました。立ち上げ直せば解消すると高をくくっていましたが、どうもいつもと様子が違います。例によって、立野教官室へ駆け込むと、なんと立野先生のコンピュ?タ?もハングアップしていたのです。
ハングアップの原因がアンチ・なんとかいうドイツ製のウイルスで、フロッピ?を媒介して、立野先生と私のコンピュ?タ?に感染したらしいことがわかりました。更に、感染源は、私のコンピュ?タ?に何かソフトをインスト?ルしてくれた業者の人のフロッピ?だとわかった時は、頭が真っ白
になりました。私のコンピュ?タ?に保存されているデ?タなど全く大した
ことはなかったのですが、立野先生のコンピュ?タ?には、Calisを始め多くの
プログラムや、授業や学校運営上の重要なファイルが大量にストックされていた

からです。引責辞職という言葉がありますが、私が学校を辞めて元に戻るので
あれば、そうしたい、という気持ちでした。こればかりは、経験した人にしか
わからない気持でしょう。
 結局、ワクチンで、一命を取りとめたはしたものの、被害は相当なものだった

と思います。当時はまだ、学内LANがなかったので被害の拡大はありませんでし
たが、
今だったら大パニックになっていたことでしょう。ここ数年で、本校にも
コンピュ?タ?を専門とする若い先生方が採用され、駆け込み寺の分院も
増えました。MM教室の設置に伴い、立野教官室は、本校のみならず県内外の
コンピュ?タ?や情報処理教育に携わる人達の「総本山」となった感があります。

悲しいことに私はいつまでたっても「布教」できるには程遠いエンドユ?ザ?
のままですが、英語科には高越先生という若き救世主が現われました。
コンピュ?タ?の神様か仏様か知りませんが、私は特別な御加護をいただいて
いるようで、大変ありがたいことです。

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コンピュータ奮戦記 その4

コンプレックスとコンピュータ

富山高専 立野 彰
 

 私は、現在持ち時間のうち、5コマ乃至4コマ(1コマ90分)の授業を
本校のマルチメディア演習室で行っている。演習室に余裕があれば、全ての
授業をそこで行うであろう。しかしそれは私がコンピュータの達人だからでは
毛頭ない。私は自分を情報の専門家と考えたことは一度もないし、事実私の
コンピュータやネットワークに関する知識など専門家と呼ばれるにはほど遠い、

素人の領域に属するものである。
 それでは何故英語の授業にコンピュータを使うかと自問してみると、どうやら

それは私の教師としての劣等感から来るらしい。
 劣等感の第1は、私が自分のコンピュータを購入した頃のことを想いだして
見るとすぐわかる。今から20年ほど前(その頃私は県立高校に勤務してい
た。)、
PC98VM (何と高価な機械だったことか!)を女房にどう言い訳しようかと
四苦八苦しつつ、それでも強引に買ってしまったのは、自分の自筆の字を
これ以上見たくないその一心からだった。私に「一太郎」の分厚いマニュアル
を一心不乱に読ませた原動力は、まさに職員会議やテストで自分の手書きの
文書が人目に触れる時の、あの背筋が凍るような思いを二度としたくないと
いう熱望以外の何ものでもなかった。
 劣等感の第2は、私の不器用さである。「教師たるもの、生徒の前では役者
の一面も持たねばならぬ。」とは私の持論なのだが、肝心の自分自身がこれまた

どうしようもない、冗談ひとつ言えぬ気の利かない人間なのだ。同僚の冨田先生

お得意のギャグが炸裂しクラスの爆笑が私の教官室にまで届くとき、青山先生の

流麗な発音を通りすがりの廊下で聞くとき、私の心はどうしようもない嫉妬に
さいなまされる。高校に移る前私は中学で英語を教えていたのだが、そこでの
最大の苦痛は一年生にアルファベットを教えることだった。(不覚にも
アルファベットに書き順があるなどとはその時まで知らなかった!)
初めて習う英語に胸をときめかす新入生が、私の黒板やOHPに書く文字を見て
浮かべた落胆の色を私はいまでも忘れない。(ちなみに世界で一番きれいな
英語の字を書く人種は、日本の中学の女の先生であると私は信じている。)
そしてこれが、黒板のかわりに Power Point を使い、興味を惹きそうな動画や
音声等のマルチメディア素材を私が必死に漁る理由なのである。
 第3の劣等感は、私のなまくらさである。私が初めてコンピュータなるものに

触れた頃、私は添削の鬼のような先輩と一緒にひとつの学年を担当していた。
今も私が敬愛するこの先生は、家庭学習用に自作のプリントを作りそれを丹念に

添削するというやり方を取っておられたのだが、そのやらせ方と直し方が
凄まじいの一言に尽きるものだった。
 ある時私は高校総体の引率で県内のある体育館にいた。選手の1人に電話が
かかってきてどうしたのかと思っていると、帰ってきたその選手の顔が異常に
青ざめている。理由を聞くと何とその先生から宿題が出ていないから即刻提出
するようにと怒られたというのである。これには私も唖然としたが、その効果
たるや抜群、あれよあれよという間に学年の全国模試成績が上がっていった
ものである。
 余談になるけれど、この先生のことを思うと私の頭の中にいつも浮かび
上がってくるのは、中国最後の征服王朝清の雍正帝のことである。この皇帝は、

父の康煕帝や子の乾隆帝ほどには有名でなくまた評判も悪かったのであるが、
政治の鬼という点では、2者に勝るとも劣らぬ一種の怪物であった。
 そして齢40を越えて即位し、部屋住み生活が長かったお陰で官界の裏の裏の

事情にまで知悉していたこの帝が、地方赴任官を締め上げる方法として考案
したのがレポート提出であった。地方官一人一人に担当地域の実状と対策を
皇帝宛親書形式にして直接提出させるというものである。官僚お得意の美辞麗句

一切御法度、箸の転んだことまで微に入り細に入り報告せねばならぬ。
朝は4時に起きて学問に精を出し、午後政務を処理して夕食を取った後、帝は
書斎に引きこもり、大清帝国の隅々から到着するこの洪水のような親書の山と格
闘、
しばしば深更に及ぶ。親書を丹念に読んでは、問題点を朱筆で認めこれを当人に

返して見せては叱責し、また取り上げるという念の入れように、さすがの
漢人官僚も清廉潔白ノイローゼにかかり、国庫の貯銀2600万両に及んだ、
と史書にある。
 よしそれならばと、私も一時この添削方式に熱中したことがあったのだが、
続かない!私のようななまくら根性では、雍正帝やかの先生のようにはいかない

のだ、と悟るのに一ヶ月もかからなかった。そういえば、雍正帝の子孫、
道光帝くらいになると皇帝の器も小さくなり、蠅の頭のような細字で書いた
高さ数尺に及ぶレポートを、読んでも読んでも捌ききれず、ついに漢人官僚に
相談したところ、「暇なときに、数冊を抜き出し朱筆で点や画のあいまいな
ものを直しておけば臣下は帝が皆読むものと考えるでしょう。」と即座に
答えたのでこれを実行したところ、内容よりも形式だけ整ったコピー文書が
はびこり治世を害すること甚だしかった、とこれまた史書にある。
そして私はこの道光帝にひどく同情したものである。
 閑話休題。なにやら自分でも訳の分からないことを書いてしまって恐縮で
あるが、結局これが、本校で使っている DOS版 CALIS の日本語版を作る動機
だったのだ。「コンピュータでテスト」等と格好良いことを言っても内実は
自分の能力不足を繕う言い訳に過ぎないのである。
 この歳になるまで自分は一体どれだけ満足のできる授業をしてきたのであろ
う。
毎年毎年授業のやり方が変わる。未だにこれが自分の手法だと納得できるものが
ない。
英語を教えて給料をもらっているからには---残念なことに、この意味でのみ
私は英語のプロである。(英語のプロといえば、アメリカで CALIS のコード
移植をしていたとき、イスラエルから来ていた英語の先生がプログラミング
マネージャにマニュアルの英語の訂正をしてやっているのを見て、
「成る程、英語の先生というのはネイティブの英語を直すものなのか。」と
妙なことに感心したことを覚えている。)---、月給泥棒と呼ばれないように
何とか授業をしなければならぬ。そして私の能力の及ばないことは何かで
補わねばならぬ。それがコンピュータであろうとマルチメディアであろうと、
私にとってはそれこそ藁をもつかむ思いで自分に使える道具を探すだけなのであ
る。
 若い頃、文部省の研修で「教科書を 教えるのではなく、教科書で 教えるの
だ。」
と教わったことがあった。教科書もまた黒板と同様に英語を教えるためのひとつ

道具であるべきだということであろう。明日の授業をどうするかということに
汲々としている私のような人間にとっては、「IT」とか「時代の先端」等々の
スローガンは、どうも自分の世界とは別の話のように聞こえる。教科書と黒板
だけで授業のできる能力が自分にあったなら、何でコンピュータのような道具に

手を出していたであろう。コンピュータは、私の欠陥を補ってくれる
「融通は利かないが忠実無比の道具・助手」のひとつであり、
それ以外の何者でもないのである。

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高専英語科紹介 その1

          富山商船高等専門学校における英語教育の取り組み

                        富山商船 長山 昌子 

 本校は商船学科、電子制御工学科、情報工学科、国際流通学科
(以下K学科と呼ぶ)の4学科構成である。文系・K学科が設置され5年間が
経過しようとしている。
 理系のみだった頃から比較すると、英語に対する興味が全学年的に広まって
きたようである。主だった行事を中心に本校の英語教育への取り組みを紹介した
い。
(1) 英語検定 1年生4学科は第2回英語検定を全員、準2級あるいは
3級を受験することになっている。中には第1回英語検定ですでに準2級に
合格する学生もいる。K学科にあっては入学説明会時に準2級の問題集を持たせ

入学式までに、他3学科は夏休みに準2級あるいは3級の問題を持たせ夏休み
明けまでに、課題として各自やることになっている。1年生は学年全体で
取り組むことから学習意識が高まり、175名中51名が準2級に合格してい
る。
また、K学科にあっては各学年とも年1回の英検の受験を義務づけ、低学年に
あっては準2級合格、その後は5年生卒業までには2級合格を目標にすえてい
る。
現在4・5年生にあってはそれぞれ20名近くの学生が2級に合格している。
準2級、2級の合格者名全員を廊下に掲示し、学生の努力を称え、英語学習の
励みにするようにしている。
(2)スピーチコンテスト
 スピーチコンテストは今年度で第6回目を迎え、学年、学科を超えて英語で
自己表現をする場として学校全体に定着してきている。発表者は14.5名程
度。
放課後1時間程度で終了するコンテストだが、100名ほどの学生、教職員の
聴衆を前にスピーチをするのは学生にとっては大きな試練の場でもあり、
外人講師の先生に指導が受けられるという学習の場でもある。今年度は
ジャッジに他校の外人講師をお願いしたが、年々学生のレベルが上がってきてい
る。
自分もあのように話せるようになりたいと意欲を示す学生もいる。
(3)オーストラリア語学研修
 K学科では語学の力を伸ばすために毎年、春休みの3週間を利用し、
オーストラリアへの語学研修を計画し5年目になる。他学科からの参加者数名
を加え、今年は35名の学生が参加する予定である。
(4)スプリングセミナー
 K学科の1学年では、春休みに外人講師を招聘し、二泊三日の英語合宿を
行っている。コミュニケーション能力の高度化を図ろうと小人数によるグループ

学習を実施し、英語学習への意欲が2学年につながるようにしている。
(5)ボキャビュラリコンテスト
 K学科の学生の単語力を定着させるために、夏休み明けの2週目に5学年
一斉に30分程度の英検準2級、2級レベルの単語テストを行い、高得点上位
10名とクラス1つを表彰し、努力を称えている。
 以上のような行事を通し、学生の意識が「英語への興味」から
「自立した学び手」となるように心がけているが、英語科教員全員の協力
なしには実施できないことはもちろんである。次年度からはトーイック受験
に向け学習意欲のレベルアップを図っていきたい。

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高専英語科紹介 その2

     富山高専英語科教官の横顔

                          富山高専 高越 義一

                          
 富山高専英語科は5人のメンバーで構成されています。
 以下2001年1月現在の、独断と偏見に満ちた素顔を一言。
 (間違っていたらごめんなさい。!)

水野 正孝(みずの まさたか)
〔担当 2年総合英語、3年英語表現、専攻科英語?〕本校英語科主任。
 落ち着いた言葉遣いと、ダンディーなルックスは学生に好評。一般科目の
 主任をされていることから、たくさんの委員を兼務しておられる。
 会議続きのせいか、さすがにお疲れのよう。アメリカ文学(ホーソーン)
 がご専門。男子バレーボール部顧問。

立野 彰(たての あきら)
〔担当 2年英語表現、4、5年英語演習、専攻科英語?〕
 コンピュータ支援言語学習ソフト「CALIS」日本語版の作成者。本校1、2年
 英語表現で活用中。英語教育のみならず、パソコンを用いた授業実践が
 研究テーマで、情報処理教育センター員が長い。本校マルチメディア演習室の

 生みの親。2年機械工学科担任、剣道部顧問。

冨田 尚(とみた たかし)
〔担当 2、3年総合英語、4、5年英語演習〕
 迫力ある声は校内に響き渡り、学生を絶対眠らせない。丁寧な説明とギャグ
 に定評あり。映画、洋楽を用いた授業実践多数。時には自慢の喉も披露され
る。
 英文法がご専門。寮務主事補、野球部顧問、県高野連理事としてもご活躍。
 
青山 晶子(あおやま あきこ)
〔担当 1年総合英語、英語表現、3年総合英語〕
 メリハリのある授業とネイティブ顔負けの発音に定評あり。ビデオ教材や
 パソコンを活用した授業実践多数。学生の目線、視点を大切にされ、
 学習指導はきめ細かい。学生主事補として学生会活動の活性化に貢献されてい
る。
 女子テニス部顧問、コセット理事。
 
高越 義一(たかごし よしかず)
〔担当 1年総合英語、英語表現、3年総合英語〕
 授業では脱線することが多く、なかなか前に進まない。不規則動詞と
 発音記号の教え方や、映画、洋楽を用いた授業に興味あり。学生との対話
(?)
 を重視。英語科会計、英検担当。サッカー部顧問、県サッカー協会理事。

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事務局より

COCET研究大会報告第24回 COCET研究大会は、平成12年9月2日(土)
3日(日)に両日に亘り、東京代々木のオリンピック記念青少年総合センター
で開催されました。主な内容は次のとおりです。

特別講演 根岸雅史氏(東京外国語大学)
 「Can-do リストからCould-doリストへ」という評価の変更の必要性について
述べられた。またその際、「高専卒業生が、実際にどのような英語力を
必要としているか調査することは、高専におけるこれからの英語教育を
考慮していく上で重要なことである」と発言され、
それを機会に亀山太一氏(岐阜高専)を中心に高専英語教師の有志で
来年度より調査研究することに決まった。

意見交換会「高専に関する問題と解決法について」
 高専の英語教育に関して、様々な問題が討議された。
例えば、特別講演で根岸雅史氏が「高専卒業生が、実際にどのような英語力を
必要しているか調査することは、高専におけるこれからの英語教育を
考慮していく上で重要なことである」と発言されたことをもとに話し合いが
あった後それをもとに亀山太一氏(岐阜高専)を中心に高専英語教師の有志で
来年度より調査研究することに決まった。

2日、3日と14名の研究発表者による研究発表が行われた。
 教育機器利用を含む、様々な英語教育の実践の工夫、学校全体での取り組み、

国際理解教育、工業英語教育、英文学等、発表内容は多岐に亘り、
また有意義な研究/実践の発表であった。

シンポジウム
 「新学習指導要領と高専の外国語(英語)教育」
ーー授業展開におけるコミュニケーション能力育成の位置付けーーという
テーマで山田豪氏(東京都立高専)と瀬川直美(福井高専)が提案した後で、
フロアの先生方との活発な意見交換があった。
その具体的な内容については2001年2月発行予定の
『研究論集』第20号の山田豪氏の「シンポジウム」関係のページを参照された
い。

フォーラム
在外研究に関する情報
 共に1999年度に英国(Reading University)で在外研究された小寺光雄氏
(福井高専)と米国(Boston University)で在外研究された菊地俊一氏
(沼津高専)から、在外研究実現の具体的方法や在外研究の生活全般に関する
留意点等貴重な話を聴くことができた。

全国高等専門学校学生英語弁論大会について(継続討議)
 昨年の研究大会での討議を機会に「メールによる理事会」等での話し合った
結果を参考にしながら、継続審議を行った。全国レベルでの弁論大会は意義が
あるという考えが優勢と思われるが、「実行するには、物理的時間的経済的に
みて困難点が少なくない。ビデオによる弁論大会では意義が高いとは言えな
い。」
という考え方もあり結論が出ず来年の研究大会に継続審議することとなった。
(賛成意見もしくは反対意見を「メーリングリストによる意見交換」
 に載せて下さい。)

要請書
 「20人学級実現」等を要求する要請書を文部大臣宛てと国立高等専門学校
協会会長、公立高等専門学校協会会長に送ることにフォーラム全体で決めた。
その後「メールによる理事会」でも検討した上、提出した。
(文部大臣宛てと公専協会長宛ての要請書提出に関しては山田豪氏に、
国専協会長宛ての要請書提出に関しては小寺光雄氏にお世話になった。)


2000年の主な COCET 活動2月に『研究論集』発行、送付
6月に「コセット通信」第2号 送付(メール)
6月に『COCET第24回研究大会要綱』発行、送付8月に文部省より
「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会 審議経過報告」
がCOCETに送られてくる。意見を聞きたいとのことで、中村俊昭氏(木更津高
専)、
山田豪氏(都立高専)、村井三千男(東京高専)が意見を提出。
(その内容はメーリングリストで全国高専に送付済)10月、12月に、
上記のように、要請書を提出。なお、年間を通して、メーリングリストによる
情報交換、意見交換多数。
(どうもご協力有り難うございました。2001年もよろしくご活用下さい!)

2001年の COCET研究大会2001年(平成13年)8月26日(日)27日(
月)
    於 京都 京大会館
(理事会で9月の研究大会は参加不可能の教官が多いことが指摘され、8月中の

開催に決め、総会でも認められた。土日を考えたが、会場の関係で次回は日、月

にせざるを得なかったのでご了承願います。)
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